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シアトルのネイバーフッドその1・キャピトル・ヒルについて(1)2020年に起きたこと

シティ・オブ・ネイバーフッド

シアトルはシティ・オブ・ネイバーフッドと言われ、各ネイバーフッド(近隣地域、下図①参照)の特性が際立ち、その中でコミュニティが形成されています。以前留学したときも、そういった市民参加のあり方に関心がありました。当時から意識の高い市民の参加によるまちづくりが続けられてきたのがシアトルで、ネイバーフッドはその基盤となるものでした。

今回取り上げるネイバーフッドである「キャピトル・ヒル」はもともとブロードウェイというメインストリートを中心として、多様性のあるカルチャーが混ざり合う、活気のあるところです。リチャード・フロリダが定義するクリエイティブ・クラスが好む都市としての条件の一つ(寛容性)を満たすような場所で、ダウンタウンからは徒歩圏内、坂の上の眺めの良い場所です。

※シアトルは2010年のリチャード・フロリダによるクリエイティビティ・インデックス・スコア[技術+才能+寛容性の3つのT]は都市圏で全米4位でした。
リチャード・フロリダ著、井口典夫訳『新・クリエイティブ資本論』ダイヤモンド社 図表12-13より


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①シアトルのネイバーフッド(区分は諸説あり)ピンクのところがキャピトルヒルです

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キャピトルヒルは小さなお店が並び、多様性を象徴するようにカラフルで楽しい感じのところですが、みんなかなり自由に過ごしている感じです。(路上にいろんな人がいて、いつもにぎやかですが、日本から来たばかりだと路上にずっといる人の予想外の動きに驚かされます・・・)

2020年に起きたこと:自治区の形成

このキャピトル・ヒルの変化を象徴するような出来事として2020年の「自治区」の設置がありました。自治区とは、Capitol Hill Autonomous Zone, 略してCHAZと言われたところです。BLM(Black Lives Matter)運動があり、警察署が閉鎖を余儀なくされ、それを囲むように自治区が2020年6月に形成されました。一種のコミューンのような、歌を歌ったり、子供が遊び場として使ったりすることもあったようですが、警察の入れない自治区として形成され(下記NYT 記事参照)、中では銃撃事件も起きたようです。

このようなことが起きた背景として

・ブラック・ライブズ・マターの運動のきっかけにもなった
「警察による黒人への暴力に対しての反発」
・貧富の差による「社会的不平等」や「コーポレート・アメリカ」とも
呼ばれるような大企業偏重社会への反発
・ダウンタウンに近いこの地域の「ジェントリフィケーション問題」
(※アマゾンなどのIT企業に勤める高額所得者の流入と家賃の上昇)
NYT 上記引用記事参照

などがあったとされています。

加えて、シアトルの元々のリベラルな気質(年々拍車がかかっているようです)、その中でも音楽やアートなどの文化が盛んな、自由な雰囲気を持つこの地域の特性などがあったのではないかと思います。

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②CHAZの大体のエリアと当時自治区の一部となっていたカル・アンダーソンパークです。現在は落ち着いています

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③自治区のアートがストリートに残されています

バーなどが多く、夜の治安はもともと要注意の場所でしたが、2020年にこのようなことが起こったことの影響と、それに伴う治安の悪化で不動産価格は他の地域と比較して落ち着いているようです。
ただし、新規集合住宅の建設も多く見られるので、不動産市場としては活発に動いていると思われます。この辺りのエビデンスについては後日整理してみたいと思います。