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シアトルのネイバーフッドその1・キャピトル・ヒルについて(2)まちの変化と賃貸市場

1.地域の変化(自治区・ライトレール)

(1)で説明しましたが、CHAZ(自治区)がキャピトルヒルで短期間形成され、地域に様々な影響が波及しました。影響が大きかったのは特に治安面ですが、自治区が形成された2020年より2021年は落ち着いているとのことでした。そこで実際どうなっているのかデータを見ましたが・・・Seattle Police Department のデータによると、キャピトル・ヒルの月ごとの犯罪件数は去年と今年であまり変わっていないようです。

もう一つ、これは自治区とはまた違った影響をもたらしていると思いますが、2016年のライトレール(写真①)の開通によって、駅周辺にTOD(Transportation Oriented Development)型開発が行われた、ということがありました。ライトレールの駅はストリートカー(写真②)の発着点とも近接し、もともとヒューマンスケールな歩きやすい地域でしたが、さらに歩いて暮らせるまちになったと思います。

余談ですが、私が留学していたときはライトレールをやるやらない、という住民投票があったような記憶があります。特に空港に行きやすくなるなど、車を運転しない人にとって以前と比べてとても便利になったと思います。以前はワシントン大から空港に行く場合、ダウンタウンでバスを乗り継ぎ、一時間以上かかりました。2021年10月にさらに北に延伸して新しい駅ができたことで、現在ではワシントン大から40分くらいで空港に行けるようになっています。

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①キャピトルヒルのライトレール駅

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②黄色いストリートカー

2.賃貸市場にどのような影響がでているのか

では少ないデータですが、自治区として使われたところで不動産価格への影響があったかを見てみます。データはアメリカの大手不動産サイト等(Zillow:シアトルの会社)です。(不動産サイトで確認すると、自治区として使われていたところで現在掲示されているのが主に賃貸であるため、ここでは売却用の不動産は除外して考えてみます。)

以前の賃貸価格が示されている例を挙げると、一つだけ50%以上賃貸価格が上がっているものがあるため、それを除くと全体の賃貸価格は最初にリスティングされた価格(リストに載ったタイミングはまちまちです)と現在を比較すると-6.6%になっているようです。シアトルの他の地域と比較すると、下のリンク記事では、

「シアトルの典型的な賃貸物件はここ1年で6.2%上がった

とされています。なので、やはり2020年の出来事はキャピトルヒルにおいて賃貸価格を下げる影響はあったのではないかと推察されます。(変化を読み取れる賃貸募集件数が自治区内では6件だけなので、隣接地域も含めてもうちょっとデータ数が必要ではありますが・・・)

ただし、この地域は歩いて暮らせるかどうかを測定してくれる、住む場所を決める上でも重要な指標として用いられている「Walk Score」と呼ばれるものがスコア93で、(100点=満点)非常にウォーカブルな地域です。

このスコアは、「アメニティへの近接性」によって計算され、「5分以内にアメニティに歩いて行けること」によってポイントが入ります。90点以上は「車無しで生活に必要なニーズが満たせる」という意味です。(https://www.walkscore.com/methodology.shtml)

確かにキャピトルヒルはブロードウェイ(写真③)と呼ばれる商店街があり、食料品なども歩いて買いに行けますし、公共交通機関も充実していてダウンタウンも徒歩圏内なので、今後住む場所としての人気が回復してくるだろうと思います。

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③キャピトルヒルの中心商店街:ブロードウェイ

とはいえ治安や人口流出入に影響するような出来事と、場所の価値の関係は重要なポイントだと思いますので、少し周辺地域や他地域との比較を通して影響を考察してみようと思います。