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バンタンの歴史(和訳記事)

韓国系アメリカ人David Yiさんという方が書かれた本を読んでたらバンタンのことが書かれていました。

バンタンの歴史(様々な苦労や功績)や、アミのことも書いてあって読みながら涙目に。

共有させていただきたく和訳をしてみました。
少し長いですがよかったら読んでみて下さい。

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David Yi (著)
「Pretty Boys: Legendary Icons Who Redefined Beauty and How to Glow Up, Too」より
(一部翻訳 by Nao)
 
2020年、BTSはシングル「Dynamite」で、カーディ・Bとメーガン・ディースタリオンの「WAP」、ハリー・スタイルズの「Watermelon Sugar」、そしてドレイクの「Laugh Now Cry Later」を抑えて、韓国の男性グループとして初めてビルボードホット100で1位を獲得しました。韓国のアーティストがこのような偉業を成し遂げたことはなかったため、歴史的な出来事でした。
 
しかし、彼らはそれまで既に多くのことを達成していたので、予想外ではありませんでした。BTSは、史上最大の男性グループなのです。世界のスタジアムでのライブのチケットをわずか数分で完売させたり、「Dynamite」のMVの再生回数が24時間で最も多いなど、複数の記録を打ち立て、また、最も多くのナンバーワンアルバムを生み出したビートルズと並んでいるグループなのです(1年間で3枚)。
 
BTSは、ファンやコミュニティへの"恩返し“を行ってきました。2020年には、ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter)運動に100万ドルを寄付し、ユニセフと提携して若者向けの反暴力キャンペーン「Love Myself」を展開しています。このような他者への深い愛情や共感は、彼ら自身の逆境の経験から来ているのかもしれません。何しろBTSは、デビュー前から失敗作と言われていたK-POPグループです。BTSの7人のメンバーは、その成長の過程で、非常に厳しい目を向けられ、さまざまな逆境に直面しました。しかし、彼らがここまで注目されているのは、音楽でも派手なダンスでも、つややかな顔立ちでもなく、むしろ、観客と“人間的なレベル”でつながることができる能力があるからなのです。メンバーそれぞれが、メンタルヘルス、自己愛、自分の価値を率直に主張し、各コミュニティに個々のサポートを提供しています。しかも、これらテーマがいまだに論争の的になると考えられている保守的な国(韓国)でのことです。
 
彼らの物語と歌は、世界中の何百万人ものファンに、自分の中にある美しさを見つけ出すよう、刺激を与えています。BTSのファン(ARMY)は、グループの全体的なメッセージに共鳴しています。世界を“征服”するためには、まず自分を愛さなければなりません。他人を愛するためには、自分が何者であるかを直視しなければなりません。オンラインでもオフラインでも、ARMYは愛のメッセージを広め、政治的な活動にも賛同し、BTSのために寄付をしています。彼らは、世界のどの音楽アーティストよりも(歴史上!)最もポジティブなファンダムかもしれません。
 
BTSの最初のメンバーとして採用されたのは、K-POP界の異端児、キム・ナムジュン(後にRMと改名)というラッパーで、すでにアンダーグラウンドのヒップホップシーンで名を馳せていたティーンでした。肌の色は韓国で好まれる色白とは対照的に濃く、目はアーモンド形で二重まぶたではなく、当時の韓国の美容基準に反していました。
 
しかし、Big Hit EntertainmentのプロデューサーであるBangプロデューサーは、そんなことはお構いなしに、この天才的な音楽家とすぐに契約を交わしました。Bangは、K-POP業界の悪名高い腐敗を取り除き、若者にインスピレーションを与え、閉塞感のある韓国に変化をもたらすことを使命としていました。そのため、彼は他のエージェントが求めるような人物を求めるのではなく、同じように変革の使命を持つ若者を求めていたのです。
 
その後、BangとRMは、才能のある6人の若者たちを仲間に加えます。ラッパーのミン・ユンギ(後にSuga[バスケットボールが好きなことからシューティングガードと呼ばれるようになったため])、ダンスが得意なチョン・ホソク(J-HOPE)。そして他の4人は、演技を学ぶ大学1年生のキム・ソクジン(Jin)、高校生のモダンダンサー、パク・ジミン(Park Jimin)、独特のハスキーな声を持つキム・テヒョン(後に "Victory "を意味するV)、そして、シャイだがカリスマ性のある中学生のマンネ(最年少)、チョン・ジョングク。彼らは「防弾少年団」(思春期の子供たちに銃弾のように向けられる固定観念、批判、期待を遮断する)というグループ名を与えられました。
 
彼らは、狭い1ベッドルームのアパートに引っ越し、生活を共にし、1日12時間以上練習をしながら学校へ通いました。デビュー前に所属事務所が立ち上げたツイッターアカウントでは、自分の不安や希望、願望などを記録していました。ファンと交流し、自撮り写真やバックステージのビデオを投稿し、自分の個性をアピールすることで、少数ながらも活発なファンを獲得していきます。
 
そして2013年にようやくデビューを果たしたBTSですが、資金不足に陥っていました。会社は倒産の危機に瀕していました。それはビジュアルでも分かることでした。デビューのステージに立った際、彼らの見た目は素人だと指摘されます。不恰好に体から垂れ下がったバギーな服、ボサボサの髪型、濃すぎると言われるアイラインなど、他の確立され洗練されたアーティストと比べると、彼らは見劣りしました。しかし、彼らに欠けている美学は、絶大なショーマンシップによって補われました。例えば、ジミンは腹筋を見せて遊び心を演出し、ジョングクは軽々と高音を出し、RMやSugaは得意のラップでステージを支配し、J-Hopeは流れるように体を動かし、Jinはビジュアルで観客の心を揺さぶり、Vは歌とダンスを総合的に駆使し、多才なステージングを魅せました。
 
当時、他のアーティストが恋愛をテーマにして歌を歌っていたのに対し、BTSは若者の経験をリアルに伝えることに重点を置きました。若者に対する社会的なプレッシャー、社会的弱者に対する偏見、韓国で育ったことによる不安など、複雑なテーマについて曲を書いています。しかし、それがうまく伝わらず、彼らの最初のシングルである「No More Dream」は、音楽チャートの124位にランクインしましたが、その後すぐにランク外に落ちてしまいます。
 
衣装やメイクを工夫し、パフォーマンスを向上させても、競争の波に飲まれてしまう。やがて、テレビ局は彼らの公演を打ち切り、握手会などを中止し、彼らに“失敗作”のレッテルを貼るようになりました。さらに、ネット上ではメンバーをターゲットにしたネガティブな投稿が行われ、彼らの容姿などが馬鹿にされるようになりました。そして、他のアーティストからも批判されてしまいます。
 
2013年のヒップホップの現状を語る座談会で、あるアーティストがRMとSugaを「偽物のラッパー」と非難しました。RMとSugaのメイクやセンスに疑問を投げかけ、彼らのセクシュアル・アイデンティティーやジェンダー・アイデンティティーに疑問を投げかけ、真のヒップホップ・アーティストは特定の美的基準に従わなければならないと主張しました。"女の子のような服を着て、化粧をするということは、女の子であるということではないのか?“と。

しかし、BTSはそのコメントをを受け止めながらも、止まることはありませんでした。社会が若者に与える不公平で閉塞的な圧力を歌った、シングル「N.O」をリリースし、92位にランクイン。勢いに乗り始め、注目も集め始めます。SBS MTVのリアリティ番組「Rookie King」にに出演し、ARMY(Adorable Representative MC for Youth)と呼ばれる強固なファン層を味方にします。2015年には、初のファンミーティングを開催し、約3,000人以上が参加しました。
 
デビューして2年が経ち、彼らはヒップホップの美学を捨て、よりソフトな感性を追求します。濃いアイラインは控え、ニュートラルなアイシャドウを使用。スパイキーな髪を伸ばし、色とりどりに染めた明るい髪に変えます。若さと不安をテーマにした曲を書き続け、タブーにもかかわらず、メンタルヘルス(うつ病など)についてオープンに語り始めます。

3枚目のEP「花様年華Pt.1」では、シングル曲「I Need U」が韓国でトップ5にランクインし、「Dope」がビルボードのワールド・デジタル・ソング・セールス・チャートで3位になるなど、彼らにとって初めて商業的な成功を収めました。しかし、彼らが成功を収める一方で、ネット上では新たな反感を買うことになります。BTSは、アルバムを大量に購入して売り上げを伸ばし、音楽チャートを操作する違法行為「サジェギ」を行っていると非難されたのです。韓国国内では、小さなレコード会社のグループが、なぜ成功するのかと困惑し、疑念を抱く人々が多くいました。数ヶ月の調査の後、彼らはようやく容疑を晴らすことができましたが、恥ずかしさはもちろんのこと、感情的な混乱や強迫観念などがなかったわけではありません。しかし後にBangが嘆いたように、「そんなことをしようと思っても、お金がなかった 」のです。
 
翌年、彼らはついに "花様年華: Young Forever "でブレイクします。アルバム「You Never Walk Alone」に収録されている「Not Today」では、彼らの歌詞が、何百万人もの(苦労している)韓国人に語りかけています。また、「Spring Day」では、明るい明日を願っています。"朝は再びやってくる。闇も季節も永遠ではない。" そして、「2! 3!」では、痛みに耐えることを歌っています。"悲しい思い出は消してしまおう。手をつないで笑顔になろう"。
 
2017年、BTSは海外でも活躍します。ツイッターユーザーの約半数がBTSをフォローするようになり、ビルボード・ミュージック・アワードでは、セレーナ・ゴメスやジャスティン・ビーバーなどのメガアーティストを抑えて、その年のトップ・ソーシャル・アーティストに選ばれました。ライブ中継されたアワードショーでは、7人の少年たちがステージに上がり、長年尊敬してきたアーティストたちで埋め尽くされた観客を前にします。それは正当な評価であるだけでなく、ある種の奇跡でもあります。ほんの数年前まで、彼らはギリギリの生活を送っていたのに。
 
アジアの男性グループが大きく評価されたことで、外国人排斥や人種差別、彼らのカラフルな髪や化粧に対するネガティブツイート(同性愛者をいじめるようなもの)などが世界レベルで起きました。しかし、BTSはこのような“憎しみ”に立ち向かうために十分に準備して(経験を積み重ねて)きました。そこで、ポジティブさとインスピレーションに焦点をあてた『LOVE YOURSELF』をリリース。その後、『Map of the Soul: Persona』、『Map of the Soul: 7』と続き、400万枚以上の売り上げを記録し、韓国で最も売れたアルバムとなりました。
 
2018年には、BTSは国連に招かれ若者に向けたスピーチを行います。率直に、正確に、几帳面に、RMは自分で書いたスピーチを読み上げました。

"BTSに参加するという決断をした後も、多くのハードルがありました 。信じられない人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は私たちが絶望的だと思っていました。時には辞めたいと思ったこともありました。でも、すべてを諦めなかったのは、とても幸運だったと思います。そして今後も、このようにつまづいたり転んだりを繰り返していくのだと思います。あなたが誰なのか、どこから来たのか、肌の色や ジェンダー意識は関係ありません。ただ、あなたのことを話してください。話すことによって、自分の名前と声を見つけてください。"
 
BTSは、今では多くの人々の希望の光です。ヒットチャートを独占し続ける一方で、彼らはより大きなメッセージを発信しています。「愛は憎しみを消すことができる」。そして最終的には、自分自身を受け入れることで、世界を照らすことができる、と。
 
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David Yi (著)
「Pretty Boys: Legendary Icons Who Redefined Beauty and How to Glow Up, Too」

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