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公立高校合格発表

 今日は息子の合格発表だった。結論から言うと、落ちた。残念ではあるけれど、「信じられない!」ではない。一応合格圏内にはあったものの、まさかの1.4倍、しかも受けたお友だちがみんな息子より成績のいい子ばかりで、今年のM高校は一味違う、という感じだったからである。

 私は入試に関して、細かい情報を入れるのがあまり好きではない。本人のいわゆる「偏差値」、志望校の「偏差値」、模試のデータ、本人に合いそうかどうか、くらいしか考えない(この物差しでは、いずれも基準をクリアしていた)。しかし、卒業式でいろんなお母さんと話していて、塾の方針も本人の考え方も色々、ということがわかった。例えば、割引を受けるためには、いわゆる難関私立を受けさせられる、とか、他県の難関高を受けさせられる、とか、聞いてびっくりした。そしてこの点では、塾選びは間違いではなかったと思う。

 負け惜しみと取られても仕方がないのだが、高校入試は全然ゴールではない。入ったからヒャッホイではなく、大学入試があるし、入試で点を取るテクニックのようなものは知性とは関係ないと思っている。そういう意味で、あまり細かいことをチェックしなかったことには、親として悔いはない。ただし、合格できなかったことには必ず原因があるはずなので、そこはきちんと見つめてもらいたい。正直なところ、最後までゲームの時間を減らさなかったこと(定期テスト期間中さえも!)、勉強も一定時間すればおしまいで、側から見ていると「いやいや詰めが甘いやろ」というのはずっと思っていたし、本人にも伝えた。真剣に何かに立ち向かう時というのは、もっと真摯なものだと思う。しかし息子は自分の方針を貫いた。これは自己責任と言えるだろう。ただ、落ちたことでどよよーんとしたりはしていないので、まあこれはこれでよしとすべきか、と思う。

 ただ、一つ大きな誤算があった。息子はもともと公立に合格したら引き続き塾に行くと言っており、塾代+公立の授業料=私立の授業料(施設費は除く)くらいなので、まあチャラかな、と思っていた。ところが!塾に挨拶に行って塾長と話をしたところ、なんと息子は高校に行っても塾を続けるというのだ。これには青ざめた。ちょちょちょっと払えるのかしら?という感じである。そんなわけで、私はもうお酒もを飲まず、服も買わないことにした。3年くらい服を買い足さなくても大丈夫なはずだ。モーパッサンの『首飾り』で、主人公は友だちに借りたダイヤのネックレスをなくしてしまい、3000万円出して代わりのものを買って黙って返す。その後、主人公は狭い家に移り、女中にも暇を出し(って女中いたんかい、とは思うが)、夫とともに切りつめに切りつめて、10年かかって借金を返していく。その間主人公は身なりに全く構わず、無事に返済が完了したときにはすっかりおばあさんのようになってしまう。こうなっては大変だ、と思うが、高校はわずか3年だ。気合を入れて乗り切りたい。

(蛇足のようだが『首飾り』のラストは次のようなものだ。ある日主人公は通りでネックレスを返した友だちにばったり会い、あまりの変わりように驚いた友だちに事情を聞かれて、首飾りのことを話す。すると友だちは「なんてことでしょう!あの首飾りは偽物だったのよ!せいぜい50万円くらいのものよ!」と叫ぶ。話はこれで終わりで、その後二人がどういう取り決めをしたのかは明かされない。夏目漱石はこの終わりに憤慨し、「せっかく苦労を知って賢明になったはずの主人公が、このオチでは台無しだ」というようなことを書いている。確かに救いのない結末である。)



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