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『カーネーション』原口先生の魅力

 周防さんと糸子がきれいに別れたあと、時代は少し飛び、娘たちがそろそろ進路を決める年になる。美大を受けると言って、手伝いもせず絵ばかり描いていた優子は、結局画家になる覚悟は持てず、東京の服飾専門学校に行く。帰ってきた優子は、すっかり関東アクセントになり、ことあるごとに「原口先生」の名を口にする。そんなある日、その「原口先生」の実物が(←失礼な)、突然岸和田を訪れる。

 原口先生は、まず木ノ元のおっちゃんのアメリカ商店を「これが好きなんだ、好きで好きでたまらないんだ」という情熱を感じる、と褒め、小原洋装店に入るやいなや「一流の生地を揃えてらっしゃいますね」と言い、直子の絵を見て「おおー!これは!」と才能を認める。つまり、その人の本質をことごとく摑んで、まっすぐに褒めるのだ。人々はこうして原口先生に心を鷲づかみにされていく。糸子と周防さんが出会った時、糸子はまず周防さんが履いているピカピカのブーツに目を留める。そして周防さんは、糸子に会う前に水玉の服に惹かれていた。つまり、二人とも、外見や肩書ではなく、「その人が大切にしているもの」から出会ったのである。そこにはその人の「本質」がある。そこに惹かれた人の思いは強いし確かだ。二人の恋が浮ついたものではなく、敬意を伴っていたことも納得がいく。原口先生が次々に人を褒め、みんなを巻き込んでいくのもそこをとらえているからなのである。

 人の強みがパッとわかる人、というのは素敵だ。実は私は「わりと人の強みがわかる」と思っているのだが、もう少しそれをためらいなく伝えたい。そのためには自分の感性を磨きたい。自分の「視る力」を伸ばしたい、というのはそれゆえだ。というわけで、今日もOリングに勤しむのである。


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