「お医者さんが語る、伊勢谷友介さんを大麻で逮捕してはいけない理由」を読んで

 俳優の伊勢谷友介さんが大麻所持法で逮捕されたが、これについて、「そもそも大麻で逮捕する必要はない」という意見が出ているそうだ。このことに関して、医師の書いた記事がとてもくわしく、面白かった。(https://note.com/doctormasataka/n/n19b1e5273332)

 昔から、芸能人がつまずくといえば薬物、という印象があった。マリファナ所持で色んな人が逮捕され、その後普通に復帰しているのを見て、子ども心に「この人もヤクと手を切ったのか」などと思っていた。かつて「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」という標語があって、それを見て「クスリは身の破滅」くらいに思っていたが、これは覚醒剤も危険ドラッグも大麻も区別がついていなかったためである。しかし、この記事によれば、大麻ごときで逮捕する必要はなさそうなのだ。なぜだろうか。以下に要約する。

1. 2019年、国連は薬物の非犯罪化を推奨した

 非犯罪化というのは、歩行者の信号無視、未成年の喫煙のように、違法だけれど逮捕はしない、というものだそうだ。薬物の中でも、大麻を持っているからといって逮捕され、投獄される国は先進国では珍しいとのことである。

2. 薬物の被害(犯罪、交通事故など)と本人の社会的被害の大きさを比較する

 薬物の被害として、1)本人への健康被害、2)社会への被害、周囲への迷惑、という二つがあり、もう一つ、3)逮捕されることによる本人への社会的被害がある。1)+2)が3)より大きい時は逮捕は正当とされるが、大麻ではそうはならない。大麻はお酒、煙草、睡眠薬より安全だから、とのことである。これは驚きだった。また、アメリカ、カナダでは大麻は合法だが、だからと言って犯罪率は上がっておらず、また運転の際に上昇する危険度も、飲酒や携帯を見ながらの運転より低いという報告があるらしい。スマホの「ながら運転」では、死亡率は110%上昇するが、それでもスマホの車内持ち込みは禁止されていない。大麻所持も同じように扱うべき、とのことだ。

 このように、1)本人への健康被害、2)社会への被害、周囲への迷惑(交通事故や犯罪)という点で、大麻はさほど問題とはならない。これに対し、3)逮捕されることによる本人への社会的被害はどうだろうか。芸能人の場合、事務所を解雇、出演作の回収と販売禁止、その他の賠償があるが、これは社会的抹殺に等しく、筆者は1)、2)に比してあまりにも被害が大きすぎるという。

3. 更生の可能性を考える

 さらに、逮捕は更生とつながらないという問題がある。逮捕によって仕事を失い、家族を失ってしまえば、出所後頼るところがない。そんな分断を生み出すくらいなら大麻と共存した方がいい、と筆者は結論づけている。

 大麻の合法化への訴えは、これまで何度か聞いたことがあり、その度に不思議だった。これはひとえに私が薬物というものを知らなかったからである。しかしこの記事と、他のいくつかの記事を読んでみて、これはもう少し考えるべきではないかという気がした。そう言えば知り合いの女の子が去年からカナダに留学しており、出発前に「カナダは大麻が合法なんですよー」とやや嬉しそうに話していた。私は「薬物に手を染めると人間をやめることになる」くらいに思っていたため、「合法でも絶対吸わないで!」と言ったのだが、もう少し「なぜ合法なのか」を調べるべきであったと思う。(と言いながら、日本では犯罪であることに変わりはないので、吸わずにいてくれることを願っている。)



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