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福寿草を見る

 私の新春の楽しみは「奈良に福寿草を見に行く」ことである。五條市西吉野町に福寿草の自生地があり、2月になると花が咲く。福寿草はもともと旧暦のお正月(すなわち2月の11日あたり)に咲くとされていて、箱根神社には誕生月の花お守りがあるのだが、1月はお正月、ということでもちろん福寿草である。

 毎年2月の下旬頃に行くのだが、今年は開花が遅い、ということで今日になった。ついでに言うなら、五條市にはピザの美味しいカフェがあり、ここは冬季は休業していて、ちょうど今日から営業再開だったので、そこにも寄れる、という目論見もあった。

 福寿草は何を基準に咲くことを決めるかというと、光である。今日はあいにくの曇り空で、やがて雨もぱらつき始めた。ちょっと光が足りないのでは、と思いつつ斜面を訪れると、やはり咲いていない。残念だったけれど、実はお楽しみは花だけではない。ここでとあるお家のマダムが大豆、小豆、梅干し、お味噌などを作っていて、毎年そこで色んなものを買う、というのも大きな楽しみの一つなのである。幸い今日も品物が色々並んでおり、マダム、さらにはムッシューにお会いすることもできた。早速大豆だの小豆だのを買い、塩茹でにするとお酒のおつまみにもよい、という、不思議な模様の豆も初めて買ってみた。さらには、ニホンミツバチが集めた貴重な蜂蜜、冷凍のブルーベリーもあって、これもヨーグルトに入れると美味しいので買うことにする。なんだかんだと話をしていると、雨が止み、陽が差しはじめた。そして、近くに置かれていた鉢植えの福寿草が、見る見るうちに開いたのである。早速土手に戻ってみると、先ほどは目につかなかった黄色い花がいくつか咲いている!これまで「光がないと咲かない」という知識はあったものの、実際に光の有無で開き具合が変わったところは初めて見た。さらにさらに、こういう現象は咲き初めにしか見られない、ということも知った。季節の終わり頃には、お天気にあまり関係なく、開きっぱなしになるらしい。

 というわけで楽しい時間を過ごしたのち、「こもれび」という名のおしゃれなカフェに行き、ピザをお土産に帰路についたのだった。こういうスパイスのような楽しみは日々を豊かにしてくれる。

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