大阪都構想について

 大阪都構想の「二度めの」住民投票が決定した。そもそも、大して内容を変えずになぜ二度もするのさ、ということはさておき、大阪市民の皆さん、本気で都構想がいいとお考えですか?というためにまとめておく。(私は大阪市民ではない。)
まずはこの文書を読み、これでいいと思えたら賛成、思えない、もしくはわからない、ということなら、賛成票は投じない方がいいと思う。(読まずに投票してはならないし、わからないのに賛成すべきでもない。大切な問題だからだ。)
http://www.pref.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/sougouku_tokubetuku/tokubetukuseidoan.html


 この中で一番驚いたのは、再編後の淀川区(今の淀川区ではなく、此花区、港区、西淀川区、東淀川区、淀川区を合わせた地区)の議員の定員が18人、ということである。(他の三区についても似たようなもので、北区23人、中央区23人、天王寺区19人である。繰り返すが、これはいずれも「再編後」なので、現在のいくつかの区がくっついた後でこの人数。)ちなみに、日本全国で見てみると、議員定数18人というのは、青森県六ヶ所村と同じで、こちらは人口1万人の村である。これに対して新しい淀川区の人口は約60万〜75万人だそうだ。このバランスでいいのか、真剣に考える必要がある。さらに、地方税も減る。個人市町村民税、タバコ税、軽自動車税のみになり、あとは府に吸い上げられる。これは何度も指摘されているが、特別区では「府からのお小遣い制」(交付金制度)になるので、住民のメリットはない。簡単にまとめると、京都大藤井聡教授が言う「大阪市を解体する、権限を府が吸い上げる、残りを小さな特別区にする、」に尽きるだろう。(https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1301419623233908739)


 ツイッターでは字数が足りないと思われたのか、藤井教授はフェイスブックでもう少し詳しく説明しているので、そちらもリンクを貼っておく。(https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/2787860467981545)

2020年9月3日、大阪市議会で大阪都構想の住民投票が決定されました…これは要するに大阪市を解体しそのカネと権限を府に吸い上げさせその残りを4つの小さな特別区に分割するという構想。その投票は不利益を被る市民がその不利益を受け入れるか否かを決めるモノ。いわば、大阪市民に、自分の自治体である大阪市について「自殺」するかどうかを、自分で決めさせる、というのが、この住民投票の趣旨。普通は、この真実が伝われば、誰でも否決/反対するようなものですが、その真実が伝わらず、中身を知らない人においては、イメージだけで賛成してしまうと言うメチャクチャな代物。だから後はこの真実がどれだけ伝わるかにかかっているわけですね。

 このように「真実が伝わる」が大切なのだが、今回の維新にその気はなさそうだ。前回は住民に対して40回近い説明会がなされたが、今回はそれがぐっと減っている。さらに、広報誌でも都構想のメリットばかりを伝える書き方になっている。公務員は特定の政党の方針を強調してはならないので、公平にメリットデメリットをわかりやすく伝える義務がある。大阪市職員条例にも

職員は、市民全体の奉仕者であり、市民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚して、公正に職務を執行し、その職務や地位を私的利益のために用いてはならず、また、市民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。

とあるのだが、これが満たされているのかは疑問だ。さらに、公表されているメリットがまた眉唾ものである。まず、維新広報部の大阪府市副首都推進局ですら『大阪市を廃止しなければ解消できない二重行政』を市民に説明できなかったという。(https://twitter.com/aomurasaki_ll/status/1299690346993999876)
さらに、都構想の財政シミュレーション、当初は103億から213億円の黒字を見込んでいた。しかし、コロナ禍を受け、先月は17億〜77億に減らしている。ただし、大阪メトロの大幅減収は盛り込まれていない(コロナが収まれば回復するからとのことだが、それは甘い)。ついでながら、都構想を他府県でも実現させるなら、京都、愛知、兵庫でもそれぞれ京都市、名古屋市、神戸市を廃止して特別区に、ということになる。しかし、京都で維新の議員が都構想を持ち出したら、大阪の維新の議員が猛反対した、というのを見かけた。こちらも見てほしい。(https://twitter.com/ZooseeNxx17/status/1122486318896795648)

 要するに、都構想は大阪市民にとってはデメリットしかない。格下げになりますがよろしいですか、ということを問うために住民投票をするのだ。そこを理解した上で、それでも賛成だ、という方のみ、賛成票を投じてもらいたい。決して、アイドルに投票するように「吉村知事のファンだから」などという理由で入れないでほしい(政治というのは、誰がするか、ではなく、何をするか、である)。一度特別区に格下げされたら、いまの法律では二度と大阪市には戻れない。


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