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2024年韓国競馬施行計画

昨年末に韓国馬事会(KRA)より発表された2024年度競馬施行計画の内容についてご紹介します。

2024年競馬開催計画:目次
https://race.kra.co.kr/down/raceplan_2024.pdf (PDF, 韓国語版のみ)

I. 基本方針(1p)

昨年同様、競馬産業振興や競馬番組の質向上に向けた取り組みなどについての骨子が記載されています。

II. 重要な制度改善事項(2~8p)

  1. 出馬投票日は釜山慶南が水曜日、ソウルは木曜日でしたが両場とも水曜日に統一されます。

  2. 昨年のナイター開催日は夏季6週間でしたが今年は春季4週間+夏季4週間の開催となります。

  3. これまで新馬戦としてRookie 1(デビュー2戦目まで)、未勝利戦としてRookie 2(同6戦目)という形で編成されていましたが、今年からデビュー3戦目までをRookie競走として一本化し、その中で内国産馬限定戦と外国産馬限定戦に分けられることになりました。

  4. 中長距離戦への出走や海外遠征時の入賞など各種インセンティブの新設・拡大が行われます。

  5. 12月以降の海外遠征(特にDWCC)を促すべく大賞競走の実施時期を見直し、グランプリG1は11月第5週に前倒しされます。

  6. コリアカップ・コリアスプリントへの出走意欲を高めるため賞金を10着まで配分することになりました。(但し、後述しますが総額は変わらないため1~3着は減額となります)

III. 2024年施行概要(9~10p)

1.開催日・閉場日

2024年1月5日(金)~12月29日(日)の間、基本的にソウルは土・日曜日、釜山慶南は金・日曜日、済州は金・土曜日に開催されますが、下記日程のみ休止されます。

① 2024年2月9日(金)~2月11日(日):旧正月
② 2024年7月26日(金)/7月28日(日):酷暑期休止(釜山慶南)
③ 2024年8月2日(金)~8月3日(土) :酷暑期休止(済州)
④ 2024年8月10日(土)~8月11日(日):酷暑期休止(ソウル)
⑤ 2024年9月20日(金)~9月22日(日):中秋

なお、年間開催日数はソウル・釜山慶南が98日(±0日)、済州が97日(+1日)となっています。

2.開催時間

<昼間開催>
金曜日:1R 11:00 / 最終R 18:00(釜山慶南・済州)
土曜日:1R 10:35 / 最終R 18:00(ソウル・済州)
日曜日:1R 10:35 / 最終R 18:00(ソウル・釜山慶南)

<春季ナイター開催:2024年3月29日(金)~4月21日(日)>
金曜日:1R 14:00 / 最終R 21:00(釜山慶南・済州)
土曜日:1R 13:30 / 最終R 21:00(ソウル・済州)
日曜日:1R 10:35 / 最終R 18:00(ソウル・釜山慶南)

<夏季ナイター開催:2024年8月23日(金)~9月15日(日)>
金曜日:1R 14:00 / 最終R 21:00(釜山慶南・済州)
土曜日:1R 13:30 / 最終R 21:00(ソウル・済州)
日曜日:1R 10:35 / 最終R 18:00(ソウル・釜山慶南)

ナイター開催は夏季6週間から春季4週間+夏季4週間へと増加しますが当該期間中の日曜日は昼間開催という変則になりますので、9月8日(日)のコリアカップ・コリアスプリントは昼間開催であることにご注意ください。

IV. 競馬施行体系(11~20p)

1.レース編成

・フルゲート:14頭(一般・リステッド)/16頭(グレード)
・クラス編成:6クラス制で、詳細は下記記事を参照ください。

上記はともに前年度から変更はありませんが、一般戦(平場)は概ねフルゲート11~12頭で運用されています。

2.競走距離

昨年度の表では説明書きが無いまま◎と○の2種類に分類されており◎は基幹距離を示すものと思われましたが、今年からは全て○表記に統一されました。その他特に大きな変更はありません。

3.負担重量

<馬齢重量>(前年度からの変更無し)
主要なグレード競走に対し上半期(1~6月)は古馬58~59kg、下半期(7~12月)は古馬57kgを基本として、3(4)歳馬に対しては下表の通り月度と距離のマトリックスで細かく調整されます。(牝馬2kg減・南半球産馬の減量有り。以下同じ)。

しかし、馬齢戦で行われるグレード競走は上表・赤枠囲みの部分しか無く、3~4月の2000m戦(ヘラルド経済杯G3とYTN杯G3)や5月の1800m戦(釜山広域市長杯G2)は3歳馬にとって5~7kgという大きな減量があるとは言え普通はクラシックを目指しますので、実際に適用されるのは春の短距離シリーズを除き8月KRAカップクラシック(1800m)以降の3kg以下減になると言えます。

なお、2歳馬については実際にそのような馬齢戦は行われません(ただしクラス4~5あたりの下位等級では後述の別定やハンデで古馬混合戦が行われます)。

<別定重量>(前年度からの変更無し)
別定A:日本で言うところの”定量”で、概ね57kgを基本に性齢で調整。

別定B:下記の通り国内レーティング3~4ptごとに1kg幅で調整。

別定C:クラス6のみ適用、2着/3着回数に応じて馬齢重量+0.5~1.5kg増。

<ハンデ重量>(前年度からの変更無し)
日本のようにハンディキャッパーが決めるのではなくトップハンデ馬を基本重量とし、その馬から国内RTが1pt離れるごとに0.5kg減らすという方式です(例:RT差4=2kg減)。これにも牝馬2kg減や南半球産馬調整・見習騎手減量が適用されますが最低重量は51kgとなっています。

なお、このハンデ戦は平場でのみ行われますが特にクラス1はRT 81~140と幅が広いため、例えばRT 120以上の上位馬が叩きや調整で出走するには厳しい条件となり、一方でまだRTが上がり切っていない3歳上位には有利な条件となっています。ここで2023年12月24日の釜山慶南10R クラス1一般戦を例示します。

このレースは2歳チャンピオン(BCルーキーG2優勝)ながらRT 88のSPEED YOUNG(牡3)が勝ったのですが、重賞で入着経験すら無いものの平場実績を積み重ねてRT 122にまで上がった4着CRAZY CONTI(騙6)がトップハンデ58kgとなり、そこからRT差に従ってSPEED YOUNGの斤量が設定されました。

両馬間のRT差は34もありましたのでSPEED YOUNGは計算上41kgとなりますがそこは最低重量51kgが適用、しかし実際には騎手が対応できないため調教師の申告により52kgでの出走となりましたが、さすがに前走・大統領杯G1で3着に入ったSPEED YOUNGにとっては有利な斤量で、実際結果も単勝1.1倍に応えた3馬身差の快勝となりました。

このようにRTの高い有力馬にとっては使いにくく、ファンにとっても配当的妙味が削がれるやすいのが平場ハンデ戦ですが、さすがにこの状況を是正するためか2023年12月28日にクラス1のRT一斉調整が実施されました。

これに従うとCRAZY CONTIはRTが122→102、SPEED YOUNGは88→85となり、それでもまだRT差17=-8.5kgとはなりますが、このクラス1へのRT一斉調整は2024年12月にも実施すると今回の実施計画に記載されていますので、今後はより出走馬にもファンにも魅力的な平場戦になってくれればと思います。

4.見習騎手減量

前年度からの変更はありませんが、一般競走(平場戦)においてデビューから5年以内且つ通算40勝未満の見習騎手(現地用語では”修習騎手”)に対し下記の通り行われます。ちなみに女性騎手への減量制度はありません

-4kg 10勝未満
-3kg 10勝以上20勝未満
-2kg 20勝以上30勝未満
-1kg 30勝以上40勝未満

5.レーティングシステム細部運営基準

前年度より変更はありませんが、これは韓国独自の国内レーティングとして1~140ptの間で設定され(1pt=0.5kg)、クラス分けや負担重量の設定、はたまたファンにとっては予想根拠の一つとして用いられるものです。

基本的には4着馬を基準馬として着差(1馬身=2pt換算)や負担重量差に応じて増減させるものとしており、ここだけ見ると国際レーティングと似ている部分もありますが、1着馬には無条件で最低5pt追加したり、昇級後の成績不振馬には着外回数に応じて減点させるなどの独自ルールもありますので、似て非なるものかと思われます。よって、詳細のご紹介は割愛します。

なお、国際レーティングについても都度算定されていますが、KRA公式サイトでは年1回、全所属馬の年間最高レーティングが公表されます。

V. 2024年競馬施行細部計画(21~38p)

1.年間競走数

ソウル 1,058レース(前年比 +6)
釜山慶南 716レース(前年比 +6)

全般的に大きな変更はありません。

2.入厩(新規登録)基準

2歳時にKRA育成牧場で実施される育成調練審査に合格した馬は3歳6月までの入厩(新規登録)が可能ですが、同審査を経ていない場合は2歳12月までに新規登録しなければなりません。

3.大賞・特別競走施行概要

<基本方針>
昨年同様、①ブルーブック追加登載やレース格の昇格を目指した大賞競走(グレード+リステッド)の品質強化、②G1競走を頂点としたシリーズ体系の高度化を通じ国際舞台で競争できる最高優秀馬の選抜機能強化、を基本方針としています。

<大賞・特別競走一覧>

上表のExcelファイルはページ下部より
ダウンロード可能です (ご自由にお使いください)
これは筆者自作の体系図です

大賞競走数はG1 5競走、G2 8競走、G3 10競走、リステッド14競走となっており、2023年度と比べて下記の違いがあります。

  • グレード競走の格付け変更

    • ソウル馬主協会長杯(G3→G2)

  • リステッド競走の新設・廃止

    • 新設:釜山広域市江西区庁長杯L(国産2歳牡牝)

    • 廃止:アルムダウンチルジュS L(国産2歳牡牝)
      (実質は釜山広域市江西区庁長杯への改称です)

  • 施行条件変更

    • 果川市長杯Lと慶南道民日報杯Lの出走条件が2歳牝馬から2歳に変更(牡馬・騙馬の出走が可能になりました)

  • 開催時期変更

    • トリプルクラウン・トリプルティアラが概ね1か月ずつ前倒し

    • 大統領杯G1・グランプリG1が概ね1か月ずつ前倒し

    • KRAカップクラシックG2が10月→8月に前倒し

4.条件別最優秀馬選抜シリーズ競走及び国際競走

<シリーズ競走施行体系>
各シリーズにおいて前年度と特に大きな変更はありません。

<古馬スプリンター・ステイヤー・クイーンズツアーシリーズ>
ソウル・釜山慶南の各競馬場でチャレンジ競走が実施され、着順に応じたポイントが付与されます。そして累積ポイント上位7頭(ソウル3頭+釜山慶南3頭+前年度優勝馬)が優先出走権を得て第1関門に臨み、以降同じような形で第2,3関門を経て、最終的な累積ポイント数でシリーズ最優秀馬が決定されます。

<クラシック三冠:トリプルクラウン・トリプルティアラ>
前年度の2歳ジュベナイル(JV)シリーズからポイント付与が開始され、累積ポイント上位15頭(ソウル8頭+釜山慶南7頭)と前年度JVシリーズ優勝馬の計16頭が第1関門に臨みます。その後各関門の間に実施されるチャレンジ競走を勝ち上がってきた馬を含めて累積ポイント順に上位16頭(ソウル9頭+釜山慶南7頭)が第2,3関門に臨み、最終的な累積ポイント数でシリーズ最優秀馬が決定されます。

<2歳ジュベナイル(JV)シリーズ>
チャレンジ競走と第1,2関門を経た累積ポイント上位16頭(ソウル8頭+釜山慶南8頭)が第3関門であるブリーダーズカップルーキーG2への優先出走権を得て、最終的な累積ポイント数でシリーズ最優秀馬が決定されます。

<コリアプレミアシリーズ>
シリーズ6競走(コリアカップG1/IG3・コリアスプリントG1/IG3・グランプリG1・大統領杯G1・KRAカップクラシックG2・Owners’ Cup G3)とその狭間の全競走を対象に着順別ポイントが付与され、コリアカップ・コリアスプリントを除くシリーズ4競走においては累積ポイント上位16頭(ソウル8頭+釜山慶南7頭+前年度優勝馬)が優先出走権を得ます(グランプリは人気投票結果も考慮されます)。そして最終的な累積ポイント数で年度代表馬と最優秀内国産馬が決定されます。

<韓国国際競走:コリアカップ・コリアスプリント>
フルゲート16頭で変わりはありませんが、「海外招致馬は最大8頭」という表記が消えました。

なお、次項にて記載がありますが海外招致馬については早めに韓国入りしてクラス1一般戦を最大3回まで叩き参戦することが可能です。

<海外開放競走>
これまで同様、SBSスポーツスプリントG3・YTN杯G3・トゥクソム杯G2・KRAカップクラシックG2を外国調教馬への開放競走としています。

ちなみに2023年はSBSスポーツスプリントとトゥクソム杯を同日開催とし、秋の韓国国際競走に比類するものとして春の国際競走デーになるものと期待されましたが、残念ながら日本をはじめとする海外調教馬の参戦はゼロでした。

あとは34~38ページにおいて大賞・特別競走の一覧表が競馬場別・施行時期別・レース格別に掲載されていますが、37ページ統合版の和訳Excelファイルを共有しますので、それをソートするなどしてご参照ください(ご自由にお使いください)。

2024年2月24日に大賞・特別競走の一部日程が変更となりましたので、変更後のExcelファイルを以下の通り共有します。

VI. 競走編成(39~52p)

出馬手続き

「競走編成」という項目名になっていますが内容としては出馬手続きに関するものです。ポイントのみ箇条書きします。

  • 出馬登録

    • 一般戦は1週前

    • 大賞・特別競走は4週前(予備登録)、2週前(1次登録)、1週前(2次最終登録)の三段階

  • 登録料(大賞・特別競走のみ)

    • 賞金総額×0.2%(例:グランプリG1の場合10億ウォン×0.2%=200万ウォン)

    • 予備登録を行っていない場合は賞金総額×0.4%(倍額)

  • 出馬投票

    • ソウル・釜山慶南共には開催週水曜日の午前10時
      (昨年までソウルは木曜日の午前10時でした)

VII. 賞金運営(53~59p)

賞金額一覧

2023年とは下記の通り変更されています。

  • コリアカップ・コリアスプリントは6~10着にも賞金配分。ただし総額は変わらないため、1~5着への配分割合が55%, 22%, 14%, 5%, 4%から50%, 20%, 10%, 6%, 4%へと変更(=1~3着は減額、4着は増額、5着は同額)

  • クラス5とクラス6は総額アップ(クラス5:4000万ウォン→4500万ウォン、クラス6:2500万ウォン→3000万ウォン)

なお、一般競走に限り見習騎手を起用した場合は5%加算となります。

2024年賞金額

<出走奨励金>
馬主には9着まで、調教師・厩務員には10着まで支払われますが、今年より大賞競走・特別競走の場合は出走全頭に支払われるようになりました。(騎手には別途騎乗料を支給)

<付加賞金>
登録料を1着から3着までの馬に対し、6・3・1の割合で配分します。ご参考まで、JRAは7・2・1の割合です。

その他、各種インセンティブについても記載されていますが、その詳細は割愛します。

VIII. 一般事項(60~72p)

調教審査・能力検査や装着馬具について記載されていますが、その詳細は割愛します。

ゼッケン色

ただし一つだけ、ゼッケン色についての規定をご紹介します。

帽子色
グレード競走(2022年11月大統領杯G1)
一般競走(2022年11月)

IX. 施行時期(73p):2024年1月1日付

添付資料(74~102p)

これまでにご紹介してきた内容を補足する詳細資料につき大部分は省略しますが、国内グレードの格付けについてのみ触れることとします。

競走の格付け管理

韓国競走分類委員会(Korea Pattern Committee)が国際レーティングに基づくパターンレースレーティング(PRR:年間レースレーティングの過去3年平均)を基準として管理しています。

下表が昇格・維持基準ですが、PRRが2年連続で3ポイント超下回ったときは委員会の全員一致で、3年連続のときは委員会の過半数以上賛成で降格となります。


以上、2023年度との違いや日本との比較も交えながら、解説交じりでご紹介しました。ご意見・ご質問等ありましたらお気軽にコメント欄にてお知らせください。ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

(ご参考まで、昨年度の記事リンクはこちらです)


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