ポケカ定量評価第1号 ポケモンの枚数を増やすと、ポケモンを引く確率はどれだけあがるか

はじめに

 ポケモンカードのデッキ構築の議論中に「ポケモンAを1枚じゃなくて2枚採用すると、ポケモンAを素で引く(ターン初めのドローや博士やマリィなどの縦引きサポートで引くこと)確率を上げられ、デッキが安定する」という旨の意見を複数回聞きました。素引きする確率が上昇するのは明らかなのですが、その差異はかなり感覚的なものに頼っていました。そこで、あるポケモンAを1枚採用したデッキと2枚採用したデッキにおいて、ポケモンAを引く確率がどれだけ差が出るのかをある程度定量的に考察しようと思います。
 なるべく一般化しましたが、発端が身内ネタなので特に2章はなんでこんな議論しているのかわかりづらいかもしれません。

<前提条件>
⓪山札は60枚の状態で上からカードを引いていく。
①ポケモンAをデッキに1枚採用する場合と2枚採用する場合を比較する。

1 Aを引く確率の解釈

 まず、シンプルにポケモンAを引く確率を考えます。Figure 1にカードを引いたときにポケモンAを引く確率の変化を、ポケモンAを1枚および2枚採用したときで比較した図を示しました。以降の図も共通してA1枚採用デッキの場合を青い線、A2枚採用デッキの場合を赤い線、それらの比を緑の線で示します。

画像1

Figure1

少なくとも、採用枚数を1枚から2枚に2倍とすることで、引く確率が2倍になることはありません。山を引くほど、採用枚数を増やしたことによるうまみが減ってくるためです。グラフを見ると、山を引くほど現物の枚数を多くするお得感がなくなっていくことが直感的にわかると思います。それでも、山を半分の30枚引いた時点でA1枚の場合は50%、A2枚の場合には75%と25ポイントの差があります。A2枚採用のおかげで引けることはそこそこありそうです。

 しかしながら、そもそも、ポケモンAを引くことを目的とするならば、ポケモンAを引く確率はボールと合計した枚数で考える必要があります。そこで、一旦ここでは、引くカードはポケモンAだけでなくボールでも良いと仮定し、以下の前提条件を追加します。

<前提条件>
②デッキにはポケモンAに触ることができるカードとしてクイックボールが4枚とプレシャスボールが1枚採用されている。

デッキにクイックボールが4枚とプレシャスボールが1枚、加えてポケモンAが1枚で合計6枚の場合と、ポケモンAが2枚で合計7枚の場合の、ポケモンAを引く確率の比較をFigure 2に示します。

画像2

Figure 2

デッキを30枚ほど掘ればAかボールをほぼ確実に引けるといえる計算になり、Aの採用枚数はほとんど関係ありません。その半分の15枚引いた時点でも、引く確率A1枚の場合は84%、A2枚の場合には88%と4ポイントしかありません。ボールを合わせて5枚程度採用すれば、ポケモンAを引く確率はデッキに1枚採用しても2枚採用しても差異はこれっぽっちになってしまいます。ちなみに15枚は初期手札7枚+トップドロー1枚+はかせの研究7枚で引く枚数なので、一つの基準とできそうです。


2 ポケモンAとボールを引く確率の解釈

 さて、ここからが本題です。上記の検証ではポケモンAを引くこととボールを引くことを等価に考えていました。しかしながら、それでははじめに計算したようにポケモンA現物を増やしたことによって、現物を引く確率が上昇するメリットに対してなんの回答も得られていません。「ポケモンAを現物で引いていれば、クイックボールで他の有用なポケモンを選択でき、さらに場を展開できるメリットを考慮していない」といった旨の反論が入ることが想定されます。
 そこで、ポケモンAを引いたうえでボールも引く確率を考えます。Figure 3にポケモンAの枚数が1枚と2枚のときのポケモンAとボールを両方引く確率の比較を示しました。

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Figure 3

山を半分の30枚引いた時点で、A1枚の場合は49%、A2枚の場合には73%です。確かに、ポケモンAを1枚から2枚に増やすと「ポケモンAとボールを両方引く確率」はそこそこ上がり、ボールで他の好きなポケモンを選択できるようになる確率が上昇すると言えます。

 しかしながら、Figure 3の検証では一つ重要な視点が抜けています。「Aを引いていればボールで他の有用なポケモンをとれる」状況を考えるならば、「他の有用なポケモンを引いていればボールでAをとれる」状況も同時に考慮しなくてはならないからです。

 上記を議論するために、以下の前提条件を追加して考えます。

<前提条件>
③デッキにはポケモンA以外に有用なたねポケモンのカードとして、ポケモンX1~ポケモンX7が計7枚採用されている。
④「ポケモンAを現物で引いていれば、クイックボールで他の有用なポケモンを選択でき、他のポケモンを展開する余裕がうまれる」状況と「他の有用なポケモンを引いていればボールでAをとれる」状況を合わせて「ポケモンAと任意のポケモンXの2匹を場に並べる」と解釈する。

実際のポケモンカードの対戦の状況はこれらの前提条件よりはるかに複雑になりますが、あまり詳細な状況に場合分けしてもきりがないので、ここは大雑把な仮定を置きます。特に雑な点として以下が挙げられます。
・ポケモンA以外のポケモンXをすべて等価と扱っている。
・ポケモンAを含めて3枚以上のポケモンを並べることは考えていない。
・ボールとポケモンを引く順番は考えていない。
ですが、本記事ではなるべく一般化して考えたいので、細かいことは気にしないことにします。

 さて、「ポケモンAと任意のポケモンXの2匹を場に並べる」と解釈した場合には、必ずしも「Aとボール」を引く必要はなく、「AとX」や「ボールとX」のような引き方でも同様の盤面を得られます。具体的にはポケモンAとポケモンXを引くときの組み合わせは次の4パターンが考えられます。

1 (ポケモンA、ポケモンX)
2 (ポケモンA、ボール)
3 (ボール、ポケモンX)
4 (ボール、ボール)

この4パターンのうちどれか一つでも満たす引き方をする確率をFigure 4に示しました。

画像4

Figure 4

 Figure 3と比較してポケモンAの枚数を2枚に増やすうまみがかなり減っていることが分かると思います。デッキを30枚ほど掘ればほぼ確実にどれかしらのパターンを満たす計算になりました。その半分の15枚を引いた時点でパターンを満たす確率は、A1枚の場合は80%、A2枚の場合には85%と5ポイントの差になります。
 つまり、Aの採用枚数を2枚にすると「ポケモンAとボールを引く」かなり限定された状況をつくる確率は上昇しますが、求める盤面(ポケモンA+ポケモンX)をつくる確率に対しては現物Aの枚数を増やす効果は比較的小さいと言えます。

 このような結果になるのは、ボールの方がポケモン現物よりも汎用性が高いためです。ポケモンAはポケモンAにしかなりませんが、ボールはそのとき最も必要なポケモンに変換できます。カードゲームにおいて汎用性の高さの重要さがこの検証から少し感じられました。

終わりに

 かなり雑な仮定をおいていますので、確率の計算結果は参考程度にしていただければと思います。前提条件にしたボールやポケモンの枚数はこの記事を書くきっかけになった議論をしていたときのデッキレシピに基づいています。当たり前ですが、そこの枚数が変わると計算結果はだいぶ変わります。たとえば、現物3枚と現物4枚って確率計算するとほんとに微々たる差になるんで、僕にはできなかった子ズガのジラーチを3枚にする選択も結構合理的なんですよね。

 最後にこの記事を通して僕が言いたいことがあります。
・ハイパーボールの再録を求めます。
以上となります。

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