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ち・し・き・りが言えない、側音化構音…イ段の発音や滑舌はなおせます

こんにちは。
はじめまして。言語聴覚士のななさんです。
言語聴覚士(げんごちょうかくし)は、ことばときこえの専門家で、国家資格です。
わたし、ななさんは東京都蔵前でことばの相談室ことりという相談室を開業しています。

今日は、みなさんにお伝えしたいのは、側音化構音(そくおんかこうおん)という発音のお悩みについてです。

側音化構音とは

側音化構音とは、い段(し・じ・ち・き・り…etc)の音で、息が抜けるような、空気が漏れるような濁った発音をする状態を指します。

程度の重たい方ですと、「き・ひ・ち」の音、どれを言っているのかが周囲の人からは聴き取れず、会話に苦労なさいます。たとえば、1(イチ)と7(シチ)を言い分けられなかったり、「飛田さん(ヒダサン)」と「来田さん(キダサン)」に困ったり、「地球(チキュウ)」と「気球(キキュウ)」がどちらも同じに聞こえたり。
りゃ・りゅ・りょが言えない場合だと、「リュウヤさん」「リョウガさん」「リョウコさん」お名前によく入っているので困ります。言えない音は言い換えを探したりしますが、お名前は基本的に言い換えが効きませんからね。

もし、この側音化構音(そくおんかこうおん)という状態を、あなたや周囲の方(お子さんなど)がお持ちでしたら、それは言語聴覚士との練習によってなおすことが可能です。(参考note記事:発音は、20歳を過ぎても治せます https://note.com/nanu/n/ne4cc2ddbbff9 )


側音化構音が生じるメカニズム

側音化構音が生じるメカニズムをかんたんに説明します。い段(え段で起こることもあります)かつ、舌を使う音で生じます。

図を参照ください。

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通常ですと、べろ(舌)の中央で発音すべき音を、左右どちらかの側で出している状態、それが側音化構音と呼ばれる理由です。音が濁った響きになるため、聴いたときに違和感が起こります。

側音化構音の見分け方

図を参照ください。

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側音化構音の方は、お話しするときに左右どちらかの唇の口角がクィッと持ち上がります。口角だけでなく、顎が左右にズレるような動きが目立つ方もいらっしゃいます。全体としては、い段のときだけ顔が一瞬引きつるような印象になります。

なおすべき?

ずばり、気になる方はなおすべきです。特に、話すお仕事をなさっている方(営業や接客業の方など)は、話し方も外見の第一印象同様、重要だと感じられると思います。側音化構音をお持ちの方は、実は世の中にたくさんいらっしゃいます。気にならない、言われてみれば該当するかもしれないけれど、べつに今のままで特に必要ないという方は、なおす必要はありません。お子さんなど、ご本人に決断を委ねづらいときには、保護者の方に判断をお願いすることにしています。

側音化構音の練習はそこそこ根気が必要

 なぜなら、側音化構音を矯正する治療は、超過酷…とまではいきませんが、そこそこ根気が必要です。とくに、すでに成人している方の場合には、「その発音のフォーム」が出来上がってから、何十年も強固に固められてしまっているので、練習中は上手くいくようになったけど、普段話すときにまた逆戻りしちゃう…ということが起こりがちです(リハビリ用語では、”汎化が難しい”と表現します)。

 逆に、お子さんの場合、頭が柔らかいのと「発音のフォーム」が出来てから年月が浅いので修正をかけるのは簡単です。ただし、こんどは集中力を持続させるのが難しいのと、繊細な音を感じ分ける力を育てる必要があります。このへんは言語聴覚士の力量の部分にかかっています。腕の見せ所ですね。

側音化構音は、どのくらいでなおせる?

 わたしの場合、大人の方であればたいてい、初回で音が作れるところまではいきます。重症度や舌の形質的な異常(舌小帯短縮症など)次第では、複数回かかることもあります。そのあとは、日常生活でも出せた音を使いこなせるようになるまで、ご自宅での練習メニューをお出ししつつ、月1回ペースで実施していきます。3か月~半年間(6回)の治療である程度のところまでいき、そこから先はそれぞれの判断にお任せするといった感じです。ちなみに、初回は70分13,000円、2回目以降は45分8,000円でお受けしていて、実施カルテの写しの送付、練習メニューのお渡し、練習に必要な素材データ(動画や録音など含む)の送付、メールでの質問解答を含みます。

 お子さんの場合には、練習のペーシング(ペース配分)を大人の方よりも丁寧に実施していくことになります。上記の流れをもうすこし細かく、ステップアップにて実施いたします。

大人の方、お子さん、いずれの場合にも、オンラインレッスンにも対応しています。

発音矯正はなぜ言語聴覚士に依頼するのがいいの?

 もちろん自分での矯正にトライされてもいいですし、言語聴覚士でない方が開業されているボイストレーニング教室などで、側音化構音矯正のメニューをお見掛けすることもあります。

 この領域唯一の国家資格を持つ言語聴覚士の、プロとしての強みを挙げるならば、必修のカリキュラムにあります。言語聴覚士の資格を取得するには、言語学の親戚である「音声学」という科目を必ずパスする必要があります。また、話すことにかかわる器官(口、のど、鼻、べろ、声帯など)の解剖や機能、生理、病態などをかなり詳しく学んでいます。このあたりの理解をふまえた上で行う発音矯正であれば、適切な手順で無理なく発音を導くことができます。

 さらには、これまでの臨床経験における「側音化構音」の治療歴や経験している症例の数にも違いがあります。発音の矯正や指導に携わっているのは、小児・発達障害などの領域で働く言語聴覚士です。この、小児・発達障害領域の言語聴覚士は、2020年現在、全国で3000人程度しか居ないと言われているほどに少ないのです。

ことばの相談室ことりは、大人の発音矯正を実施している全国的にも数少ない言語相談室です

 手前味噌になりますが、ことばの相談室ことり(ななさんが主宰していることばの相談室)は、大人の発音矯正を完全予約制で承っています。おそらく大人の側音化構音の方に誰よりも多くお会いしている言語聴覚士だと思います。もともとお子さんの発音指導を実施していたのですが、大人の方にも発音に悩む方が多く居ることに気づき、受け入れ窓口をつくりたいという想いで開業いたしました。大人の方については、発音矯正以外のニーズの方(失語症や吃音など)の受け入れも実施しています。

どんな人が来るの?

 さきほど話す職業の方、と言いましたが、今の時代では話さない職業のほうが少数派で、さまざまな方がご相談にみえます。学校や教室の先生をなさっている方、就職活動中の学生さん、営業職の方、接客業の方、動画などのウェブ配信をされる方など。

 最近、オンラインでの打ち合わせや会議が増え、通信を介すると発音がクリアになったり自分の話す音声を客観的に聴く機会が増えたので、あらためて気になるようになったという方が増えています。年齢はさまざまで、お子さん以外ですと、中学生から40代くらいまでの方が中心です。

おわりに

 いろいろと書きましたが、この記事は、必要のない人に無理に治療をすすめる意図はありません。

 この発音矯正というプログラムを開始して、大変有難いことに、さまざまな人から「なおせるものだと思ってもみなかった」というお声をいただくことが増えました。
 発音のお悩みは周囲からは軽く思われがちですが、ご本人にとっては深刻です。からかわれて自信を無くしてしまう人、発言の機会を控えてしまう人も多くいらっしゃいます。
 ことばの相談室ことりが、少しでも、そうした人のお悩みの助けになることができましたら幸いです。

ち、し、り、などがうまく発音できずに大人になったのですが、大人でも訓練で良くなると聞いてレッスンしています。 発音の特性に合わせてレッスンしてくださりフィードバックや課題をいただき家でも練習しています。
昔から悩んでいて、もうどうにもならないんだろうなと思っていた発音の問題を相談でき嬉しかった。その上で適切に矯正の手続きを取っていただき感謝しかありません。もっと早く出会っていれば、自分の人生もまた違ったのだろうなと思うほど。本当にありがとうございました!
(ことばの相談室ことり 発音矯正レッスンへお寄せいただいた感想です)


いただいたサポートは、ことばの相談室ことりの教材・教具の購入に充てさせていただきます。