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エジプトでパスポートを紛失してから日本に帰るまでの話⑤

2024/1/3(水) カイロ
パスポート紛失から3日目

母親からの励まし

深夜1時ごろ,バスにゆられていた。ルクソールのバスステーションを9時に出発し,4時間が経過しようとしていた。

バスは2時間ごとにサービスエリアらしき場所に停まり,その度に明かりが灯るので,ぐっすりと眠ることはできなかった。

ただ,乗っていたバスは日本の深夜高速バスと変わらないぐらいきれいで椅子もクッション性があり,運転も丁寧であった。

スマホを確認すると母親からのラインが入っていた。「元旦には能登半島地震があり,その翌日には羽田空港で航空機の衝突事故があったよ。不幸なのはあんただけじゃないから大丈夫!」と,母親から独特の励ましを受けた。

明け方のバスからの景色

今日の予定

そんなこんなでカイロに着いたのは朝の8時。予定よりも1時間遅れの到着であった。ただ,交通事故の多いエジプトで無事にカイロに到着できたのは何よりである。

ホテルのチェックインを済ませ,今日の予定を考える。今の一番の関心事は大使館がどこにあり,どうやっていくのが最も便利に行けるかだ。

大使館から昨日,深夜便で帰るのが難しいと言われたが,朝イチで行けばワンチャンあるのではと,しつこいぐらい諦めていなかった。

だとすれば,今日すべきことは大使館へ行く練習だと思った(注:今考えると不要だと思うが,それだけ帰りたかったのだろう)。

泊まっている宿はサガト駅という場所の近くにあり,大使館はハダーイクエルマアディ駅という場所にある。

この駅へは,サガト駅から一本で向かうことができる。地下鉄だと6ポンドで行けるため,タクシーで向かうよりもかなり予算が抑えられる。また現地人の生活も肌感覚で経験したいと思っていたことから地下鉄を利用することに決めた。

そうとなれば,まずエジプトの地下鉄の乗り方を知り,ハダーイクエルマアディ駅から歩いて在エジプト日本国大使館に向かう経路を把握する必要がある。何と言ってもチャンスは一回のみなのである。何事も準備が大切である。

大使館に行く練習

地下鉄に乗るには空港の保安検査場のようなゲートを通る必要があるが,利用する人が多いのか,ゲートがプップなっていてもスルーできる。形だけで何の役にも立っていない。

切符売り場に並び,行き先の駅を告げ,切符代6ポンドを払うと,切符をもらえる。それを改札に入れて入場。

さまざまな電車が入り組んでいる駅だったため,どのラインがハダーイクエルマアディ駅に向かうかわからなかったが,現地の人に伺うと優しく教えてもらえた。

車両に乗り込み,15分程度ゆられると目的の駅へと到着した。乗車中,爪楊枝や綿棒を大声で車両販売する明らかに電車のスタッフではないエジプト人がいたが,周りの乗客は普通にしていて,どうやらこれは日常のようだった(実際に,現地のバスや電車に乗るとこのような人にたびたびであった)。

駅から大使館への道順はわかりやすかった。野良犬が数匹のんびりと昼寝をし,カフェのテラスでコーヒー片手にマダム三人ぐらいがおしゃべりをしている。交通量が少なく,ここらへんは喧騒のカイロとは印象が異なる,落ち着いた住宅街のようなだった。

大使館前に到着すると今度は警備員から「今日は休みです」と言われたが,「I know, See you tomorrow!」と返事をし,その場を去った。その警備員の顔はぽかんとしていた。

大使館への道順も把握し,準備は整った。母親からの戸籍謄本の到着を信じ,朝イチで向かうためにも夜9時には眠りについた。帰国の目処も立ってきて,この頃には気持ちが落ち着いていて,すぐ眠りにつけた。

つづく


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