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エジプトでパスポートを紛失してから日本に帰るまでの話⑥

2024/1/4(木) カイロ
パスポート紛失から4日目 前半

戸籍謄本入手

午前3時,ふと目を覚ますと,母親からメールがあることに気づく。戸籍謄本であれと祈りながらメールを開くと,PDFファイル化された戸籍謄本が届いていた。

よかった!! 部屋はドミトリーで,他にも寝ている人もいたが,小さくガッツポーズをした。日本に帰れる目処が立ってきたぞ。

母親に感謝をし,大使館での手続きをスムーズにするためにも,戸籍謄本を大使館に送り,再び眠りについた。

大使館に一番乗り

朝6時に再び目を覚ました。大使館は9時から開館であるが,誰よりも一番乗りして,手続きを済ませるのが当日帰国への十分条件と思い,身支度を済ませ7時には宿を出発した。

昨日の練習の甲斐もあり,切符の購入や道順などは調べるまでもなくスムーズに向かうことができたため7時40分には大使館に到着した。もちろん,待っている人など誰もいない。

警備員に「ここで9時まで待ってもいいですか」とお願いすると,守衛の小屋の横にあるボロボロのクッションがひかれた一つの椅子を指差し,「そこに座って良いよ」と言う。

おそらく警備員さんが座る用の椅子だと思われるが,譲ってもらえたのだ。1時間以上も立ちっぱなしで待つのも大変なので,ありがたく座らせてもらうことにした。

守衛の小屋には,戦闘員らしき人が待機しており,ライフル銃が置かれている。距離にして1mもなく,間近で銃を見れたことに貴重な経験をしていると思った。

大使館前の景色

椅子に座って待っていると,日本人がたびたび現れ,大使館の中に入っていた。その大使館の人が,救世主のように見えて仕方なかった。

9時が近づいてくると,エジプト人や日本人など8人ほど集まってきたが,先頭は自分がキープしていた。エジプト人が体を入れて割り込んでこようとしてくるが,力づくでも譲らなかった。昨日大使館に来る練習までして,今日は1時間以上,待っているのだ。

想定外の連続

おかげで,一番乗りで大使館に入ることができた。しかし,想定外の出来事が起きる。

大使館の中に入るには,受付のエジプト人の警備員にパスポートを見せなければいけないのだ! そのパスポートを持っていないから,大使館に来ているのに! パスポートを紛失しているために来ていること,大使館の鈴木さんという方とメールでやりとりしているので連絡を取ってもらえないかと懇願する。

そのやりとりの間に,他の人が受付を済ませ順々と大使館の中に入っていく。今日帰るためにも急がないといけないのに,,,気持ちが焦る。

受付のエジプト人が電話で鈴木さんとつなげてもらえ,事情を説明すると,その2分後ぐらいに「高木さんですか?」と鈴木さんが現れた。

鈴木さんは20代中盤と思わしき,小柄でかわいらしい渋谷にいそうな日本人女性だった。想定外であった。というのは,メールでの「思料いたします」という言葉遣い,またエジプトという土地柄から40〜50代ぐらいの人が駐在していると勝手に思っていたのだ。

そのような想定だったので,メールで「どうか助けてください。このままエジプトでやっていけるか不安です」などと恥を偲んだメールを送っていた。

大人のくせに情けないと思われていただろう,恥ずかしさが込み上げた。そんなことを考えている自分を横目にどんどんと鈴木さんは大使館の中に入れるように手続きを進めてくれた。ものすごく頼れる女性であった。

便の変更をお願いします

大使館の中は,日本人窓口とそれ以外に分けられており,床がピカピカに磨きかけられ,壁には日本の役場にあるような官公庁のポスターが貼られている。

雑然としているエジプトの街並みを忘れさせる,日本の雰囲気をまとった空間であった。そんなことを思っていると,鈴木さんから紛失一般旅券等届出書,帰国のための渡航書の申請書を記入するよう促され,記載を進める。

申請書の記載が終わり,他の提出書類はすでに鈴木さんにメールで送っていることから申請はスムーズに運べたと思う。

ただ,鈴木さんから思ってもみなかった提案を受ける。
「帰国のための渡航書は,予定しているフライトのみに使えるので,確実に乗れる便に変更をお願いします。この後,渡航書を発給しますが,その後アッバセイヤ入管事務所でエジプトに入国したというスタンプを押してもらう必要があります。その手続きが本日中に終わるかわかりませんので,別日に予約を変更したほうがよいかと思います」

アッバセイヤ入管事務所はホームページだと13時までしかやっておらず,1/5(金)は休みになり,営業再開日は1/6(土)になる。

今日を逃した場合,また一から手続きを行わないといけないかもしれないと思い,しぶしぶ当日の帰国は諦め,フライトを1/6(土)の夜の便に変更した。

ついに入手!

その後,自分の名前がなかなか呼ばれず,1時間,2時間と時間が過ぎていった。隣に座っていたエジプト人も同じように待たされており,途中お互いに笑って,握手をかわすなど,謎の連帯感が生まれた。

結局,渡航書が発給されたのは13時ごろ。他のブログなどを読むかぎり,二日間かかっている人もいて,急ピッチで手続きを進めてくれたように思われる。

本当にありがたいかぎりであった。出来上がった渡航書を見ると,日本への帰国が本当に目前に迫っているのが実感でき,肌身離さず持ち歩こうと強く思った。

大使館の皆さんには,こんなマヌケな旅行者のために,年末年始からメールで相談にのってもらったり,当日は急ピッチで対応してもらうなど本当に助けられ,感謝でいっぱいであった。

時刻は13時を過ぎていたが,鈴木さんから「実際に行ってみたら営業していることがあるかもしれない」ということだったので,最後の手続き先であるアッバセイヤ入管事務所へと,タクシーで急ぎ向かった。

つづく

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