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エジプトでパスポートを紛失してから日本に帰るまでの話⑧最終話

2024/1/5(金) カイロ
渡航書入手から1日目


エジプトの雲ひとつない青空のように,自分の心も澄みきっていた。

エジプトで出会って心配してくれたたくさんの日本人旅行者,日本から励ましてくれた友達,そして両親に,無事に帰れることを報告すると,おめでとう!よかったね!といった祝福の連絡をいただいた。本当に皆さんには精神的に支えていただき,感謝の念が絶えない。

カイロ市内を散策し,お土産を買い,夜はエジプトで知り合った日本人の方とご飯を食べるなど充実した時間が送れた。パスポートのあることによる安心感ははかりしれない。

思い出のピラミッド

2024/1/6(土) カイロ→日本
渡航書入手から2日目(帰国日)

出国できるのか?

ついにエジプトも最終日となり,帰国のため,カイロ国際空港へと向かった。渡航書はパスポートとは違いペラペラで,保安検査場,イミグレーションを本当に通過できるか心配していた。案の定,不安は的中した。

まず保安検査場で渡航書を提出すると,強面の身長185cmはある大きなエジプト人から「where is your passport!」と言われる。

これが俺のパスポートなんだけど…と思いながら,「This is my passport!」とめげずに伝える。その担当者が上司らしき人に相談しにいき,OKと言って,何とか通せてもらえた。

次にイミグレーションである。
渡航書を提出すると,担当者が無言でどこかに消えていって,一人ぼっちにさせられた。たくさんの人から見える状況で「どうしたんだあのジャパニーズ?」という視線を感じる。

3分ぐらいすると担当者が戻ってきて,左を指差し,「あのオフィスに行ってください」とのこと。ここまで来て出国できないのか? と脳裏によぎる。

飛行機の搭乗時間も1時間を切っている。時間もない。

オフィスに行くと,スタッフらしきエジプト人男性が3人ほどパソコンの前に座り,次々に現れる搭乗者やスタッフにアラビア語で指示を出している。

その3人の中でも,上司らしきエジプト人に,渡航書を見せて,「どうすればいい?」と顔に焦りを浮かべながら質問する。

ただ,その上司は忙しいようで,電話に出たり別のスタッフに指示を出したりと,取り合ってもらえない。

搭乗時間まで時間はない。緊急事態であることを伝えるためにも,声量を上げて,もう一度「どうすればいい!」とその上司に聞く。

ようやく渡航書と出国カードを見てもらえ,出国カードにアラビア語で何やらサインをし,突き返された。

よかった,これで帰れる! 有頂天になりながらイミグレーションを後にしようとすると,出口にいるスタッフに止められた。どうして? 

もう一度オフィスに戻り,さっきの上司らしいエジプト人に「どうすればいい!?」と声をかけると,「イミグレーションゲート」と一言。

もう一度,イミグレーションの担当者に持っていけということか。最初の担当者のとこまで行くと,渡航書に出国のスタンプを押してくれた。

そして今度こそイミグレーションを通過することができた。これで本当に日本に帰れるんだと肩の荷が降りた瞬間だった。

そこからは,スムーズに搭乗ゲートまで進む事ができ,ついにエジプトを出国することができた。乗り継ぎ先のドーハ・ハマド国際空港も何事もなく通過でき,そして合計14時間のフライトを終え,日本のイミグレーションと税関検査場も通過することができ,自分のエジプト旅行は終了した。

振り返って

最終的にパスポートを紛失してから2日遅れで帰国することができた。

紛失した直後は,日本に帰れないかもしれないという絶望感から,食事も喉に通らなかった。そんな状況で支えになったのは,現地で知り合った日本人やエジプト人の皆さんである。

会ったばかりでほとんど他人にもかかわらず,真剣にパスポートを探してくれたり,困ったことがあれば連絡してくださいと,連絡先を教えてくれる人など,多くの人の優しさに触れた。自分も困った人がいたら積極的に助けたいと強く思った。

また,英語ができないと帰国までの手続きは,よりハードだったと思う。

3年前にネパールを旅行した際に一切英語ができなかったことの悔しさから,この3年間,英会話に通うなど勉強を続けてきた。

そのおかげもあって,現地の警察や入管事務所の手続きで,事情を説明したり,現地スタッフの指示を理解することができた。

もしわからなければ,Google翻訳を活用するなどの手段を取っていたと思うが,より時間はかかっていたと思う。

結局パスポートは戻ってこなかったが,何とか帰ることができたことで,大きな自信につながった。振り返ると,ある意味で人として成長させられる良い経験だったのではないかと,今は思える。

おわり

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