どんぐり
まだ地面と私がとても近かったころ、
どんぐりを拾うのに熱中していた。
まるっこいやつ
ふとっちょのやつ
スラリとしたやつ
うすい茶色
濃い茶色
帽子を外しては、ほかのやつにつけ替えてみたり、とりあえずかじってみたり、ぷくとかぽことか名前をつけて遊んだ。
見れば見るほどかわいらしく、
見れば見るほどありがたく、
見れば見るほど美味しそうだった。
きっと遠い日に、私はどんぐりを美味しく頂いていたのだろうと思った。
煮たり、スープにしたり、潰して餅のようにしていた。という感覚で。
そのうち、今回も食べたいという欲求がむくむくと湧いてきた。
というか、幼い私は当然どんぐりは食べ物だと思っていた。
両手と両方のポケットとおしりのポケットいっぱいにどんぐりを集めて持って帰った。
飲み会帰りにお寿司の折詰をぶら下げて帰るオヤジさんくらい上機嫌に。
え、、、、、どんぐりは、、、
アクが強いから食べられないよ、、、
母の困ったような笑った顔。
がっくりと肩を落としつつも、静かにどんぐりをひとつひとつ丁寧にチェックする。
針の穴のような小さな穴が開いていないか調べるためだ。
そうゆう穴が開いているやつは中に虫が入り込んでいるから。
よく覚えていないけど、やっぱり食べたような気がする。
アクが強いと知っていた母が何度もアクをとってくれたのだろうか。
秋になってどんぐりを目にする機会は驚くほど減ってしまったけれど、
どんぐりを見つけるたびに思い出す。
あの、少し青臭いような、
木の中の柔らかい部分のような、
香ばしいような、
淡白だけれどコクがあるような、
あの、どんぐりの味。
なんてね。
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