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2023年ジャンプ+読み切りベスト作品

僕はここ数年毎週少年ジャンプを「ジャンプ+」というアプリを使って定期購読しているのだけど、このアプリでは他に無料で読める読み切り作品が週に3〜5本くらいのペースで更新されていて、仕事の空き時間等によく読んでいた。

一昨年までは更新ペースに追いつけて無かったのだけど、2023年は掲載された全作品(約300作品)を読む事が出来たので特に好きな作品を何作か載せてみたいと思う。

読み切りなのでサクッと読めるし、アプリをダウンロードしなくてもリンクから読めると思うので、空き時間とかによろしければどうぞ。

7位「断ち切れ!オリベーダイス」松田タクミ

モンスターハンターの様な世界観でそこで危険モンスターを狩る事を生業にしてる男の話なのだけど、メインで描いているのが「30代になった男の元カノに対する小さな後悔」という、地味にリアルな彼女との思い出回想シーンが結構グッときた。おじさんになってしまった人間の1人での考え事描写もくだらなくて笑っちゃう。
そんな彼の後悔とモンスター狩りの話が繋がるラストのアクションシーンも凄く良かった。

6位「角刈りの兄鬼」インカ帝国

魔界の門が開き現実世界と繋がってしまう、という設定なのだけど、こちらも悪魔狩り的な要素はメインじゃなくあくまでお話し的には「大切な妹が彼氏を連れてくる」という小さなファミリーコメディドラマの要素が魅力的だった。
後半は何も持たない人が手に職を付けていく描写が丁寧で味わい深い。
そんな感じで前半の少し殺伐とした暴力要素が回収されずしみじみお話しが終わっていくのかと思いきや、忘れた頃に入るヒーロー的な展開が可笑しいけどしっかり熱い。

5位「なんにもない、なんでもない」藤野ハルマ

ジャンプ+の読み切り作品は派手な暴力描写や、直接的では無くても強烈なイジメ描写とかを入れてる作品が多いのだけど、今作はその真逆の辛さを描いている。
辛い事は何も無いけど、その何も無さで自分を保てなくなってしまった主人公と偶然出会った老人との何気ない対話シーンがとても魅力的だった。辛さにも色んな種類があって他者に理解されなくても、「あなたはそのままで良い」と読んでるこちらの背中を押してくれる様な優しい作品だった。

4位「生贄ちゃん生還せよ」喜多川ねりま

イケメンと軽いノリで付き合ってしまったギャルが、まんまと騙され呪われた村の生贄に選ばれてしまい、そこから生き延びる事が出来るのか?というシンプルな話なのだけど、コメディシーンの勢いが凄いので読み始めて一気に引き込まれた。主人公の軽さが本当清々しいし、それでいて彼女の心の弱さも繊細に描く手腕も見事。
そんな主人公と同じく生贄に選ばれた正反対の重い性格の女の子とバディ化していく流れも良くて、ラストの方のやったれ!感もグッときた。

3位「ぷれしゃす」えもふう

動物が人間化して目の前に現れる、という設定の読み切りは他でも結構あった印象なのだけど、この作品も他と同じく動物が人間になった事で価値観の違いによるデコボコなコメディ描写というのが面白いのだけど、後半に向けてどんどん主人公の取り返しのつかない後悔と繋がっていくのが読んでいて本当に苦い。

それでも登場人物の背中を押す様なラストのコマに映る影に泣いた。

2位「あの部屋の幽霊さんへ」三崎しずか

心霊モノの物語になるのだけど、主人公である幽霊が考える事は出来るけど立っているだけで何もする事が出来ないというのがなかなか面白い設定。
そんな彼女と彼女の事を見る事が出来る少女との数十年にも渡るドラマがメインになってくる。
コミュニケーションが取れないけど、それでも少女の人生に及ぼす小さな影響を上品に語り切っていて、なかなか魅力が伝えるのが難しいけど好きな作品だった。

1位「モンキートリック」桝本力丸/ロボット

大まかな物語は探偵モノのジャンルに入る作品とも言えるのだけど、面白いポイントが縄文時代という設定の所で、出てくる登場人物達がみんな殺人をロジックを持って捜査するという概念がないのが面白い。
探偵役の男は現代の人間と同じ様な頭の良さと倫理観を持っているのだけど、それをほぼ猿から毛の生えた価値観しかない村の人たちに理解できる様に解説していくのがコミカルだし、新しい探偵モノとして目の付け所が素晴らしい。

ただそういうコミカルさだけじゃなく中盤の妻を殺された主人公であるウジャクが誰も顧みない妻の気持ちと改めて向き合うという展開がとても感動的で思わず泣いてしまった。
何を持って猿じゃなく人間と呼べる存在なのか?という深い部分までこちらに考える事を促すような素晴らしい作品だったと思う。

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