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ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則、を読んで

ハリウッドを中心に映画シナリオについて教え、多くの受賞作の脚本家を育ててきたロバート・マッキー氏による、「物語を語る技術」についての指南書を読みました。その脚本術は、これからも折々に読み直して、学んでいこうと思います。「ストーリーとは何だろう?」という視点で、しっかり記憶にとどめておきたいことをメモしました。

ストーリーの本質は言葉ではない。… ストーリーの本質は、ある人がアクションを起こして、そのつぎに起こると思っていることと、実際に起こることのあいだに生じるギャップ、つまり予想と結果、可能性と必然性のあいだの隔たりだ。

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.217

読者が主人公の視点でストーリーを読み進めるとき、このギャップが関心をもって引き込まれるところとなり、また、そのストーリーからの学びになる。世の中で起きることの「因果関係」が、作者の伝えたい目的、テーマにそって表現されているのがストーリー。

… 物事がどのように起こるか、原因がどのように結果を生むか、この結果がどのように別の結果を引き起こすか … 鎖のように絡み合った因果関係を解明し、理解できた暁には人生に意味を与える。

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.68

分かりやすくすると、

登場人物はどんな人間で、何を求めているのか。それはなぜなのか。どうやってそれを手に入れようとしているのか。それを阻むものは何か。その結果、どうなるのか。

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.31

こうした問いを、ストーリーというカタチに紡いでいくことによって、その答えを探索していく、のが脚本家の創作的な仕事だとマッキー先生は説いています。

Finding the answers to these grand questions and shaping them into story is our overwhelming creative task.

STORY: Substance, Structure, Style, and the Principles of Screenwriting - Robert Mckee p.19

では「ストーリーとは何だろう?」と次を読むと、マッキー先生は、ストーリーというカタチ(form)にそって書かれているのがストーリー、と循環論的でもあり構成技術的でもある定義をされています。

… the universal form of story shapes a work into story, not portraiture or collage.

STORY: Substance, Structure, Style, and the Principles of Screenwriting - Robert Mckee p.20

言葉による表現をストーリーたらしめるカタチ、について教えていくのが本書である、と理解しました。

脚本術の本なので、脚本家の情熱や意識について書かれているところは少ないのですが、「観客の心を動かしたいという思いが原動力」(p17)であり、それがよい作品の成功要因であると強調しています。

ビジネスや商品開発でも基本となる「カスタマー・ファースト」の考え方がここにもあります。

ストーリー設計において、観客はほかのどの要素にも劣らない重みをもつ。観客がいなければ、創作そのものが意味を持たない。

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.18

これは個人的な本書からの理解になりまが、この「観客を動かす」ものの中核にあるのが、ストーリーの「命題」、だと思います。マッキー先生はこれを「Controlling Idea」という概念として説いています。

ひとつの単語ではなく … ストリーの意図を余すところなく伝える文 …
ストーリーの原点や中核概念を伝え、その役割を示すものだ。

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.142

文(sentence)には、主語があり、動詞があり、終止符があり、その一文のなかに相互関係や因果関係の意味があるものです。

ひとつの文で表現できるものであり、冒頭の状況から最後の状況へ、人生がどんな理由でどのように変化するかを表す。

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.143

「SAVE THE CATの法則」のブレイク・スナイダー先生の言葉だと、「WHAT IS IT?」、「一行で言うとどんな映画?」に近いのでしょうか。

マッキー先生は、「Controlling Idea」(ストーリーの命題)は、結末にもたらされる「価値」と、その根底にある「原因」を、一文で書く、ものと説きます。一文のなかに、「原因」から「価値」への因果関係があるのだと思います。例としては、

「主人公が犯人よりも聡明なので、正義が回復する」刑事コロンボ
「悪は人間の本質の一部なので、悪が勝利をおさめる」チャイナタウン

ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則 p.144, 152

ストーリーを書くにあたっては「the universal form of story」、普遍的なストーリーのカタチに沿って構成する、のがマッキー先生の脚本術ですが、意識の中では、この「Controlling Idea」(ストーリーの命題)が創作の指針になります。

ビジネスや商品開発のコンセプトでは、進む方向性を指し示し、ひとつひとつの行動判断の基準となる、「ミッション」、「パーパス」、あるいは「ノーススター(north star)」にあたるのではないでしょうか。

The Controlling Idea shapes the writer's strategic choices. It's yet another Creative Discipline to guide your aesthetic choices toward what is appropriate or inappropriate in your story, toward what is expressive of your Controlling Idea …

STORY: Substance, Structure, Style, and the Principles of Screenwriting - Robert Mckee p.114

問題意識・命題(Controlling Idea)と形式(the universal form of story)がストーリーを書くうえでの両輪、ということを肝に銘じて、ストーリーについて学んでいこうと思います。

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