詩「愛とカラス」「ひとしずく」
「愛とカラス」
すべての人の幸せのためになら
最も不幸で構わないと言い切った
真っ黒なカラスを
誰よりも愛している
不吉な醜い姿ゆえ
嫌われてひとりぼっちでも
志は変わらず
見つめ返す瞳は無比に優しかった
カラスの千年の孤独が
消え失せる日がくるように
翼のない私は地上から
彼のあとを追い続けている
「ひとしずく」
砂漠に咲く
一輪の小さな花が枯れないように
茫漠とした世界を飛び廻った
彼の亡骸に
涙をひとしずく
彼の見てきた世界が
どんなに孤独に満ちていても
彼自身さえ酷く孤独でも
心にいつだって
その花があったから飛び続けた
私の涙は彼に届かないけれど
彼の軌跡を追うことで知った愛の花は
胸で咲き誇り続けるだろう