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【活字のごはん】vol.03 朝の焼き立てパンと珈琲/太陽の塔

 こんにちは。菜のはな書房です。
 活字のごはん第3弾は、森見登美彦作「太陽の塔」より、「パン屋さんの焼き立てパンと挽き豆珈琲」です。

 この物語は、初めてできた彼女に振られた大学生の主人公が、翌年、「恋人たちのクリスマス」を阻止するべく「ええじゃないか騒動」を企てる、というお話です。この時点で何を言ってるのか全然わからないですね。

 ともあれ、まずは「朝の珈琲」をどうぞ☕️

 手紙を投函した翌日の午後二時である。
 私は長すぎる睡眠から眼を覚まし、煙草を一服吸ってから、朝食を調達するために近所のパン屋へ出かけようとした。
 そのパン屋は下宿から歩いて三分ほどの路地にあり、こちんまりとした可愛い店である。ここ数年、私はソーセージを挟んだ焼きたてのフランスパンと、クリームパン、そして珈琲という食卓がなければ何も手につかない。部屋を出る前から、ばりばりと音を立てそうなパンの香ばしい切いが鼻先をかすめた。パンの香りを夢見ながらドアを開けようとしたが、ノプを回しても、ドアはいっこうに開かない。身体をぶつけるようにして押すと、めりめりと嫌な音がする。
森見登美彦「太陽の塔」89P

 短いながらも、主人公がひそかに楽しみにしているパンと珈琲のひとときが目一杯伝わりますね。

 このあとの展開がどうなっているのか(そしてどうしてそんなことになったのか)、ぜひ本編を読んで確認してみてください!

 活字のごはん、次回もお楽しみに‼︎

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