学校に行きたくない!と思ったときに読む本
こんにちは。菜のはな書房です。
今月からシリーズで「学校に行きたくない!と思ったときに読む本」をお送りします。
第1回目に取り上げるのは、こちらの2冊
「西の魔女が死んだ」梨木香歩(新潮文庫)
「引金」朝井リョウ(集英社文庫『発注いただきました!』所収)
以前からこちらのnoteで取り上げていますが、改めて(この2作品の比較も交えながら)紹介していきます。
自分の足で立つということ
〜西の魔女が死んだ〜
あらすじ
中学2年生のまいは、学校へ行かないと決めた。「魔女」と呼ぶおばあちゃんと一緒に初夏の季節を過ごすことに。「魔女修行」を通じてまいが見つけた答えとは。自然風景や料理の描写も見どころ。
主人公のまいは、学校のクラスでの人間関係の悩みから学校へ行かないこと(不登校)を自主的に選びます。
この作品で描かれているのは「ホームスクール」と呼ばれる通学以外の方法で子どもの学び・生活指導を行う方法です。
不登校が社会問題化として顕在化し始めた90年代に出版された先駆けと言えるような作品です。
サンドイッチやジャムづくりのシーンがとてもおいしそうなのでそこばかり何度も読んでいました。
もちろん食べものだけでなく、おばあちゃんとまいのやり取りの中で、重要な会話がたくさんあります。
おばあちゃんはまいの不安などすべてお見通しのようです。
物語でまいはお父さんの転勤に伴い転校することができます。新しい環境に移って、「魔女修行」で得たものがまい自身の「自分の足で立つ」ことを支えてくれるのです。
「痛み」の所在〜引金〜
あらすじ
高校2年生のとき、突然いじめの被害に遭い不登校になった主人公。大学進学し「普通の若者」になった彼は、同じくいじめ被害に遭い今もなおひきこもり続けている友人を訪ねる。「変わること」を求めるのは正義なのか。
こちらは男性の作家による男子学生が主人公のお話。主人公は過去の辛い経験と訣別し、自由な生活を謳歌しています。しかし、自分のあとにいじめのターゲットにされてしまった倉本は、自室にひきこもる生活を続けています。
同じ辛い経験をした者同士のはずなのに、道が分かれてしまった。過去の「痛み」を捨てた主人公と、捨てることなく留まる倉本。何回読んでもどちらの側面も理解できるような表現になっています。
高校などはクラス替えで人間関係が一新されることもあるため、いじめそのものからは逃れられた主人公ですが、「痛み」との向き合い方という新たな局面にぶつからざるを得ません。過ぎ去ったことではあるものの、「同じ立場」の人との理解(または断絶)を経て、その人なりの受け止め方に変えていく…ということができればいいのですが。
余談ですが、「西の魔女〜」でのいじめは女子同士の交友関係(いつメンなどとも言います)の中での無視や悪口ですが、「引金」で起こるいじめは高校2年生で身体的な暴力や万引きの強要など、より直接的で「縦」社会的な構造をしているように思えます。小説の話ですが行動の出方にも男女差があるのかな、と思いました。
学校に行きたくない!と思ったときに読む本、「西の魔女が死んだ」と「引金」でした。
次回は「本当に好きなもの〜オーダーメイド殺人クラブ〜」の予定です。お楽しみに‼︎
追記 第2回はこちらからどうぞ🚪
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