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カップケーキを作ったって話

 突然だが、私は料理が好きだ。しかし、一回の調理にめちゃくちゃ時間を費やしてしまう。自分では普通に作業しているつもりなのに、気がつくと時計の長針が余裕で2周している。「小腹が空いたから何か適当に食べよう」だなんて軽い気持ちでキッチンに立ったら最後、一品完成した頃には小腹どころか本格的に腹が減りはじめており、一品どころじゃ足りなくなって、気がつけばまたキッチンに立ち……そうやって昼飯が夕飯になることは、恐ろしいことに日常茶飯事だ。
 なぜそんなことになるのか。その要因を自分なりに分析してみた。ざっくり挙げてしまうと、①計画性がない②無駄に凝りだすの2点だ。
 まず①。料理の基本中の基本がなっていない、という話だ。材料を事前に軽量しておかない。冷凍庫から出した肉や魚を解凍しておかない。野菜を洗っておかない。段取りをしておかないから、その都度あたふたしてしまう。そして②。手を加え出すと止まらなくなるというどうしようもない性質ゆえ、時間の浪費を止められない。

生姜焼き定食。きゅうりを花びら状にカットするという苦行を、なんと生姜焼きを焼き終わってからスタートさせた私。めでたく冷え冷えになった料理たちがこちら。
しかも、これ4人分やったんですよね。アホ
制作時間(?)15分の四葉のクローバー梅きゅうり。
こんなん形に拘んなきゃ3分で出来るやろ

 とまあ、ここまで私の料理生活を振り返ってきたわけなのだが。今回なんと私、バレンタインにカップケーキを焼いてしまった。普通の調理で馬鹿みたいに時間をかけるこの私が、先述した問題点を省みて、精一杯手際良くお菓子作りに勤しんだ。以下、カップケーキ大作戦の全貌とその結末を語ります。

そもそも何故カップケーキなのか

 あれはとある土曜日の夜のことだった。ゴミ部屋と化した自室を片付けていた私は、一枚のノートの切れ端を見つけた。


「喫煙カップケーキ」

 うーん、意味がわからない。字も汚い。多分これは中学の頃の落書きだ。あの頃はお菓子の落書きをするのがマイブームだった。それにしてもこのカップケーキ、タバコを吸っているぞ。どうしてこんなことに。あの頃の私は一体、何を考えていたんだろうか。
 この切れ端を見つけてしまった私は思い立ってしまった。そうだ、カップケーキ作ろう、と。

はじめての前準備編

 自己分析の結果、私には料理をする以前に「前準備をしておかない」という問題点があることがわかった。そこで、今回はキチっと材料を揃えるところから始めることにした。
 材料を揃えるには、まずどんなカップケーキを作るのか明確にしなければならない。私は、理想のカップケーキを書き起こすことにした。

おわかりいただけただろうか。こやつ、とんでもないものを作ろうとしている。そもそもカップケーキなんて、材料を混ぜて容器に流し込み、十数分焼けば完成する。ちょっとしたデコレーションを施せば、1時間もあれば出来上がりだ。
 そう、私が作ろうとしていたのはカップケーキなどではない。カップケーキを土台にした何かだったのだ。
 ひとまず材料を買い揃えた結果がこちら。

トッピングしかない

 おいおまえ、カップケーキ用の小麦粉だのはどうするんだ!バターもないぞ!ええいうるさい、そんなもん、家にあるホットケーキミックスとサラダ油でなんとかなんだろ!!(適当)
 こんな調子で、ひとまず前段階、材料を揃える、クリア。

恐怖のトッピング制作編

 私が作ろうとしていたトッピングは、メレンゲクッキー、ポップコーン、チョコレートパーツ、クッキー、マカロンの5種。焼き時間を考え、最初に作り始めたのはマカロンだ。そう、マカロンだ。
 マカロン……お菓子作り初心者が無闇に手を出すべきではないシロモノ。実は数年前に一度、私は手作りマカロンにチャレンジしていた。その写真がこちら。

わくわく……
わくわく……
わく……
わ……


き、汚ねえ!


 なんだこれ。マカロン?冗談だろ。……トッピングも、ヤケクソになって適当になってしまっている。「どうせ全部一人で食うんだよ!見栄えなんてもうどうでもいいだろ!」と言わんばかりの雑さだ。

 そう、マカロンは難しい。素人がイチから作るには、色々とコツがありすぎるお菓子なのだ。そんなの、どう足掻いても無理じゃないのか。ただでさえ乱雑で大雑把な行動に定評のある、この私が、マカロンだなんて……


作れちゃうかもしれないよ!?この……マカロンミックスならね!!
 
絞り袋を買いに訪れた100均、seriaにて、私は君を見つけてしまった。アーモンドプードルや粉糖など、マカロンの生地の材料がいっしょくたになっている優れ物である。こいつとの出会いは、もはや運命以外の何者でもなかった。さあ始めよう、無敵のマカロン作りを……!

 結果からお話しすると、失敗だ。中が空洞になり、マカロン特有のカリモチッ!とした食感が味わえなかった。原因はよくわからない。分量外で抹茶パウダーを入れたからかもしれない。でもまあ、見た目は悪くないのでひとまず完成ということにした。デコレーションは見た目が命。見た目がよけりゃ食感なんてささいなものだろう!(大雑把、発動!)ここまでの主要時間、1時間。焼き時間を考えると、なかなか悪くないタイムだ。

 次にとりかかろうとしたのはメレンゲクッキー。しかし、マカロンを作る際に一度メレンゲを泡立てた私の腕は、既に悲鳴を上げていた。歳をとったものだ……(※ただの運動不足である)。もう泡立てるのやだ。めんどくさい。そこで私はひとつの結論に達した。メレンゲクッキー、諦めよう、と。それでいいのか、若者よ。

 メレンゲクッキーを諦めた私が取り掛かったのはクッキー。きりんさんの形をしたイケイケなクッキーである。しかし、生地をきりん型に成形するにはどうすればいいのか。きりんのクッキー型なんて持っていない。そこで、私は昔作ったクッキーの写真をみつけたのだった。

 これらは私が手ごねて整形したクッキーである。手ごねなら、型がなくてもきりんさん型のクッキーが焼けてしまうかもしれない……!しかし、それは断念した。きりんさん十数匹を手ごねで整形するのは、正直ダルかったからだ。無理。できない。トッピング用だから4cmくらいの大きさに収めたいのに、ふっとい指先ではそんな繊細な作業はできない。生地は粘土ではないので、パサついてうまく整形できやしない。
 ならばどうするのだ。型もない、手ごねもダルい。そこで私は思い至った。アレがあるじゃないかと。アイスボックスクッキーだ。

ニャンコ先生のクッキー(2021年)

 アイスボックスクッキーにしてしまえば、型抜きをせずとも済む。切っても切っても同じ形。そう、きりん量産システムの完成だ!!
 クッキーを焼いている間、ポップコーンをバターで炒めてポンポンはじけさせ、チョコペンでりんごの形のパーツを作った。
 そして遂に、私はきりんさんクッキーを完成させた。主要時間、約1時間。ここまででトータル3時間。結構な時間がかかってしまった。
 さて、ここで全てのトッピングが出揃った。ご覧いただこう。

ポップコーンくんは不在。撮り忘れました

 きりんクッキーは少々焦げているものもあるが、まあ悪くない見た目なのではないかと思う。とりあえず、トッピングはこれで完成だ。
 ちなみに、このあと30分くらいでカップケーキを焼いた。チョコチップとミルクココアをぶち込んだ生地を流し込んだあと、プレーン生地を流し込んで二重構造にしてみた。断面が非常にかわいかったのだが、私はアホなので写真を撮り忘れた。カップケーキの写真も残念ながらない。だが思い出して欲しい。私が作ろうとしているのはカップケーキを土台にした何かである。焼き上がったカップケーキの写真が無いのは至極当たり前のことなのだ。言い訳だ。

カップケーキ飾り付け編

 さて、ここからが本番だ。準備はいいか、野郎ども!!
 まずは湯煎したブラックチョコレートをスプーンでカップケーキの表面に垂らした。フランボワーズクランチとキャラメルクランチを少々トッピングして固めたのち、上に絞るためのガナッシュを作ろうとして、私はホワイトチョコを湯煎した。ここで問題が発生。なんと私は、湯煎したチョコレートにお湯を注いでしまった。
 
何が起きたのか、自分でもわからなかった。湯煎のお湯を張り替えようとして、私はポットにお湯を汲んだ。そして湯煎したチョコレートにコポコポとそれを注ぎ……出来上がったのは、パサパサとしたホワイトチョコの味がする何か。クソマズだった。私は自分が恐ろしかった。自分の身体が、自分の意思で制御しきれていない事実が恐ろしかった。
 しばらく呆然としたのち、私はガナッシュを作り直すことにした。しかし、チョコレートはもうない。全部パサパサになってしまった。私は化粧もせずにスーパーに買いに走った。しかし、ホワイトチョコは全部売り切れていた。さすがバレンタイン。この時期、世の乙女たちは皆、想い人に手作りチョコレートを手渡すのだ。そして増えるリア充……。買い占められたチョコたちの分だけ、ウハウハなカップルが爆誕しているのだ。なんて世界。滅べ。嘘です。仕方ないので、明治のブラックチョコを購入することにした。
 無事作り直したガナッシュを絞り袋に入れて絞り出し、そこにきりんさんクッキーを乗せた。他に色々手を加える事3時間……。

 ついに、完成した。総制作時間7時間、理想のカップケーキは、ここに爆誕した。

今回、カップケーキを作ってみて出た結論。

 料理やめろ。
 
マジで。時間かけすぎ。凝り出すのをやめろ。疲れた。あと、アホだから絶対なんかやらかす。この前だって、じゃがいも揚げようとして何故か包丁を油に入れてしまった。もっと考えて行動しよう。

 でも、あげた皆が喜んでくれたのを見て、また思ってしまったわけだ。

 料理、楽しいなあ。ってね。

 

 そして明日もまた、私はキッチンに立ってしまうのであった。





 以上。解散!

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