クレジットカードのタッチ決済を利用してみた

交通機関では交通系電子マネーがデファクトスタンダートかと思いきや、高額なシステム導入コストを嫌う交通機関もあるようで、空港バスのように遠方から利用客の多い乗り物で交通系電子マネーを使えないのは不便である。

そんな中、最近はより安価かつ外国人でも利用しやすいクレジットカードのタッチ決済が台頭している。このたび初めてクレジットカードのタッチ決済を試すことになった。発車間際のバスに乗ったため、券売機で乗車券を購入する時間がなかったためである。

あいにくタッチ決済対応のプラスチックカードはまだ持っていないが、Apple Pay上のクレジットカードはタッチ決済対応である。あまり使い道があるとは思っていなかったが、念のためApple Payに登録しておいたのが幸いした。

Apple Payの仕様上、エクスプレスカードに登録してあるカード以外を使用する際にはWalletを開いて指紋認証する必要があるが、交通系電子マネーに無い手間はそれだけである。前払い方式または後払い方式の均一運賃なら1回タッチするだけなので、Walletを開いて指紋認証をするのも1回きり。交通系電子マネーとほぼ同じ使い勝手である。空港バスは均一運賃であるか、あるいは乗車時に行先を告げて支払うかのどちらかで、支払いタイミングは1回だけなので、そういう路線であればタッチ決済は便利だと思う。

一方、距離によって運賃が異なる場合には、乗車時と降車時の両方でタッチが必要なので、その都度Walletを開いて指紋認証するのは面倒そうである。プラスチックカードならタッチするだけなので手間が少ないが、今度は財布からプラスチックカードを出し入れするという手間が生じる。近距離の路線バスで使うには時期尚早に感じた。とはいえ、地元の人がメインで使うなら、Wallet上でエクスプレスカードとして登録することが可能なので、そうなれば交通系電子マネーと同じ使い勝手になる。

クレジットカードのタッチ決済が交通系電子マネーに及ばないのは処理速度である。交通系電子マネーなら一瞬だが、クレジットカードのタッチ決済だとコンマ何秒かかかる。というか、FeliCaだけ圧倒的に処理速度が速い。だからこそシステム導入費用が高いともいえる。さほど混雑しない交通機関ならFeliCaでなくても間に合うし、実際、欧州で主流のMIFAREはFeliCaほど処理が高速ではないが機能している。JR東日本も新幹線ではそこまで高速の処理が不要と判断したのか、FeliCa上に乗車券情報を乗せるモバイルSuica特急券をやめて、ICカードをサーバ上の情報の認証に用いる新幹線eチケットに移行した。

そうしているうちに、熊本の交通機関も一旦導入した交通系電子マネーの更新をしないことにしてクレジットカードのタッチ決済を導入すると発表した。システム導入費用が比較的安いし、エンドユーザーにとっての使い勝手もほぼ同じだし、電子マネーと違ってチャージも不要である。さらに日本の交通系電子マネーを持っていない外国人でも利用できる。当然のことながら、その地域独自の交通系電子マネーを持っていない日本人でも利用できる。普段利用しない路線のためにチャージしても使い切れない。

しかし、定期券はどうするのだろう。クレジットカードのタッチ決済はあくまでも運賃を引き落とすためのもので、それ自体が乗車券としての情報を持っているわけではない。調べてみたら、熊本市交通局では、専用アプリに定期券情報を入れて降車時に乗務員に見せるモバイル定期券が利用可能なようである。これならクレジットカードのタッチ決済と両立しうる。乗務員の手間は増えるが、かざすよりも見せる方が動作は簡単である。

もしかしたらEX-ICや新幹線eチケットのようにサーバ上に情報を乗せてICカードを認証に用いる方式も定期券に導入できるかもしれないが、外国製の安いAndroidスマホはFeliCaを積んでいないので、地方のバスや路面電車の定期券なら、画面で表示するというローテクな方式の方が扱いやすいのかもしれない。

もう一つ気になるのは、本人名義のクレジットカードを持たない人をどうするかである。クレジットカードを持つ人にとってはどうということでもないが、中学生や高校生はどうするのだろう。本人名義の銀行口座を持っていれば高校生からデビットカードを持てるが、中学生や小学生はどうするのだろう。交通系電子マネーなら誰でも持てるし、必要なら親にチャージしてもらうこともできる。交通系電子マネーが使えなくなるとクレジットカードまたはデビットカードから現金しか選択肢がない。小中学生ならさほど遠くに行かないだろうから定期券以外電子マネーは現金で払えばよいという割り切りが必要になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?