新鳥栖から佐世保までの区間をでかいミニ新幹線にすることは可能か

西九州新幹線の新鳥栖と武雄温泉との間は、佐賀県がもともと在来線で間に合っており、フリーゲージトレインとして建設する前提だったことを理由に、フル規格新幹線の反対しているので着工の目処がついていない。一応佐賀県は佐賀駅と佐賀空港の中間の高速道路のインターチェンジ付近を通るルートを求めており、一方JR九州は従来通りJR佐賀駅を通るルートを主張しているので、話がまとまっていない。

それならば、新鳥栖から武雄温泉まで在来線を活用するのはどうだろう。在来線のままでよいという佐賀県の意向に沿っているし、それでいて武雄温泉駅での乗り換えが不要になり、新鳥栖から博多まで新幹線の線路を走れるようになるので、博多長崎間の所要時間が1時間40分から1時間20分に短縮される。新鳥栖から武雄温泉までフル規格新幹線にしてもさらに15分ほど短縮されるに過ぎない。幸い、新鳥栖から武雄温泉まではトンネルが一つもない。しかも江北までは複線だし、武雄温泉に近い大町駅と高橋駅の間も複線なので、一方の線路を標準軌に改軌して、かつフル規格新幹線の車体が通れるようにすれば、博多駅から長崎駅までフル規格新幹線の車両が直通でき、乗り換えを解消できる。同時に鳥栖駅から博多駅まで特急列車が走らなくなるのでその分鹿児島本線の普通列車の本数を増やすことができる。

フル規格車体の車両が通行するとしても、信号システム上はあくまでも在来線だし、法令に定める新幹線の定義を満たしていなければ新幹線ではない。単に在来線の信号システムに対応した新幹線車両が在来線に乗り入れるだけである。在来線サイズの車体で新幹線と在来線の両方を走れるミニ新幹線車両は山形新幹線や秋田新幹線で実績がある。しかしトンネルがなくてフル規格車体のまま在来線に乗り入れることができるなら、敢えて在来線サイズのミニ新幹線にするまでもなく、フル規格新幹線サイズのでかいミニ新幹線にした方が便利である(山形新幹線秋田新幹線ともに山越え区間にトンネルが多数あるので、フル規格新幹線サイズの車体が入れるようにしようとするとフル規格の新線を作るのと同じくらいの費用がかかってしまう)。整備新幹線は新幹線の部分集合なので新幹線でなければ整備新幹線ではない。よって沿線自治体が費用の一部を負担するスキームとは関係ないので、JR九州単独の事業になるが、佐賀県に費用負担が発生せず、便利になるだけなら佐賀県が反対する理由もあるまい。

唯一気がかりなのは2面5線で高架化されている佐賀駅である。上り線側にはフル規格車両が通れるだけのスペースがあるように見えない。しかし下り線側には副本線の外側に側線があるし、鳥栖寄りにはかつて国鉄佐賀線が使っていた切り欠きホームの跡があるなど、比較的スペースに余裕がある。そこで上り線側を狭軌、下り線側を標準軌フル規格サイズとするなら、双方単線でも列車交換できる駅になりそうである。

貨物列車は佐賀駅の隣の鍋島駅までしか乗り入れてこないし、久保田駅から先は唐津線の車両も走らない。諫早から江北までの線路は狭軌のまま残っているが、それでも江北駅よりも西はすべて標準軌でもよいかもしれない。それなら単線区間であっても三線軌条にするまでもなく標準軌だけにできるので線路の保守が容易になる。江北駅の線路は現在の列車運行体系のもとではもっとシンプルにできるので、不要な線路をはがせばフル規格新幹線サイズの車両を通せるスペースを捻出できそうである。江北以西を標準軌のみにする場合、普通列車用の車両にも標準軌用の台車を履かせる必要があるが、これは奥羽本線の米沢山形間や田沢湖線で既に実績がある。

新鳥栖から武雄温泉までフル規格新幹線の車両が通れるようになれば、そこから先の佐世保までフル規格新幹線の車両が通れるようにしなければもったいない。そうすればかもめだけでなくみどりもフル規格新幹線車体のまま佐世保まで直通できる。しかし、武雄温泉から佐世保までは新鳥栖から江北までの佐賀平野と異なり丘陵地帯なので線形が良くない。比較的短いトンネルが4箇所あり、橋梁もあるので、トンネル拡張が伴う分だけ新鳥栖武雄温泉間よりも建設費がかかりそうである。ミニ新幹線サイズならトンネル拡張が不要だし、長崎方面ほど乗客が多いわけでもないので、費用対効果次第では博多佐世保間のみをミニ新幹線で走らせるのもありかもしれない。山陽こだまは乗客が少ないので、ミニ新幹線であっても、こだまとしてなら山陽新幹線に乗り入れられるかもしれない。

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