退役が近づいてきたDHC-8-Q400に乗ってみた

ANAウイングスのDHC-8-Q400はかつてはジェット機並のスピードでジェット機並に静かなプロペラ機として一世を風靡したが、機齢が20年を迎え、2026年以降順次退役することになっている。もともとは三菱スペースジェットで置き換えるつもりだったが、スペースジェットが頓挫したので後継機は今のところ未定である。日本のコミューター航空がこぞってATR42-600を導入しているし、トキエアはATR72を購入したので、70人クラスならATR72がATR42と互換性があり各社で融通できそうに思えるが、今のところ公式には何も発表されていない。いずれにせよ退役が見えている以上、乗るなら最後のチャンスである。

DHC-8-400の貨物室は機体後方にあるので、旅客は前方の扉から乗降する。ボーディングブリッジがあればそれを使うが、ドアの高さが低いのでボーディングブリッジとドアの間に数段の階段を挿入する。

福岡空港のように沖止めの場合には前方扉に内蔵された階段と、地面までの数段の小さい移動式階段を使って乗降する。ボーディングブリッジもタラップも使わなければその分早く降機できる。

荷物の積み下ろしの際に、福岡空港では737で使っているようなベルトコンベアを使っている。機体後部の胴体のせり上がった所に貨物室の扉があるので、ベルトコンベアなしだと厳しいのだろう。福岡空港のような大空港ではコンテナを積んだトレーラーを牽引する方式なので、それに合わせるためにベルトコンベアを使用しているが、小さい空港では空港用の背の低い屋根付きトラックを使って直接出し入れしている。

室内空間はATRと同じくらい。ANAウイングスのQ400には電源はないが、WiFiはあった。もっとも、離陸後にベルトサインが消灯してから5分後に最終着陸態勢に入るような短距離路線だとWiFiを使う時間はなく、着陸してから携帯電話の機内モードをオフにする方が早そうである。WiFiといってもインターネットには接続できず、フライトマップも表示されず、機内の動画とオーディオのみである。短距離路線ならそれでも不自由ないが、ジェット機が就航するような距離だと物足りない。

Q400はパワーに余裕があり、同じサイズのATR72の倍のパワーがある。そのため離陸時の加速は767並に鋭く、767のように一気に上昇する。Q400はノイズキャンセリング機能で機内を静かにしているとされているが、エンジンのパワーが大きい分だけ元のエンジン音が大きいことからATRよりもうるさく感じられた。Q400はリージョナルジェット並の速度が出るのでジェット機を使用している路線でも飛べるのが特長だが、同じような使い方をするならエンブラエルE170の方が室内が広いしQ400よりも静かなので、乗客として乗るならE170の方が快適だろう。ともに離陸に必要な滑走路長は1500m。パワーに余裕があるのでリバースも強く、着陸するとかなり強く減速する。プロペラの翼面の面積はATRよりもかなり大きい。羽の回転数を上げずに推力を増やすだけだろうか。きっとその分パワーがいるのだろう。

一般に高翼機は主翼が客室よりも上にあるので眺めがよいが、Q400のエンジンが大きく、しかもエンジンの下に主脚を折り畳むスペースがあるので、中央部の席からの眺めは良くない。他の飛行機は胴体の下に主脚を格納する方式だが、どうしてQ400はエンジン下に格納するのだろう。一つには胴体の位置を極力低くしたいということがあるだろうが、もしかしたら着陸時に機体が大きく揺れた際にプロペラの先端や主翼の先端が地面に接触しないようにするためだろうか。



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