仙台から苫小牧まで太平洋フェリーに乗ってみた

北海道まで車で行くためには、どこかでフェリーを利用する必要がある。関東からは以下の選択肢がある。

  1. 商船三井さんふらわあの大洗苫小牧航路

  2. 太平洋フェリーの仙台苫小牧航路

  3. 新日本海フェリーの新潟小樽航路

  4. シルバーフェリーの八戸苫小牧航路

  5. 津軽海峡フェリーの青森室蘭航路

  6. 津軽海峡フェリーの青森函館航路

  7. 青函フェリーの青森函館航路

  8. 津軽海峡フェリーの大間函館航路

一般的な傾向として、短距離路線ほど距離の割に割高。短距離路線ほど船が小さく、小さい船ほど車1台当たりの運航コストが高いため。また、高速代が高いので、長距離路線ほど相対的に割安になる。船中泊するなら航海時間がある程度必要だが、乗船時間があまり長いと良い部屋でないとつらいので却って高くつく。

八戸苫小牧航路は航海時間が中途半端で船中泊できないしかといって昼間に乗船すると日中まる1日潰れる。関東からなら大洗苫小牧航路が定番だろうが、夕方便は苫小牧到着が14時頃と、その日は宿まで移動したら終わってしまう。深夜便ではさらに苫小牧到着が21時頃で、苫小牧でもう1泊する必要がある。また、個室を1人で利用すると貸切料金がかかる。

新日本海フェリーの新潟小樽航路は新潟発小樽着が早すぎて、関東からは利用できない。逆方向の小樽発新潟行のみ利用可。新日本海フェリーは繁忙期を外すと2人個室を貸切料金なしで利用できるが、繁忙期には貸切料金があかかる。

太平洋フェリーは19時頃出発して10時頃到着する使いやすいスケジュール。さらに、きたかみの1等クロスツインは1人で利用しても貸切料金がかからない(いしかり・きその個室は繁忙期のみ貸切料金がかかる)。いしかり・きその1等洋室はインサイドだが、きたかみの1等クロスツインはオーシャンビューである。その代わり1等インサイドの方が少し安いので、貸切料金がかからない時期なら1等インサイドの方が安い。しかし繁忙期を外せば新日本海フェリーのステートAツインの方がさらに安いし、しかもオーシャンビューである。

以上を勘案して仙台から苫小牧まで太平洋フェリーのきたかみを利用することにした。太平洋フェリーは、いしかり・きそが名古屋ー仙台ー苫小牧間を合わせて隔日で運航しており、きたかみが仙台苫小牧間を隔日で運航している。仙台苫小牧間ではきたかみといしかりまたはきそが交互に運航している。

インターネット予約可能で、インターネット予約で10%引きになる。予約時に乗船名簿の登録をしておくと、乗船手続時に乗船名簿への記入が不要。ただし、乗船名簿登録していても乗船手続は必要。仙台港では出発の90分前まで、苫小牧港では出発の120分前までに乗船手続が必要。苫小牧港での乗船手続締め切りが早いのは、名古屋行の車と仙台行の車とを分けて車両を誘導する必要があるため。とはいえ、仙台までしか行かないきたかみなら90分前まででも良さそうに思えるが、便によって搭乗手続の締め切りが異なると混乱するので統一しているのだろうか。名古屋発も同様のはずだが、もともと名古屋仙台間の利用台数が少ないので、90分前まででも間に合うのかもしれない。乗船手続時に車検証の提示が必要なのは他のフェリーと同様。

仙台港のフェリーターミナルは仙台東部道路の仙台港インターまたは仙台港北インターが最寄り。関東から行く場合は東北道経由と常磐道経由とがあるが、広野と山元の間の対面通行区間を考慮しても、距離の短い常磐道経由の方が早い。ただし常磐道のいわき以北は東北道ほどSA・PAが充実していないので注意が必要である。

仙台発は19時40分発なので、18時10分までに乗船手続を済ませればよい。東京から仙台まで常磐道経由で5時間くらいなので昼に出れば間に合うが、事故渋滞等で大幅に遅れて間に合わないのでは困るので、安全のため午前10時頃に出発して仙台港付近で時間を潰すのがよいだろう。フェリーターミナルの近くに三井アウトレットパークがある。

車両航送かつ個室利用の場合には、事前に食べ物を買っておいて船に持ち込むことができる。部屋に冷蔵庫と電気ケトルがある。車両甲板から上がる際に1泊分の荷物を部屋に持ち込むことになる。荷物の持ち運びは手間なので、船内で使わないものは車に置いていった方がよい。

車両は船の4デッキから入るが、4デッキとその上の5デッキは大型車向けのスペースなので、乗用車はその下の3デッキ、2デッキ、1デッキに押し込められる。これらのデッキはスペースが狭く天井も低いので、小回りの利く乗用車向けのスペースになっている。乗船時は3デッキ、2デッキ、1デッキの順に埋めていくので、繁忙期かつ乗船の順番が遅い場合には一番下の1デッキになる。下船時は上のデッキからなので1デッキになると下船まで時間がかかる。
車両甲板の各デッキにはエレベーターがあり、一旦6デッキまで上がる。7デッキの部屋に行くためには6デッキで乗り換える。

部屋は1等クロスツインにした。当初は簡易個室のエコノミーシングルにしようと思っていたのだが、運賃を見るとさほど差が大きくないことがわかった。それならば我慢のいらない部屋の方がよい。

1等クロスツインは窓に面した寝台と、その上に直交する寝台とがある。普通に考えれば窓に面した下の寝台の方が快適そうだが、フェリーというのはピッチング(上下方向の揺れ)が大きく、頭が下がる向きで寝ていると意外と快適でない。1等クロスツインは前方にあるので、特に揺れやすい。また窓の位置が意外と高く、下の寝台からだと窓からの景色が見えにくい。寝台以外ではシャワーブース付のバスルームや、テレビや冷蔵庫や電気ケトルやお茶やタオルがある。テレビを見るのにイヤホンが必要ないのは楽である。テレビには船の現在位置等の情報を映すチャンネルがある。船に備え付けのタオルを使えるのは便利で、開放寝台だと使い終わったタオルを干す場所がない。また、いまどきどのホテルにもタオルが備え付けられているのにフェリーに乗るときだけタオルを持ち込むのは面倒である。ものすごく奥行きの狭い机があり、椅子もある。椅子の場所がわかりにくいが、上段寝台への階段の下にある。

レストランは夕食朝食ともにブッフェスタイルで、夕食2100円朝食1100円と結構なお値段。太平洋フェリーのレストランは評判がよいのだが、それでもブッフェでは落ち着かないし、夕食で2100円分も食べるつもりはないので、乗船前に食べ物を買って持ち込んだ。個室なので冷蔵庫と電気ケトルがある。電子レンジは給湯室にある。

きたかみは主に仙台苫小牧間専用で乗船時間が比較的短いこと、および雑魚寝部屋を無くして開放寝台と個室のみにしたことにより、パブリックスペースはいしかり・きそに比べると控えめである。開放寝台に乗ると起きている間の居場所に困りそうである。しかし、個室で過ごすなら問題ない。

仙台港を出港する際には船首が後ろ向きなのでタグボートに牽引してもらいながら向きを変える。港を出るあたりからタグボートの助けを借りずに単独で航行するようになり、徐々に速度を上げていく。巡航時の速度はだいたい20ノットから22ノットくらい。牡鹿半島を回り込んで三陸沖を夜通し航行する。朝はむつ半島の沖を航行している。尻屋崎を過ぎたあたりから陸地から遠ざかって携帯電話の電波が入らなくなる。室蘭の地球岬が見えてくる頃から北海道が近づいてきて、徐々に携帯電話の電波も入るようになる。苫小牧港に近づくと徐々に速度を落としていく。苫小牧入港時には回頭するので接岸まで時間がかかる。

下船の案内が来たらエレベーターで車両甲板に下りる。エレベーターは混雑するので、4デッキや5デッキに下りるトラックドライバーは階段を使う傾向がある。彼らは慣れていて身軽なので階段で下りることがさほど負担にならない。車両甲板に降りたら荷物を車に積んで出る準備をする。入港時の様子はまったく見えないが、エンジンの音やウインチの音でなんとなく状況が想像できる。下のデッキからだと下船の順番が回ってくるまで時間がかかるが、それでも係員から合図があったらスロープを上がって下船する。

苫小牧港到着は11時だが、下船まで時間がかかるので、下船したら昼食時である。飲食店は国道沿いに多数ある。

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