西九州新幹線裏ルートを妄想する

西九州新幹線の武雄温泉と新鳥栖の間の建設をめぐって膠着している。この区間は佐賀県内を通るが、佐賀から福岡までなら在来線でも十分なので佐賀県が建設費用の負担を渋っているからである。この区間を建設することによる受益者は長崎県なのだから長崎県が負担すべきだという論法である。佐賀県も長崎県ももともとは同じ肥前国であり、佐賀県が独立して存在するのは単なる明治維新の論功行賞なのだから、長崎県が佐賀県を吸収合併すれば負担する主体が長崎県に一本化されて解決しそうに見えるものの、現時点において長崎県が佐賀県を吸収合併するという選択肢はまだ現実的ではない。どのみち武雄温泉から新鳥栖までは40kmくらいしかないので佐賀経由のルートの建設を長崎県が負担すれば解決するものの(長崎自動車道と同様に佐賀平野の北の丘陵地を通せば市街地を迂回できるし佐賀駅の建設費用がかからないので建設費用を低減できる)、そうならないから膠着している。

となれば佐賀県にメリットのあるルートを追求すべきではないか。たしかに佐賀経由のルートなら在来線でも便利だし高速道路も通っている。しかし同じ佐賀県でも唐津や伊万里はそこまで便利ではない。JR筑肥線は唐津までは通勤型車両の走るローカル線で時間がかかるし、唐津から先の伊万里までは非電化で本数も少ない。道路についても前原から先は国道202号のバイパスがあるくらいである。この地域に新幹線を通すなら佐賀県にとってもメリットがありそうである。

ただ、このルートが難しいのは、既存の線路や駅に接続させようとすると遠回りになることである。まず、新鳥栖から分岐させることはできないので、博多南駅付近から新たに分岐させる必要がある。そこから唐津方面に向かうとなると山間部に長大トンネルを掘る必要があるので、用地買収は容易である反面、直工費が高い。唐津の市街地を通るとその先に向かうのに支障するので今宿道路と同様に市街地を通らないルートを取らざるを得ず、唐津の市街地の南に新駅を建設すると唐津市内へのアクセスはあまり良くない。伊万里を経由するにしても、すでに作ってしまった武雄温泉駅までの線路とつなげようとすると、伊万里の市街地の東側を通って、一旦東に戻る形で武雄温泉駅へ線路を伸ばす必要がある。どうせ遠回りするくらいならいっそのこと佐世保を経由させても長崎までの距離は変わらないしむしろ便利になるのだが、そうすると新大村駅と武雄温泉駅までのルートが無駄になってしまう。伊万里から新大村までまっすぐ線路を通してしまえば遠回りにならないが、これも新大村駅と武雄温泉駅の間に建設した線路が無駄になってしまう。伊万里を経由せずに唐津から直接武雄温泉駅に向かうルートもありうるが、佐賀県は伊万里経由のルートを望むだろう。唐津から伊万里を経由して佐世保に至る支線も建設できれば長崎県にとっても佐賀県にとってもメリットがあるが、当然のことながらその分建設費用が余計にかかる。

しかし多少遠回りになっても新幹線のスピードであれば所要時間への影響は軽微だし、在来線と新幹線とを乗り継ぐよりも速くて便利である。佐賀方面へは引き続き在来線特急を走らせればよい。長崎新幹線が佐世保を経由しなければどのみち佐世保への在来線特急を残す必要があるし、佐賀経由のルートの距離が短いので在来線経由であってもそんなに所要時間が長くなるわけではない。それなら乗り換えなしで直通できる方が便利である。

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