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映画「海辺のエトランゼ」 感想

映画「海辺のエトランゼ」の感想を垂れ流しています。
原作の大ファンなので映画は十数回以上は観ました。
観る度にエトランゼへの感情が噴き出すので文章にまとめました。
大いにネタバレありの拙文なので映画をこれから観る方には本感想を読まれる事はオススメ出来ません。
かなり長いですが良ければ読んでもらえたら嬉しいです。


原作、ドラマCDとも何度も読んで聴いた作品で映画化は物凄く楽しみにしていました。
先行上映含め何度も、それこそ15回以上鑑賞に行きました。
上映時間60分と言う少し短い時間ですがその中で可能な限りエトランゼの世界を表現されていた様に思います。
そこには大橋監督始め、制作に携われた方全ての惜しみない努力や作品に対する果てしない愛を感じました。
それ故に余計にこの映画がとても良いものだと感じています。
観る側も作る側も作品を愛しているのが顕著なので当然かもしれません。
紀伊カンナ先生も映画の為に2度の舞台挨拶に登壇される程で僕も2回目は東京まで観に行きました。
実央と駿を演じられている松岡さんと村田さんもドラマCDのキャストトークで常にエトランゼの映画化を熱望されていました。
様々な方の想いや願いが具現化された映画で、この作品を映像で観れる事に感謝しています。
そして肝心の映画の感想ですが先ず圧倒的な色彩美と映像美に心奪われました。
物語の舞台が沖縄の離島なのですが映像を観ているとまるで自分がその場に居る様な臨場感でした。
それくらい引き込まれそうな美しさでした。
最も目を惹かれたのは色鮮やかに描かれ咲き乱れる花々です。
ブーゲンビリアやニトベカズラなどが出てくるのですがその花言葉が本当に深いです。
「情熱」「あなたは魅力に満ちている」「あなたしか見えない」「愛の鎖」などです。
これは原作を知っている方、映画を観た方なら分かりますが物凄く実央と駿に当てはまる言葉です。
2人の背景に咲き乱れる花とその花言葉がとても狂おしく切なくなります。
そして作中至る所で出てくる「料理」にも並々ならぬ力の入れようです。料理作監まで付いてる程です。
およそアニメーションとは思えないほどの描写で観ていて本当に美味しそうでお腹が鳴ってしまいました。
余りの出来栄えに実際僕もメニューの再現をして楽しませてもらいました。

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料理と同じくらい力が入っていると感じたのが「猫」でした。こちらにも作監が付いてる程です(笑)
この猫達は観ていて和やかになります、作中の癒しと言うかアクセントの様にも感じました。
後は、窪田ミナさんのピアノがとても劇中のシーンにマッチして良かったです。
劇中はBGMは最低限しかないのです重要なシーンで窪田さんのピアノが流れます。
その切ないメロディーがとてもシーンに合っていて、また常時のBGMが少ないからこそ際立っていたと思います。


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ここからは実央について感想を書いていきます。

先ず実央です。
基本原作に沿っていますが削減されている描写があるのは確かです。
ですが代わりに続編の「春風のエトランゼ」でのシーンが一部描写されています。
そして実央に関して一番顕著だったのは母親とのシーンが随所に描写されていた事です。
実央と母親との「親子愛」をとても感じました。子みおを演じていた子役さんの演技力にも驚かされました。
「海辺のエトランゼ」は実央と駿の恋のお話ですが映画では実央と母親の親子愛も並行して描かれていてそれがとても良かったと思いました。
母親を亡くして孤独の淵に居た実央、駿と出会い本来の明るさを取り戻し新しい人生を歩み始めました。
母親との絆を鮮明に描かれていたからこそ母親から駿へ、実央は託された様に見て取れました。
それを最も感じさせるのは一番最後の実央の母の墓前でのシーンでした。
駿と一緒に旅立つ前に母の墓に参るのですがその時、一陣の風が吹いて実央の麦わら帽子を吹き飛ばします。
その帽子を駿が「取った」と言ってキャッチするのですがこのシーンは原作、映画とも凄く心に焼き付いています。
麦わら帽子を実央に被せて駿もお墓に向かい拝むのですがこの仕草が駿が実央の母親に実央を引き受けるよ、と言う挨拶の様にも見えました。
そして出発の時、実央がお墓に背を向けると今一度、風が吹き付けます。
風が吹いて帽子が飛ぶシーンが原作でもあるのですが2度目が吹くシーンは映画オリジナルで原作にはありません。
この風は母親が旅立つ実央の背中を押して居る様にしか見えませんでした。
そう考えると途轍もなく切なくてそして心が温かくなる思いがしました。

実央に関しては絵里ちゃんとの電話のやり取りが無かったり、本島での駿とのやり取りが原作とは少し違っていました。
原作では実央の気持ちに重点を置かれている様な描写だったのですが映画については駿の気持ちや感情に重点が置かれてる様に感じました。
それでも原作、映画共に観る側に伝えたいものや実際伝わってくるものは同じだと思いました。
実央は実央なりに3年間しっかり考えて出した答えである事、そして答えを出した実央はただ一途に駿が好きなのが凄く伝わってきます。
実央にとって駿は自身を孤独から救ってくれた恩人だと思っています。(春風より)
それこそ駿との出会いに運命さえ感じていて…本当に「春風のエトランゼ」も映像化して欲しいです(泣)
実央のシーンで一番心にぐっと来たのは大げさでなく全部なのですが特に上げるとするなら桜子との夜の海辺でのやり取りです。
飛び出していった桜子を探して懐中電灯を片手に森の中を歩いているのですが電池が切れてしまいます。
その時、駿と出会った時の事や恐らく母親が亡くなった時の事がフラッシュバックするシーンがあります。
この描写が原作にはありませんでしたが実央の感情が如実に表現されていて凄く良い手法だなと思いました。

夜の海辺で桜子に「いつか駿が別の誰かを好きになって その時一緒にいるのが自分じゃなくても俺はそれでいいよ。決めるのは駿だよ!」と言った実央
「そう思えるのは今あなたが必要とされてるからでしょ」と言った桜子の想いや言葉も深く突き刺さりました。
「あなたに何がわかるのよ」と感情をぶつける桜子に対して「わかるよ! そんなの俺だって君と同じくらい駿が大事なんだよ」と言う実央
そしてか細い声で「だから…ごめんね」と言った時、桜子の脳内で幼い頃の記憶が蘇ります。
それは桜子がいよいよ、駿への想いは絶対に叶わないと思い知った瞬間だったと感じました。
この時、桜子の中で何かが終わった様にも見えました。
そして翌朝、桜子が帰る時のシーン。
最後のお願いとして駿にキスしてと乞うのですがその時の実央の青ざめた顔。
本当に駿が桜子にキスしたかは微妙ですし僕はきっと実央が邪魔しなくてもしなかったと思ってます(笑)
ですが実央はもうそれどころじゃなく咄嗟に自分が桜子にキスをします。
…駿って信用ないな。そりゃ当然か(笑)
桜子が絶叫しながら去った後、実央はドスの効いた声で「おい」と駿に声を掛けて思い切り頬を叩きます。
怒ろうとする駿ですが実央の剣幕と涙に気圧されてしまいます。
「なんですぐできないって言わないんだよ、俺が邪魔しなかったらあのまましちゃってたろ!!!」とぼろぼろと涙を零します。
こう言った辺りにも実央の駿へ対する想いが溢れている様に感じました。

その後不貞腐れる実央、布団に籠城していると駿が入って来て実央にキスをします。
嫌がる実央…まあ本当に嫌がってるのではなくて拗ねてるだけでしたが(笑)
駿に「お前がいるのにあんなお願い聞くわけないだろ」と言われてまたぼろぼろと涙を零します。
この映画は実央と駿の涙がとにかく印象的で美しいと感じました。
そして二人は結ばれるのですがこの辺りは後述の駿の感想にて。
ただ、まさか映像で二人の濡れ場シーンを観れるとは思わなかったので少しびっくりしました。
ですが実央と駿の恋の行く末を見届ける以上は外せないシーンだと思いました。
原作やドラマCDと比べると少し端折られているのですが映像として観る為にちょうどいい感じに纏められていると思いました。
それ故に過度な生っぽさなどは無く純粋に綺麗なシーンとして描写されていると思いました。
とにかく「知花実央」と言う人物は最初は孤独で儚げなで消え入りそうな美少年でしたが
駿と出会い恋をする事によって本来の明るさや朗らかさ、天真爛漫さや少年らしさを取り戻しました。
「海辺のエトランゼ」では実央によって駿が葛藤やトラウマから抜け出し救われるイメージもありますが(映画は特に顕著)
続く「春風のエトランゼ」では実央は本当に駿に救われていてそして取り戻していく姿を見る事が出来ます。

映画「海辺のエトランゼ」感想続き→https://note.com/nano_1028/n/nebc3334acc6a





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