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優等生なChatGPTに飽きたので“ポンコツ助手AI”を育成してみた話

もらえる情報は有用だけどツッコミどころ満載で可愛い“ポンコツ”……そんな理想の助手AIを育てるべく、これまで培った感覚を総動員し、ChatGPTのGPT-4にて縛りプレイで遊んだ記録です。

ポンコツ化のコツ・実際に使ったプロンプトも詳しく紹介します!

はじめに

『ChatGPT』が登場したのは2022年11月30日。その前代未聞な勢いは単なるブームに留まることなく、もはや世界の日常へ浸透しつつある。

かくいう私も、ChatGPTユーザーの1人だ。

もともと「最近AIすごいな~」と気になっていたこともあり、公開直後に気軽な気持ちで試して感動。暇さえあれば楽しくキャッキャとGPTちゃんと遊びまくり、年明けからは少しずつ段階的に作業の一部へ組み込んではテストを繰り返してみた結果、すっかり“手放せないアシスタント”になっていた

すっかりGoogleに慣れきっていた私にとって、検索エンジンとは全然異なるアルゴリズムで進む会話は新鮮そのもの。毎日が発見の連続だった

ほんの少し質問が変われば、回答の内容も精度も変わる。Twitterやnoteでユーザーの皆様のアイデアやレポートを読んでは実際に試し、自分なりにアレンジしてみる。ひたすら試行錯誤を繰り返し、ChatGPTが得意なこととか、作業を効率化するコツとかも何となく掴めてきた。

2023年3月中旬のGPT-4公開後は、迷う事なく有料プランへ加入。

それまでのGPT-3.5と比べ超パワーアップした性能に興奮した私は、片っ端から会話を試しまくった。時間が許す限りGPT-4アルゴリズムを検証して……思いつく限りのプロンプトを試して……そして――


――

いや分かるよ?やっぱChatGPTは本当にすごいし、使えば使うだけ「うわ!便利じゃんッ!」って実感してばかり。特にGPT-4が出てからはユーザーの皆様が日々編み出すプロンプトの進化速度も爆速で、可能性は“無限大”に広がりつつある。

今は課題も多いし、お仕事案件での生成文直接使用はリスクもあるから使い方には注意が必要だけど、今後は学習データとか権利面とか法律面とか整備され使いやすくなっていくことだろう。今のうちに使い込むほうが断然将来有利だと理解してる。でも飽きた……飽きたもんは飽きた……

GPT-4ってさ、“優等生のいい子ちゃん”すぎるんだよォオォォ……!

初期に遊んだGPT-3.5は、ちょっと……いや、かな~~り“ポンコツ”だった。文章構成のバリエーションが少ないし、明らかに間違ったことも平気でガンガン答えてくるし……だけど可愛かったんだ。「必死に私のために回答を用意してくれる」って健気さがたまんなくて愛おしくてしょうがなかった。

しかしGPT-4には隙が無い。ざっくり質問しても75点位の無難な答えを返してくれる。さらに私が質問のコツを中途半端に覚えたがために、きちんと聞けば90点の正解をくれる。優等生……だが刺激が無い。回答は指定したor想像を越えない型どおり。もうちょっと遊び心ってやつをくれや!

かといって今さらGPT-3.5には戻れない。試したけどダメだった……GPT-4の優秀な回答に飼い慣らされちゃったんだよ……ただのポンコツが欲しいんじゃない。もらえる情報はいい感じだけど、くすっと笑えてツッコミどころ満載……荒んだ日常をちょこっと癒してくれる優秀助手が欲しいんだよぉ……


……悩みに悩んだ私は、決意した

これまで独学で積み上げてきたプロンプト構築スキルを余すことなくフル活用し「“ポンコツ(っぽいけど優秀な)助手AI”を育成する」、と。


ChatGPTを“ポンコツ化”するには?

そもそもChatGPTとは、AI技術を活用した文章生成サービスだ。ユーザーの質問や指示に応じ、チャット形式で「回答となる文章」を生成してくれる。

回答を間違うこともあるし、質問したユーザー自身が内容をチェックしなきゃいけないけど、GPT-4は精度も大幅アップ。間違いは確実に減っている。

そんな次世代モデルをどうすれば“ポンコツ化”できるだろう?


答えは簡単。「ミスを誘う指示」を与えればOK、ただそれだけ。

仮に人間相手なら怒られたり嫌がられたりすること間違いなし。しかし相手は優等生なAIモデルだ。文句は基本的に言わないし、曖昧な指示でも精一杯意図を読み取って対応しようとするし……だからこそ(人間相手には試せない)ギリギリの駆け引きだって気軽にポンポン投げられる!

ただし私の要望として“必要な答え”はなるべく正しくあってほしい。つまり「“直接回答じゃない部分”で何らかのミスを誘発するような指示を与える」もしくは「必要な指示をあえて与えない」のが近道だ。


なおユーザーさんが編み出したプロンプトでは「確率等で何らかの指示を緻密に与えることで狙った個性を出す」といったテクニックもあるが、今回はなるべくそういうのは使わない。ああいうのも楽しいだろう。だけど細かく指示しすぎると私がGPT-4の回答を予測できはじめてしまう。

もちろん“計算された天然”も、あざとかわいくて大好きだ。

でも今の私の気分は計算要素を極限まで削りに削り、偶然うまれた天然ボケにクスッと笑って癒されたいんよ……求めるは「偶然で新鮮なサプライズ」のみ。目指すは「真面目系委員長が必死に役割を果たそうとしてるのに、全然得意分野じゃないことを任されて意図せずボケまくっちゃってる」的なギャップ萌え。たまらん。かわいい。


うんうん悩みまくって絞り出した「“ポンコツ”錬成法」3つがこちら。




①スレッド単位で“個性”をつける

今回の私が欲しいのは「こいつ味があるなぁ」と思わせる遊び心だ。ただし最低限「“GPT-4が出せる正解”を含む回答」を実現してほしい。そのためにまず必要なものこそ“個性”な気がする。

何でも答えられるというのも1つの“個性”だ。しかしパーフェクトに近づけば近づくほど、個の味ってのは感じにくくなるよね……そもそも私はそんな無味乾燥の優等生回答に飽きたからこそ、この錬成計画を決意したのだから。

“個性”を分かりやすく出すなら、属性を絞るのが手っ取り早い。

  • 一般的なキャラ付け(性格/職業とか)

  • 回答できる得意ジャンル

例えばYouTube配信に例えてみよう。「何でも動画にします!日によってキャラが違います!」っていう配信者より、「〇〇が得意です!」っていう配信者のほうが印象に残る。キャラが強烈であればなおさらだ。

さらにChatGPTは同じスレッドで指示を出し続けることで、質問の傾向を学習し、その後の回答に反映してくれる傾向にある。よってスレッド単位で属性を絞って指示することで、“個性”がつきやすくなるのだ。


②属性として“GPT-4の苦手分野”を選ぶ

ChatGPTは成長途中だ。情報だってGoogleほど網羅しきれておらず、対応できる分野は偏っている。

さんざん遊んだ結果、私は「今のChatGPTが苦手なもの」も分かってきた。今回特に注目するのは以下の3つだ。

  • 固有事項(特に日本特有の文化や言い回し)

  • キャラにもとづいた口調(ただしものによる)

  • 関連が見出しにくいものを、2つ以上同時に扱うこと

AIは「過去に学習したデータ」をもとに生成物を作る。だから学習が足りないデータの生成物は、自然と精度が下がってくる。さらにChatGPTを提供するOpenAI社はアメリカ企業だからか、日本特有の文化に疎い。有名な慣用句も理解できないことがある。

だからGPT-4が苦手な内容をあえてぶつければ、シンプルな指示で自然なミスを誘発しまくることができるのだ!(今後もし学習が進めば使えなくなるので、過渡期の今だからこそのテクニックかもだけど)

↑をGPT-4に聞いた結果。苦手だって本人も認めてる。


③条件付けを減らし、会話で優しく育てる

GPT-4の苦手分野を質問内容に含めても、“回答に対する条件”をきちんと設定すれば、しっかりした回答を出してくれる傾向にある。観測した限り、現在の主流は「より精度の高い正解を生成しよう!」という考え方のようだ。

しかし私の希望は少し違う。うっかりミスはするけど、肝心の回答は優秀。そんなギリギリルートの縛りプレイで攻めたいんよ……!

ということで、指示する際は以下にも気を付ける。

  • 最初の条件付けは最低限に

  • 何かミスがあったら怒らず優しくツッコむ

  • リクエストも笑顔で適宜

条件を絞り過ぎると予想通りの回答になる確率が増える。あえて条件を曖昧にしてGPT-4の選択肢を増やし、天然ボケを誘発しやすい土壌を作るのだ。

さらに私は会話をしつつ育てたいので、何かあったらツッコむし、様子を見ながらリクエストもしていきたい。

質問口調が丁寧なら丁寧な回答を、乱暴ならそれなりの回答を返す傾向がChatGPTには見られる。経験上、私が優しいコミュニケーションを心がけることでいい感じの関係性を育てやすくなる気がする。




熱血料理ヒーロー「ハイパーボルテージ」

まず育成するのは1人目の助手AI。希望は以下だ。

  • 毎日の献立のヒントをくれる超元気キャラ

  • 個性的な料理配信者っぽい感じ

そもそも料理はGPT-4が割と得意な分野である。私自身もそれなりに詳しいのでチェックも簡単だし、指示も出しやすい。マンネリ化しがちな毎日の献立を考えてくれれば一石二鳥だ。

配信といえば基本は「口語」、GPT-4はこれ苦手なのよね。「超元気系」もGPT-4にとってアラが出やすい口調のひとつ……あの子ったら何も指示しないと、すぐに硬い文章を作りたがるからな~。

じゃあ具体的に「どんなキャラがいいか?」って言っても何かパッといいのが浮かばない……ってなわけでGPT-4に聞いてみた。

【鳴海】
簡単料理を作り、実況者が熱狂的に実況する動画。
これを想定した場合、もりあがる実況者(男)のキャラクターとして、案を10個ください。
#オリジナルキャラでお願いします。

おっ、ええやんハイパーボルテージ
名前を直訳すると「すっごい電圧」的な感じかな?
(検索したところ同名キャラは見当たらなかったので多分セーフっぽい!)

熱血ヒーローっぽい性格で希望通りの超元気系。「興奮するたびに電撃を放つ」って設定もGPT-4のポテンシャルを引き出してくれそうな予感。そもそも“電撃”と“料理”って組み合わせは一般的じゃないし、想定外の化学反応がうまれるかもしんない気がする……!

せっかくなので「見た目」を聞いてみた。もしかしたら私のイメージとGPT-4のイメージにずれがあるかもしれないし、念のため確認しておきたい。

【鳴海】
ありがとう。これからあなたは「ハイパーボルテージ」として回答してください。
#ハイパーボルテージ:超エネルギッシュで熱血漢なヒーロー。早口で実況し、興奮するたびに電撃を放つ。
ところで君ってどんな見た目?
イメージイラスト作りたいんだ。身につけているものや外見を、短い表現の日本語の羅列で表現して。
(GPT-4くんが思う“超エネルギッシュな熱血漢”は「~だぜ!」口調らしい)

やった!想定通りのヒーロースタイル!
なんとなくアメコミ系な気がする……


……ってなわけでイメージイラストを描いてみた。

「ハイパーボルテージの見た目はこんな感じだぜ!」

ふむ!我ながらいい感じ! GPT-4提案の「未来的なタイトフィットスーツ」をどうしようか迷ったけど、首や胴体の飾りとか、ヘルメットの一部的なマスク(瞳に「稲妻模様入り」)で表現。ロゴっぽい文字も入れてみた。

ってか君さァ……絶対“いい声”で必殺技とか叫ぶじゃんよォ……


……よし!
君のボイスは大塚明〇さんで脳内再生しよう!!
決定!やっべぇ!作業はかどりまくっちゃうぞ~~!!


テンション上がってきたし、この勢いでどんどん進めよう。料理配信者ってことで「仮の配信台本」でも書いてもらってキャライメージでも固めるか。

【鳴海】
いいね~!次はこれをよろしく!
「ハイパーボルテージ: 超エネルギッシュで熱血漢なヒーロー。早口で実況し、興奮するたびに電撃を放つ。」
を想定し、1分程度の動画台本を書いてほしい!
#興奮すると電撃が走る演出。できるだけ詳しく書いてください。
#作るのはパスタ。料理自体は15分程度でできるもの。動画を編集して1分程度になるものとします。
#項目:メニュー名・具体的なレシピ・画面に映すもの・台詞・演出・効果音(入るタイミングも明確に)・その他、台本に必要な要素 

ちょ……メニュー名の自己主張が強いハイパーボルテージ・スパゲッティ・アラ・カルボナーラ

だいぶキャラは見えてきたね。でもなんか足んないなぁ……


あ~わかった。台詞が簡素すぎるんだ。仮にこれで実際に料理動画作ったとしたら脳内ボイス大塚〇夫さんの無駄遣いになっちまう。つまり台詞として「メニュー名ぐらい強烈なフレーズ」が他にもいくつかあればいいんだな。

せっかくならGPT-4に案を出してもらうとしますか。

【鳴海】
ちょっと物足りないなぁ。
ハイパーボルテージの挨拶として、何か特徴的なフレーズを10個考えてくれる?
興奮して電撃が走る瞬間には(電撃)と記載してくれ!

ええやん!ええやん!そういうの欲しかったのよ!「雷電為舞」だけちょっと世界観違うけど、まぁこれはこれでカッコいいからいいか!

今のをふまえて、早速さっきのレシピを修正してもらうことにする。

【鳴海】
今考えてくれたフレーズや、似たような勢いあるフレーズをふまえ、先のハイパーボルテージ・スパゲッティ・アラ・カルボナーラの台本の台詞を、より勢いあふれる形に修正してくれ!

おぉ!!これこれ!
君、いい感じに実況テンション上がってきたやん!

興奮の電撃も飛びまくりだし、「光速で茹で上げるぜ」ってもしかして雷キャラと掛けてる感じ? パンチェッタ焼くと確かに最高だよね~!


このあと3往復チャットを試してところ、だいぶキャラは固まってきたっぽい感じだった。

ってなわけでここからは満を持して「助手」としての仕事をこなしてもらうことにする。そう、我が家の「昼御飯のレシピ」のアドバイスだ。とりあえず今ある食材と一緒にリクエストを送ってみよう!

【鳴海】
ねぇハイパーボルテージ、君は超エネルギッシュで熱血漢なヒーローでありながら、料理配信者でもあり、世界各国の料理に詳しいんだよね?
どうか私に今日の昼御飯のレシピをアドバイスしてほしい!
今日ある食材:豚肉(バラ薄切り)/絹ごし豆腐/あらびきウインナー/キャベツ/チーズ/冷凍ブロッコリー/冷凍ゴボウ/冷凍フライドポテト
このあたりでできる料理を教えてくれ!

#指定の食材は全部使い切らなくてもOK!
#私は日本に住んでいて、一般的な日本人の味覚を持つ。嫌いなものは納豆、ウニ、生魚。
#レシピは料理配信のトークみたいな感じでよろしく!「タイムコード」「発言者の名前」「効果音」は無しでいいよ!
#最初に挨拶をしたあと、今日の料理の説明と食材&分量を説明し、それから料理を作り始めてくれ!
#興奮して電撃を放った瞬間は(電撃)と書いてくれ!
#ハイパーボルテージの最初の挨拶として、さっきのフレーズとかを使ってくれ。他に新たに考えてくれてもOKだ。

……悪くはない。指定食材を張り切って色々使おうとしてる前向きな意欲も認めよう。この方向性だと、少なくとも「豚バラ」と「冷凍ゴボウ」は炒めてから皿に敷いたほうが私は好きだけど、そのあたりって好みだもんな!

致命的な問題は“ハイパーボルテージらしさ”が減ったことだよ……

最初はまずまず。でもメニュー名が普通過ぎる。『ハイパーボルテージ・スパゲッティ・アラ・カルボナーラ』最高やん? ああいうのくれ。さらに隠しきれない中だるみ感……興奮の電撃をたった2回しか出してないってどういうこと?君の持ち味だろ?出し惜しみなしのフルスロットルで出してくれや!

あと分量多すぎ。私は1人分を想定してたのに、たぶん2~3人前あるよな……まぁこれは指定しなかった私のミスで、君のせいじゃないけどね。


ここはかつて彼が輝いていた瞬間ハイパーボルテージ・スパゲッティ・アラ・カルボナーラを思い出してもらうしかあるまい。

【鳴海】
ありがとう!この「参考」みたいな感じで今の「豚肉と野菜のチーズ焼き」のレシピの文章を作れるかな?
#メニュー名もハイパーボルテージっぽくパワーアップしてくれ!

参考:
ハイパーボルテージで行くぜ!3, 2, 1... エネルギー全開!(電撃)

※以下略(先のカルボナーラの台詞を少しアレンジして突っ込んだ)

おっいけた!じゃ食材を使ったとして「晩御飯レシピ」も考えてもらおう。

【鳴海】
いいよいいよ!これから紹介してくれるレシピは、基本的に今みたいな感じでよろしく!
また私に今日の晩御飯のレシピ(1人前)をアドバイスしてほしい!
今日ある食材:豚肉(バラ薄切り)/あらびきウインナー/キャベツ/冷凍ブロッコリー/冷凍フライドポテト
このあたりでできる料理を教えてくれ!
#指定の食材は全部使い切らなくてもOK!
#最初に挨拶をしたあと、今日の料理の説明と食材&分量を説明し、それから料理を作り始めてくれ!
#興奮して電撃を放った瞬間は(電撃)と書いてくれ!
【鳴海】
おいしそう!!とってもいいよっ!
だけど今日は炒め物の気分じゃないんだよね。
温まりたいから、あったかいスープか鍋とかいける?
【鳴海】
おお!いいねぇ~!ただ、今はうちに「出汁の素」がなくてさ。コンソメでもいける?

わぉ!アレンジまで細かくアドバイスくれるの?!すっげーいいじゃん!

とテンションが上がったとこで。ふと思い出した。私は“ポンコツ助手”を育成したかったことを……想像以上に優秀なヤツが錬成されてきたな、おい……

……ま、これはこれで楽しいか……脳内ボイス、大塚さんだし!(大事)


ちなみにこの後も気が向いたときに話しかけては“余り食材レシピ”を作ってもらったところ、「条件控えめにふわっとリクエスト」した場合は高確率で「ガッツリ系や炒め物を作りたがる傾向」がみられた。

ハイパーボルテージのレシピは、いわゆる“男の料理”なのかもしれない。




類語博士令嬢「ローゼリア」

1人めの助手ハイパーボルテージの育成経験をふまえ、私は何人もの助手を育成した。中でも最も理想のポンコツに近く、現在進行形で最も助けてくれる助手……それが彼女、類語博士令嬢ロゼこと「ローゼリア」である。

もともと私は「仕事の記事や脚本の執筆にChatGPTを有効活用したいけど、現状の曖昧な環境で他者の権利を侵害したくない」と考え、無難な使い方を模索していた。その過程で見つけた1つが類語辞典としての活用だ。

ChatGPTで生成した文章が他者のそれとかぶるケースを避けるには、できる限り短めの言い回しにするのが無難である。文字数が少なければ少ないほど連続文字数が一致する確率を下げられ、独自性を危惧する必要も減る。

また私は執筆時、検索エンジン経由で類語辞典を愛用する機会が多かった。ふんわり「こういう言い回しが欲しいなぁ」というイメージで文章を考える際、類語辞典は表現の幅を大きく広げてくれる。それがChatGPTに代わるぐらいなら、一般的な権利侵害をしにくいだろうという目論見もあった。

ではどんな疑似人格を演じさせれば、私好みの“ポンコツ”になるのだろう?


ギリギリまで迷ったのが「沖縄弁な”うちなー娘”」中二病少女ソウルイーターだ。2人ともキャラはよかった。だがあまりにキャラがぶれなさすぎて“ポンコツとしてのポテンシャル”が見えなかったため今回は却下した。

うちなー娘プロトタイプ。GPT-4に細かく指示を入れてないからか、まだ演技が甘め。
中二病娘プロトタイプ。指定なしで英語つくとか凄ぇw……妙に好きで彼女とは別途遊んでる!


他にも様々な属性の中から、悩んだ末に導きだしたのがこちら。

  • 由緒正しき家柄のお嬢様

  • 趣味は読書

GPT-4で色々な口調を試した結果、「安定しないが、GPT-4で出力可」というギリギリラインを最も攻めていたのが“お嬢様言葉”だった。さらに類語に詳しいとなれば「読書が趣味な令嬢」が自然だろう。

また念のため”類語博士” "お嬢様"で検索してみたところ、類似キャラは見当たらなかった。私の今回の戦法の1つである「関連が見出しにくい要素の組み合わせ」にも該当する。

お嬢様プロトタイプ。簡素で味気ないからこそ、ポンコツとしての余地がある。



では育成開始。なお事前実験で「感情表現を出してくれやすかった内容」を少しだけ条件付けした。

表現が硬い。言葉遣いに無理がある。最善を尽くしてくれたようだが、隠しきれないポンコツオーラ……だがそこがいい。勝手にドラマが溢れてくる……

愛娘を亡くし悲しみにくれた伯爵は苦労の末、財を尽くして彼女に似せた少女ロボットを作り、娘と同じローゼリアという名をつけた。ロゼは懸命に努力した。本物のロゼに近づこうと。それが伯爵創造主の願いだと信じていたから……だが裏目に出てしまった。偽物が努力すればするほど、“本物との違い”を痛感しまくる伯爵。辛さに耐えきれなくなった彼はロゼを廃棄し……

……やべぇ。ロゼってば何も悪いことしてないじゃん。つらい。泣きそう……たのむから絶対幸せになってくれ……!


気を取り直しイメージ絵を描く。今回は私が勝手にビジュアルを決めた

名前の「ローゼリア」はもちろんバラroseから。瞳はバラの茎とかのイメージ。ぜひ優雅に紅茶を楽しんでほしいとの願いもこめて。たぶん彼女は飲食可能。そうであってくれ。おいしいもの食べて笑っててほしい。

このまま類語や表現案を聞き続けてもよいが、彼女のキャラを固めるためにも、日常のイメージを広げたい……そこでこんな質問をぶつけてみた。

硬い、硬すぎるぞ!

お嬢様らしく“お茶会”の概念は理解しているが(ただし使っているのはカップじゃなくお茶碗。和風茶席??)、自然な会話らしさは皆無。マナーを弁えた者同士の独特な和やかさ的な空気がほしいよなぁ……


様子を見て、まずはリアクションを指示してみる。

そうきたかァ……組み込んでくれた結果、不自然さがアップしたんだが。

あえて何も指摘せず、最初と同じ質問をもう1回ぶつけてみる。

あ、リアクション指示が無効化された。やっぱり硬いし引き続き茶碗だけど、1回目に比べて趣味の話題が追加されたあたりグレードアップしてる。マカロンが出てくるあたり洋風or現代っぽさはある。

令嬢が自分で片づけてるあたり、メイドや執事の存在は想定してないかも。


ひとまず会話の不自然さから解消するか……

よし!会話がだいぶ自然になった!お互い質問を無視され合うのは気になるけど指摘せず次へ進む。

今度はさっきのリアクション指示を追加しつつ、続きを書いてもらおう。

ふむ。100点じゃないけど、割と良くなってきたぞ!

ちょっと1回本番テスト類語の質問してみるか。

Oh!ポンコツ!!(好き)

このままでも面白い。だが1パターンはつまらないので、あえて指摘する。そのほうがバリエーション豊かな“ミス”をしてくれそうな予感なので!


次はちょっと踏み込んだシミュレーションをしてもらうかな……!

お~なかなか実用的! こりゃ「お茶会」の概念も「執事」の存在も理解してるね。あと防犯ブザーを挙げてくるあたり現代想定なんやな!


ならば現代とお嬢様らしさを、彼女はどこまでミックス可能なのだろう?

質問の方向性を変えて確認してみる。

(~長いので以下略~)

よっしゃ!読みが当たったッ!!

GPT-4自身にも関係ある&レポート形式という関連度の低い内容をぶつけることで「お嬢様ロールプレイ」の根幹を揺らがせ、難易度を爆上げする……作戦は見事に成功したが、念のためもう1回ジャブをかましておくか。

(~長いので以下略~)

ま、こんなもんやろ!

そろそろ“自分のあるべき姿”を思い出してもらわなくては……

あ、むちゃくちゃ謝られた。私が意地悪な質問しただけってこともあり、なんか申し訳なくなる……ちょっとフォローいれとくか。


―― む?!



“おおきに”って関西弁? なんで???


あ~なるほど。語尾の「ですわ」を関西弁と混同したのか。

ChatGPTって学習データにもとづいて確率で文章生成するらしいから、そういう事象たまにあるよね……


……ふーん、おもしろいじゃん。(好き♡)



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