「転校生ナノ」ユリ役のNing Chanya McCloryインタビュー
Netflixで全世界配信され、アジア各国及びブラジルなど南米でも熱狂的に受け入れているタイ制作のドラマシリーズ「転校生ナノ」(Girl from Nowhere)。 そのシーズン2(今年5月から配信スタート)から登場した新キャラクター「ユリ」を演じているのがNingことChanya McCloryさんです。
彼女は、既にドラマシリーズ「The Deadline」での演技で、第24回アジアン・テレビジョン・アワードの最優秀主演女優賞を受賞するなど、タイのみならずアジア圏で注目の若手女優になります。
以下はタイのウェブメディアBeartaiが行った独占インタビューの内容を私が日本語訳したものです。 タイ語から意訳した部分もありますが、意味としては大きく外れていないと思います。 とても興味深い内容になっていますので、「転校生ナノ」を見て気になった、という方は是非ご覧になってみて下さい。
(出典)https://www.beartai.com/article/interview/635623
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「転校生ナノ」シーズン2に登場した新キャラクター「ユリ」には賛否の声があがっている。このNing Chanya McCloryが演じるキャラクターについて、気に入ったという人も居れば、不満だと言う人も居るのが現実である。
好き嫌いは別にして、ニンのアイデンティティと彼女が演じる役について語るのは興味深い。
ニンとユリは別人であり、このインタビューは読者がニン個人について理解するだけでなく、ユリについてのより深い認識を持つ切っ掛けになるだろう。
Q:多くの視聴者が貴女の事、あるいは貴女が今まで何をしてきたか知らないと思います。今までのキャリアを教えて貰えますか?
A:時間に余裕ありますか? 恐らく可也時間が掛かると思うので(笑)。 先ず、私のキャリアは店員からスタートしました。 中学2年生でチャトチャック公園で物を売り始めてから長い間、店員をしていました。
Q:どんなことをしていたのですか?
A:売り子だったんです。 チャトチャック公園で屋台をやったり、CDC(Crystal Design Center)のレストランでも働きましたし、フリーマーケットでベーカリーも開きました。 それからエキストラ俳優をしたり、モデルやミュージックビデオへの出演、TVシリーズもやりました。10年くらいの期間になりますが、全て細かく話すと時間が足りなくなると思います(笑)。
実際、凄く優秀な売り子だったんです。今でも、そういう仕事は好きですね。古着を幾つか売るとか、そういった事も望んでやっていました。でも、同時に私は飽きっぽい性格なので、一つのことを長くやると、新しいものに挑戦したくなります。飽きてしまうんですね。色々新しい事がやりたくなるんです。
新しい挑戦は怖い面もありますが、それを克服しなければ、人生は代わり映えしないものになってしまいます。 人生とは、何か新しいものに挑戦し、進化させていくものだと思います。挑戦しなければ、自分が何が好きで何が嫌いなのか、理解することは出来ません。
Q:過去の様々な挑戦を経て、何を学びましたか?
A:そうですね、深く考えてみる必要があります。 多くの挑戦をし、又失敗することで、より強い人間になる事を学んできたと思います。 何度も失敗してガッカリしますが、それにより失敗をより早く乗り越えられるようになります。つまずいても立ち上がり、失敗への対応策を学び始めることが出来ます。
Q:ところで、この業界にはどのようにして入ったのですか?
A:先ず、父が演出家でしたので、ずっと映画が好きで、子供の頃から映画が身近な存在でした。 家にはいつも沢山の映画があり、常に観ていました。 映画を観ながら、映画の色々な面を学びました。 映画の前面にある要素だけでなく、裏方の仕事にも興味がありました。
業界入りの直接の切っ掛けは、チャトチャック公園で働いている時にスカウトされた事で、色々なオーディションを受けました。最初の役が貰えるまで、小さなエキストラをあちこちで経験し、オーディションを受け続けました。
本当に沢山のオーディションを受けましたね。「The Deadline」のような作品に抜擢され夢が叶うまで、6年から7年かかりました。私の才能に気付いて貰うまで、6年間はオーディションを受け続けましたが、全く上手く行きませんでした。でも、最後まで諦めず、とうとう素晴らしい役を得ることが出来ました。
Q:演技の仕事は好きですか?
A:はい、好きです。幸運な事に、好きだからこそ長く続けて来られたと思います。私は自分のスピリットに駆り立てられるタイプの人間なんです。どんな役をどのように演じたいか、常に求めています。
自分の好きでないもの、あるいは理解できないものには耐えられませんし、何故耐える必要がるのでしょうか?
Q:どのような役を求めていますか? あるいは演じてみたい夢の役柄はありますか?
A:既に「The Deadline」と「The Stranded」の2作品で、夢の役柄を演じることが出来ました。 それは、周囲の人々や自分が患っている癌という病気に対するエネルギーに満ちた少女の役です。 病に冒された人物の役や、あるいは自閉症患者のような役は今後も演じてみたいと思っています。 何故なら、そういった病そのものや患者の家族について、我々はもっと知る必要があるからです。 それ以外だと、ボクサーの役をやってみたいですね。
自分の演じる役に求めているのは「ファイター」の要素です。
興味のある役は、内に戦士の血が流れているファイターのような人物で、私自身がそうなので、その部分を開放して演じたいのです。
Q:そのような役柄は重たく感じませんか?
A: 楽しんでやっています。 そのような人生の場面を私はエンジョイできます。 実際の人生で苦しい場面に遭遇することは容易なことではありませんが、その時点で初めて、どのように自分自身を感じるか、あるいは他人への感情がどうなるのか、知ることになります。
Q: もう少し絞って質問して良いですか? どのようなファイターの役を演じてみたいですか?
A: ボクサーになってみたいです。 ボクサーの役を演じる為に、トレーニングキャンプへ行き、試合をし、実際に殴られたりしてみたいです。
私自身、そういうファイターの人生を歩んでいるのかも知れません。
今まで、何も容易に手に入れたものはありません。 口がきけない人はどんな表現や表情をするか? もし喋ることが出来なければ、何が出来るのか? そういったことを愚直に学んできました。
それから、良いストーリーの作品に出演したいです。 視聴者にインスピレーションを与えるようなストーリーが好きです。 良い方向に物事を動かすような作品が良いと思います。
状況を悪くするようなものは支持できません。
私の活動や演じる役柄を通して皆さんが勇気付けられるようになるのが希望です。
Q: ところで、貴女が出演した有名な3つのシリーズの全てがネットフリックスで配信されていますね。 まるで貴女はネットフリックスのヒロインのようです。
A: 子供の頃はネットフリックスを観ながら、いつかその中に入りたいと思っていました(笑)。 素晴らしい映画やシリーズを観て、魅了され、「ほら、私はこの中に行かなくちゃいけないんだ」と思わず呟いていました。 配信作品に出演できたことは本当に素晴らしい事で、私の人生に起こった事の中でも最高の一つです。
Q:「転校生ナノ」のシーズン2に出演した経緯を教えてくれますか? オーディションは難しかったでしょうか?
A: 他の俳優と同様にオーディションを受けましたが、それは私が脳手術を受けてから僅か11日後の事でした。 脳腫瘍の診断を受けて、10万人に1人の確率の症状だったのですが、術後の抜糸をして直ぐにオーディンションに行きました。 慌しい人生になりましたが、ユリの役を得ることが出来ました(笑)。
Q: 脳の手術からの回復期だったわけですが、困難ではなかったですか?
A: 実際、私から制作チームに「脳の手術を受けたばかり、という事を理由にチャンスを無駄にしたくない」と伝えました。 自分では出来ると思ったのです。 そんな頑固というわけではないのですが、このようなチャンスが巡ってきた事に身体が反応してしまった、という感じです。 抜糸の9日前に、私は問題ない、という確信を持ちました。 その日、(ヘアケアの)パンテーンのコマーシャルを撮影したのですが、エンディングで、目覚めた私が傷の縫い目を見るというシーンがありました。 その縫い目は、私が手術で縫われた本物だったのです。
オーディションでは、脳腫瘍を患った子だ、という風には見て欲しくありませんでした。
確かに珍しいケースだと思いますが、私は普通にやりたかったのです。 皆が心配してくれていた事は理解していましたが、私自身としては、脳腫瘍を理由に何かを否定される、という事に痛みを感じました。
私は、自分にはこれが出来ると信じていました。 出来る、出来る、絶対に出来る、と。 もしオーディションが上手く行かず、役が得られなかったとしても、いずれ体調は回復したでしょう。 役を得た後には特に痛みはありませんでした。 只、視力の問題がありました。 手術の後、私の目は焦点の合わないカメラのようになっていました。 腫瘍によって脳の視力をつかさどる部分がカバーされていたようです。 腫瘍を取り除いた後も、暫くその症状は続きました。
担当の医師に、視力がぼやけていることを告げると、完治には時間が掛かる、ということでした。 完治するにしろ、しないにしろ、受け入れるしかないので、兎に角やってみよう、と思いました。 幸い、この症状は撮影時にはあまり問題にはならずに済みました。 只、手術で切った傷跡は守る必要がありました。 水中の撮影では、防水の石膏を用意し、傷を覆うことで対応しました。 どうしても、あの演技がしたかったからです。 多分私は可也頑固になっていたのだと思います。
Q: ユリを演じることは難しかったですか?
A: とても大きなチャレンジでした。 私とは全く違うキャラクターですし、理解できない問題解決の方法をする人物です。 私からは遠く離れた人物なので、ユリを演じるのは難しいチャレンジでした。
Q: ユリは既に多くのファンを持つナノの直接のライバルとして誕生したキャラクターですが、ファンがナノの正体を知りたいと思うように、ユリはファンから興味を持たれると思いましたか?
A: その点は私も考えていました。 ユリというキャラクターには、誰もが見て分かる通りの傾向があります。
ユリのやり方は全く正しくないと思います。 そして、腹立たしい存在ですね。 このシリーズに深く魅了されてきた人からは拒絶反応があるだろう、と思っていました。 でも、予想以上に強い反応だったと思います。 応援してきたキャラクターが居る中に、新しいキャラクター、新顔が登場すれば、腹立たしく思うものです。 皆、単純に、そういう存在が好きではないんです。
誰だってヒーローが虐げられる場面は見たくないんです。
そのような視聴者の見方は正しいと思います。
それが視聴者、ファンの権利ですし、否定することは誰も出来ません。
Q: ところで、ユリというのは誰で、何故ナノのライバルになったのでしょうか?
A: ユリは学生で、ご存知の通り、突然、被害者となってしまったわけです。 それが、ナノの血を浴びたことで、ユリは生まれ変わり、生身の人間だった時とは違ったモチベーションを持つようになりました。 ユリはナノ同様にオリジンが分からない存在です。 状況を見て、ナノに嫌がらせをして、ナノのやり方は駄目で自分のやり方が効果的だということを証明しようとするのがユリです。
悪魔と対峙するならば、同様の激しさが必要だし、先延ばししていては何も出来ずに終わってしまう、という考え方がユリとナノの違いですね。 ユリが被害者だったということと関係しているかも知れません。 ユリは被害者が望むことが分かっているのです。 一方で、ナノは元々被害者だったわけではありません。 ナノはわざと被害者になることはありますが、それによって自身のカルマに翻弄されるよう人々を操るわけです。
Q: ユリは恐ろしいキャラクターだと思いますが、演じていて恐くなかったですか?
A: 恐ろしいですね。 誰かを殺すというアイディアを幸せと感じるわけですから、考えただけで恐ろしいです。 でも、人間は時としてネガティブな考えを持ち、アグレッシブになってしまうものです。
3ヶ月の撮影期間中、私はずっとユリの身近にいて、繰り返し彼女を演じました。 ですから、ユリの考えや行動が私に染み付いてしまうかも、という恐れがあり、現実とドラマの世界を分離することに努めました。
ニンはニンですし、ユリはユリです。 つまり別の人間ということです。
ある期間だけ、私はユリだったわけですが、ユリが悲しい気持ちの時、自分を落ち着かせることが難しかったです。 悲しくなるな、と自分に言い聞かせても、それは難しく、時間が掛かりました。 でも、今はハッピーな気持ちでいます。 常にノーマルな状態がどんなものか、注意する必要があります。 自分の思考には多くの注意を払う必要があります。
Q: ユリというキャラクターは、ストーリーの中で、善と悪についての新しい視点を提示したと思いますが、視聴者の善悪の判断にも影響を及ぼしたと思いますか?
A: 影響はあったと思いますが、そんなに強いものではないと思います。 被害者の視点というものが理解し難いということもあるかも知れません。 攻撃され続け、何度も傷つけられ、それでも人は相手を許してしまうことがあります。あるいは、酷い仕打ちをされても、相手を信じて、再び付き合ってみようと思ったり。 しかし、ユリは相手を許さない。相手を牢屋に入れるならば、死ぬまでの終身刑にするのがユリです。 許されるチャンスが欲しければ、悪事を働く前に判断すべきだった、というのが彼女の考えです。 許しを請うのは遅すぎる、ということですね。
私自身は、過ちを再び犯すことがないよう変わろうとする意思が相手にあれば、殺す必要はないと思います。
只、罰せられるべき人間もいます。 終身刑になるような人達です。 被害者は残りの人生をずっと苦しむわけですから。 ユリ自身も復讐せざるを得ない程の大きな苦しみを味わったに違いありません。
ユリは他人の為に復讐をしているように見えますが、彼女自身は自分の為にやっていると思っているのでしょう。 罰せられるべき人間がいるからやる、という彼女の考え方は理解できます。 でも、ユリのやり方はあまりにも過激です。
もしユリのやり方を皆が真似したとしたら、この世界は暴力で暴力をコントロールしようとするモードに入ってしまいます。 呪われたら呪い返す、ということでは何も解決しないでしょう。
目には目を、ということでは終わりがなくなってしまいます。
Q: ハッキリさせたいのですが、ユリのやり方を否定するならば、貴女は「チーム・ナノ」と言えますか?
A: 私は「チーム・ナノ」ではないですね、気持ちとしては。
Q: ナノのやり方もやり過ぎだと思いますか? 間違ったやり方だと?
A: ナノは何かを意図してやるのではなく、相手が勝手に突っ走り、墓穴を掘る、というパターンです。 でも、他に良い方法があるのではないでしょうか? いずれにせよ、私はナノのやり方も支持しません。
Q: 一つだけ、Kitty Chichaにも質問したことを貴女にも質問させて下さい。 ご自身が演じるユリに、あるいはユリのような人物に実際に会ったとしたら、何と言葉を掛けますか?
A: ユリに会ったとしたら・・・、髪の毛を頻繁に洗ったほうが良いわよ、とか(笑)。
Q: それだけですか?
A: うーん、難しいですね。 多分、長い時間話しをすると思います。例えば、元気なの?とか、何か最近あった?とか。 苦しみはあるの?とか。 彼女が感じてることを知りたいですね。 自分のやっていることは問題ないと思うの?とか。 インタビューしてみたいです。
Q: では、もし貴女が本当にユリになれたとしたら、何がしたいですか? 何か社会の問題を解決したいとか?
A: 実際の所、ユリにならなくても、私は問題を解決できます。ですから、ユリになってみたい、とは考えたことはないです。 自分がユリだったら、何がしたいだろう、と想像したこともないですね。 暴力的なことには反対ですから。
正直なところ、ユリになることは健康に良くないです。
誰かを傷つけたり、殺したり、というアイディアを持つことは実生活では健康的なことではありません。 そのような考え方は良くないと私は思います。 私は与えられた役柄を演じきるだけです。 実際にそのような人物になりたい、とは思いません。
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