見出し画像

生活の一部を記録する

 クリーニングから、冬物の衣類が戻ってきた。祖父から譲り受けたカシミアのセーターが、畳まれることを拒むようにとろけて、肌にまとわりついた部分が暑い。ぬるくなった水出し紅茶が、汗ばんだ体に沁みる。茶葉のストックも、残りが少なくなってきた。

 壁掛け時計の電池が切れていた。生活の拠点を置く部屋でこういったことが起こると、朝目が覚めたとき、スマホで時間を確認する習慣がない身としては、時間がずれたまま過ごすことになる。午後にしか予定を入れていなかったから、特に影響を及ぼすこともなく安堵した。昨晩は、本を読みながらうたた寝したこと、メモ書きをしたあと万年筆のキャップを閉めなかったこと、それから、時計の針が指す時刻に、遅れがあると気付いていながら放置して寝たことなど、悔やまれることがいくつかあった。お気に入りのナイトキャップに、黒いインクの染みをつけてしまい、悲しくなった。

 先日の文学賞に関するニュース記事を読み、受賞作品のうちひとつを購入した。冒頭から、度肝を抜かれたまま読了。日頃から、紙と電子でどちらにするか迷いつつ、本作は電子書籍を選択して正解だったと思う。無意識のうちに、わたしの中にマチズモが潜んでいる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?