通り抜けていく夏

 通りの寺社で、百日紅の花と目が合う。
 自宅の庭木はこの気候で葉が焼けてしまったものがいくつかあるなかで、百日紅だけは昨年とも一昨年とも変わらない姿に見えているが、同じように弱っているのだろうか。今までは園芸に手を出さず、ただ庭園を眺めてまわることを楽しんでいたけれど、この際土に触ってみようかと思う。幸い自宅に趣味の園芸が何冊かあり、手にとってみたところ、案外面白くてやる気を出すための導入にはちょうど良かった。

 一日中陽に照らされる植物には同情するが、周りで暑い暑いとぼやく人たちを横目に見て、彼らにうっすらと不快感を浮かべている自分がいる。開口一番暑いですねと言う人を見ていると、自身の血行不良を無関係な人のせいにしたくなる。ときどきそういう気持ちになる。

 前髪を留めてみた。多分10年くらい眉下で切っていたから、額を出すことには慣れていないが、先日購入したヘアクリップが可愛いので使ってみることにした。生え際に風が入り込んで涼しい。

 これもありだなあと思うことがこの頃なぜか続いており、些細な発見に気付くことができて嬉しく思う。そういえば今日は、風が少し冷たかった。冷房で重たくなった体を引きずりながら屋外へ向かうと、全身が自然の暖かい空気で包まれて、なんだか夢見心地になる。ついこの間までそう感じていたが、今日は体を通り抜ける風が涼しくて、気持ちよく感じられた。いつのまにか、季節が巡りはじめている。

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