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癖になるハンバーグ


機関車のMeguは、いつも大忙しです。蒸気機関エンジンが開発され、機関車がこの世に現れて以来、とても大忙しです。

大型貨物船の男達と競い合って、川の上流の街に物資を運ぶのです。貨物船の男達はいつでも多くの物資を一度に運んでいきます。機関車のMeguは一度には多くの荷物は運べませんが、それでもMeguは懸命になんとかなるのではないかと限界ギリギリ一杯の貨物や人々、そして新しい噂話を運びます。絶え間なく繰り返し、繰り返し、昼夜問わず運びます。それでも男達にはなかなか敵わない部分もあるので、やはり今日も石炭を真っ黒な黒ごげハンバーグの塊の様になるくらい燃やし猛スピードで北に向かい、そして南に帰ります。そうそれは爆走と言ってもいいかもしれません。それはそれはいつも猛スピードです。

時代が彼女を味方しました。男達の時代は終わりを告げました。川が冬の寒波で凍結してしまいました。来る年も、来る年も冬は大寒波です。男達の進む川はまるで、なめしている獣皮の脂肪の様にネットリとびくともしません。これでは男達は進むことも、動くことも、物も人も、噂さえも運ぶことはできません。そう、それは、それこそ彼女の出番の時です。

機関車Meguには、冬の寒さも、切り裂く風もお構いなしです。なぜなら、そんな時こそ大好きなハンバーグを作れるからです。真っ黒な黒焦げのハンバーグを思う存分作って、爆走するのです。なんて気持ちがいいのでしょう。

もう、誰もMeguを止めることはできません。なぜならもう彼女の時代だからです。
機関車の暴走を止めることは誰にもできません。もう、Meguの一人勝ち状態と言っていいでしょう。Meguは意気揚々と暴走し続けました。「なんならこのまま何百年も走れんじゃないの!!」と鼻息荒く、黙々とハンバーグを焦がした煙を吐き散らしました。

そんなMeguの時代にも新たなる影が差し込んできました。そう新技術の台頭です。それは電気です。そんなことには全くMeguは気がつきません。なんせMeguはもはや暴走機関車Meguとあだ名がつくほど暴走化してしまっているからです。

Meguは暴走中に、結局新しく建設中の電線塔の電線にからまってしまいました。それはもう本当に大変な事故でした。事件と言っていいかもしれません。もし、Meguが暴走していなかったらこんなことにはならなかったかもしれません。絡まった電線はビチビチとMeguの首に絡まり、ほとんど電線塔の上まで釣り上がってしまうほどでした。

それでもMeguは単純な構造ですから、一命は取り止めた感じになりました。しかし、もうもはや蒸気機関車Meguが活躍できる時代ではなくなってしまいました。

もう、綺麗な青空を黒煙で汚す煙を吐くMeguは必要ないのです。ただの物好きの人たちしか興味のない、そんな代物になりました。

そんなMeguですが、ほとんど廃棄処分になりかけましたが、危うくそれだけはまぬがれました。娘の石炭車両とともに石の台のある公園で展示されることになりました。Meguは思うのです。「これでよかったかな」っと。小さな公園の季節の変化を眺めながら、日々を過ごしています。もう、あれだけ作ったハンバーグは二度と作れませんけど。

おしまい

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