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すっとこどっこい兄ちゃん

お兄ちゃんはとてもハンサムです。少なくとも自分ではとてもハンサムだと思っています。本当は「中の中」です。特に特徴のない顔なので、誰からもからかわられることが、これまでなっかったことも自分をハンサムだと思っている理由です。

弟くんはとても変な顔です。なんだかお正月に焼くお餅が、食べた時にビヨーンっと伸びたみたいな顔です。だからみんなにも「のびもち」とからかわれています。

でも弟くんはそんなからかいも全く気にしません。なぜなら、「だって、お餅はみんな好きでしょ!!」っと思っているからです。

お兄ちゃんは、弟くんを、やっぱり「のびもち」と言ってからかいます。友達といる時も、家でお父さんとお母さんといる時でも、そう言ってからかいます。どうしていつでも、どこにいる時でも、そう言って弟くんをからかうかというと、弟くんが全然気にしていないからです。

お兄ちゃんは、お餅という食べ物は全く味のしない食べ物だと思っています。無味無臭の意味のない食べ物だと思っています。どれくら噛んだら良いかわからないし、いつ飲み込んでいいかもわかないし、どれくらい食べたらいいものなのかの目安もわからないからです。

弟くんは、全くその逆です。餅米を蒸している時のツヤツヤした光、湯気が空に登り青空に消えていく風景が大好きですし、餅米がお父さんたちに杵でつかれて、お餅に変化していく様子は、まるで、自分が美味しい空気を吸って、お母さんの作ったご飯を食べてどんどん変化していく様子と同じように感じるのです。だから、「のびもち」と言われると、自分が益々大きく、伸びているように思うのです。そして、お餅の味は、他に例えようもないくらいに甘く、甘い食べ物だと食べるたびに思うのです。

おわり

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