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ベトナムのオーガニック事情

私は普段、ホーチミン市から車で1時間ほど離れたところで仕事をしている。ここには出かけたくなるような場所がないので週1の買い物以外に外出する用事もなく、引きこもっていることが多い。

そんな出不精な私だが月に一度はホーチミン市内へオーガニック食材を買いに行く。

そしてお気に入りの珈琲屋に立ち寄り、オーナーとおしゃべりするのがすごく好きだ。彼女はコーヒーのエキスパートでもあり、オーガニックのことにも詳しい。


先日、私が買い物してぶら下げていたオーガニックショップの紙袋を目にした彼女は、開口一番こう言った。

「ベトナムのオーガニックは、本当のオーガニックじゃないのよ!」

口をあんぐりする私の肩を笑いながら叩き、「残念だけど!でもこうしてサポートしてくれる人がいないと(オーガニック産業は)育たないから大事なことなの!がっかりしないで。」

とてもがっかりした。

私が今までオーガニックだと信じて買い、食べてきた物は一体何だったのだろう…それよりこの食品会社は嘘つきなの?どういうこと?そんな思考を巡らせながら、勝手に喋り出す彼女の話を静かに聞く。

彼女によると、土壌の質や肥料などの基準が海外のそれと比べてゆるかったり、基準をきちんと満たしているかどうか厳しく検査する機関があるわけではないのでオーガニックとはいえない、ということだ。

つまり「clean」ではあるが正真正銘の「organic」とは言えないらしい。
自称オーガニック、または日本でいう「有機栽培」くらいな感じだろうか。

少なくとも、「clean」であるならよかったと少し安心した。

パクチー

そもそもベトナムにおいて「オーガニック」は主流ではないため、自称オーガニック製品であっても手に入れるのは簡単ではない。国の平均収入が低いため安い物の方が売れるからだ。加えて農家の負担と収入のバランスが難しい点も一因だ。

「でもいずれ大きな企業がその大切さに気づいてオーガニック産業に投資するはずだから、それまでは私たちが、こうして商品を購入することで需要を作る必要があるのよ。」と彼女は言う。

そうか。

今生きている社会を変えるというのは、簡単なことではない。自分一人の力ではどうにもならないと諦めたり、意味がないことのようにも思える。しかし彼女が言うように、需要を作るというマクロな視点を持っていれば、どんな自分の小さな行動もいつか大きな力に繋がるかもしれないと思える。

ふと、ガンジーのこの言葉が蘇った。

You must be the change you want to see in the world.
あなたがこの世で見たいと願う変化にあなた自身がなりなさい。


これは何もベトナムのオーガニックに限った話ではない。教育・環境問題・差別、男尊女卑 etc... 私たちの暮らしの様々な場面でも、変えたいと思う社会があるはずだ。

まずは自分から始める!
というわけでこれからもベトナムで、自称オーガニック製品(笑)を私は買い続ける。

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