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【入管問題】 面会活動で長期収容、医療放置、人権侵害を目の当たりにしてきた支援者が訴える「被収容者とともに私たちも声をあげないといけない」

はじめに

BONDでは、品川と牛久の入管収容施設での面会活動を日々行なっています。今回は面会を行う学生メンバーの一人にインタビューを行いました。

BOND(バンド)~外国人労働者・難民と共に歩む会~
BOND は、日本で生活する外国人労働者・難民の方々の入管からの救出、在留資格の獲得を支援し、外国人との共生社会を目指す団体です。関東地方を中心に大学生、高校生、社会人メンバーで支援活動を行っています。
主な支援活動は、品川や牛久にある入管収容施設で被収容者との面会を行い、収容施設内の人権侵害行為への抗議アクションを行っているほか、問題の解決に向けて、SNSなどを通じた社会的に発信、デモや講演会などイベントの開催などをしています。

インタビュー本編

ー BONDに興味を持ったきっかけを教えてください。

大学に入ってから、社会問題に取り組む活動をしたいというふうに思っていて。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんの写真展に行って、ウィシュマさんの事件をそこで知りました。こんなに重大な事件なのに、自分はあまり報道で接してこなかったので、そこにすごく問題意識を持って、自分にも勉強しながら何かできないかと思って、それで調べて(BONDに)入ったという感じです。


ー BONDに入られたのが大学一年生のときだと思いますが、実際に面会に行かれるようになってから、理解や印象、考え方の変化は何かありましたか。

すごく問題を自分ごととして捉えるようになりました。目の前の相手をどうにか助けたいというか、収容されていていいような人ではないので、そこを切実に救いたいっていう気持ちはすごく強くなりました。


ー 面会を通して、収容すべきではないのに収容が行われているということを、よりリアリティを持って捉えられるようになったのでしょうか。

そうですね、ただ学んでいるだけだと本当にそうなのかなと感じることもあると思うんですけど、実際会ってみると、医療の放置の問題もそうですし、職員の対応とか、そして無期限で収容が続けられているっていうこと自体、本当に今の日本で起こっていることなんだなっていうことはすごく感じました。


東京出入国在留管理局


ー 自分も新聞などのメディアを通して見るのと実際に面会に行くのとは違うなと感じるので、その通りだと思います。では次に、被収容者の方が抱えている深刻な問題としてはどういうものが挙げられますか?

本当に挙げればきりがないんですが、自国へは帰れない事情があり、日本に残りたい、国に帰れないと言っている人たちなのに、帰らせるための嫌がらせというか、追い詰めて帰国を選ばせる、そういう入管のやり方が常態化していると感じます。そこから人権侵害も生じてきています。

具体的には、すごく病院を受診したいって言っているのに何週間も放置されることがあります。入管の内部の医師がまず診察をしないと当事者の方は言ってるんですけど、相手の方を見もせずにただ前と同じ薬を出すとか、話を聞くだけだというところです。日本語がよくわからない人を運動不足で片付けたりとか。明らかに体の不調があると言っているのに、ウィシュマさんの件のように詐病を疑われたり、(病気を言い訳に)外に出たいだけなんでしょっていうふうに扱われたり。適切な診察をしてくれる外の病院に行かせてほしいと言っても、何週間も待たされて、待たされている間に症状も悪化してしまいます。

国の機関が人を閉鎖された空間に閉じ込めることが無制限に行われてしまえば「拷問」と同じです。それでも収容それが行われているのは、入管が被収容者の生命と健康を守るという収容主体としての高度な責任義務を果たすことが前提となっていなければなりません。しかし、実態は人の命を預かっているのに、健康を守る義務を全く果たしていないということが、まず大きな問題だと思っています。

最近だと、(東京入管内で)コロナの陽性者が出てから隔離、PCR検査、検温などはされるけれど、消毒やマスクの配布などの職員の対応も、聞く人ごとに違っていて、ちゃんと一貫した基準に沿ってやっているところは見られません。それについて申し入れで入管に対して直接聞いても、明確な回答は得られませんでした。閉鎖的な空間の中で、いくら国の基準が緩和されたからといって対策をせずというのはあり得ないと思います。以前もクラスターが発生したことはあるので、そういう意味でもすごく危機管理(意識)が薄いなと思います。

仮放免も、申請しても1回目では全然許可が下りなくて。何回も何回も出してやっと下りることもあるし、それでも駄目なこともある。その基準が全くわからない。本当に運、抽選みたいなものだと言っていた方もいたんですが、明確な理由が本人にも伝えられない。私達も結構長く面会活動をしているんですが、誰に仮放免が出るかは全く読めないような状態で、それは入管が裁量でやっているということなので、そこもすごく問題だと思います。

あとは、牛久入管で最近窓に目張りがされていて。光が入ってこない、外の景色も見えない場所に置くことは、収容する上での規則にも反していますし、本当に鬱状態というか精神的におかしくなってしまう、病んでしまう人が増えていて、これについても当事者の方中心に入管に対して申し入れ、抗議はしているんです。本当に当たり前の権利のはずなのにそれが守られていないことが、やはり問題だなと思います。


ー 本当に嫌がらせですね。

(被収容者の方が)帰れないって言った瞬間に態度が変わるとか、ウィシュマさんの件でもありましたけど、子供とかパートナーが日本にいたり、10年、20年と働いてきて、生活基盤が日本にある人、あとは難民で命の危険があるから国には帰れないと言っている人に対しても、入管というか日本は難民をきちんと認めていない、保護していないという現実がある。それでなお収容というのは、収容権の濫用でしかないと私達は言っていますが、本来帰国するまでの間に限ってされるはずのものが、全然そうではなく、入管が裁量でそういうふうにしているというのは、それ自体がおかしいことだと思います。


ー そのような、日々現実として起きている問題に対して、被収容者の権利や尊厳を守るために、市民や学生に求められる役割にはどんなものがあるでしょうか。特に、当事者の声を聞いている立場から、感じていることを教えてください。

面会を通して当事者が市民や学生に求めているのは、まずこの問題を知ってほしいということ、そして、変えるために一緒に声を上げてほしいということです。
現場で当事者の声を聞いている私たち支援者は、当事者の話を聞くイベントやSNSなどを通して、問題を広く発信しています。そういう機会に問題を知ることはもちろん、自分たちが生きているのと同じ社会で起きている問題で、他人事ではない、という意識をもって、声を上げていく必要があります。
いじめと同じで、声を上げなければ黙認しているのと同じことになってしまいます。絶対に反対を貫いて声を上げていく、入管に対して改革を求めていくことが重要です。そのことは当事者の力にもなるし、一人一人の声が集まることで大きな力になるので、声を上げることが一番求められていることだと思います。


ー まずは、より多くの人が関心をもって、同じ日本社会で起きていることとして問題を知ること、そしてただ知るだけではなく、声を上げることで政府や入管に世論の圧力をかけて、この問題を変えていくことが求められるのですね。
ー 何度も入管に面会に行かれていると思うのですが、面会に行く時に何か心がけていることはありますか。


最初の頃は、当事者の人生や生活が懸かっていることだと思って、すごく緊張していましたが、最近は何度か足を運ぶなかで被収容者との信頼関係も生まれてきているように感じます。
実務的なことだと、被収容者の方とはアクリル板越しにマイクで話すので、「やさしい日本語」などの相手に伝わりやすい言葉で話すようにしています。


ー 信頼関係というお話がありましたが、面会をする中で、当事者とどのような信頼関係が育っていくのでしょうか。

被収容者の方は、一度面会に行くと必ず覚えてくれるんですね。収容所内には話し相手になる人があまりいないので、被収容者の方がいつも何をしているか、自分の大学生活や趣味についてなどの雑談をすることもあります。
自分の名前を覚えていてくれたり、前に話していた体調不良が改善していたことがわかったりすることもありました。コミュニケーションを重ねていくなかで、最初に会ったときのような緊張は、お互いになくなっていきます。


ー 面会を続けることで、被収容者の方とのコミュニケーションが深まっていくのですね。
ー とはいえ、面会に行くハードルは結構高いと思うのですが、「やさしい日本語」や、入管についての情報や知識、当事者の方の健康状態が分かるような医学的な知識など、面会に行く前に身につけておくべきことはありますか?


一番大事なのは、どういう目的で行ってるかという点で、自分は支援者として面会に行くんだ、という心構えさえあれば大丈夫です。最初は経験者と一緒に行きますし、(被収容者の方に)聞きたいことを聞くのも大事ですが、話を聞いているだけでも、新しい人も含めてたくさんの人がこうやって支援をして、自分たちのことを気にかけて来てくれるということ自体が、相手の当事者の方にとっては、心強いことなので。私は最初、なかなかそれが自覚できなかったというか、自分が行って邪魔にならないかと思っていたり、あとは当事者の方を目の前にして自分が辛い気持ちになるとか、いろんなことを考えていた時はありました。でも、まずは行ってみるのが大事だと思います。行ったら、それまでと感じることも考えることも変わると思うので、そこから、自分に求められていることをより意識して考えていって、 回数を重ねるごとに、改善されていくという感じかなと思います。

東日本入国管理センター


ー なるほど。特別な知識などが必要なのかなと思っていたんですが、そんなにハードルを上げる必要はないのかなと感じました。細かい知識よりも、意識の方が重要なんだなと思いました。
ー 最後に、このインタビュー記事を読んでいる方に、特に伝えたいメッセージをお願いします。


この問題についてはそれぞれ興味を持っている所があると思いますが、ただ自分の中で考えるだけではなく、変えるために一緒に声を上げてほしいと思っています。そのための場として、BONDでも多くのアクションを行っています。声を上げることは、入管に対して抗議の意思を示すという意味でも、当事者を励まし、当事者の側に立つという意味でも重要です。
この問題は私たちの力で変えていくことができる、ということを、私はBONDに入って知りましたし、それが一番大切なことだと思います。
自分に何ができるか考えて、一緒に声を上げていきましょう。


ー 入管問題を知ったうえで、同じ問題意識を持つ人たちの活動に加わり、実際に行動することが大事だと思いました。本日のインタビューは以上になります。ありがとうございました。

さいごに

BONDでは、ボランティアの募集を受け付けています。春と秋に説明会を実施していますので、ご興味のある方はぜひご応募ください。