短評:「殺人者(ころし)を追え」1962年、前田満州男 監督

シネマヴェーラ 「殺人者(ころし)を追え」1962年、前田満州男 監督。刑事2人が強盗殺人犯の足取りを追うためにその情婦を見張るという野村芳太郎 監督、松本清張 原作の「張込み」(1958年)のようなイントロから、しかし共犯者たちも同じく彼女を見張っており・・・というプロットである。

今回の現場は二千世帯を有する巨大マンションであり、マンション風俗がからんでおもしろい。逆に刑事たちが不審がられて住人に見とがめられてしまったりする。

張り込む刑事はベテランと若手のバディであり、若手の刑事はいろいろコンプレックスが強く、マチスモ的な過剰さを持っている。たとえば女に振られた経験があるため、暴行されそうになった女性を救うが「女の側が誘うこともある」などとうそぶいたりする。この若い刑事の成長物語が軸になっているが、1960年代初旬にこういったマチスモが女性性によって諫められるような物語が普通にあるのも(結局は性役割に帰着する結末とはいえ)ちょっとおもしろいと思った。

共犯者たちがマンションの一室に侵入して住人家族を脅迫する、というモチーフは、前回の特集で観た洋画「その男を逃すな」、その他にもいくつかあったようだ。