見んなババァ‼︎‼︎




10年ほど前の話、僕がまだ中学生だった頃だろうか。


ブックオフから母と弟が帰ってきた。


リビングのドアを開けるやいなや、母が僕に言い放つ。




「ちょっと聞いてーーーー!(怒)」




どうやら出かけ先のブックオフにて何やら気に入らないことがあった模様。


店員の接客か?御目当てのご本が無かったか?それとも最近ブックオフはやけにおもちゃフィギュアが増えすぎか?


そんなこととは関係なく、どうやら本題は別の場所にあったようである。



ブックオフにて買い物をしていた母と弟。


当時2人がブックオフに足を運ぶことはよくあった。


時には弟のなんらかのご褒美でゲームを買ったり、時にはいらなくなったゲームを売りに行ったり。 


ご褒美やのに中古なんかい。もはやそれはご褒美と言えるのか?



その日もブックオフ内をうろついてると、何やら気になるものがあったらしい。


2人の興味を引いたのは、買取カウンターに何やら揉めていた親子である。


揉め事の原因というのが、ウチの母の推測によると、その親子の子供側はゲームをその買取価格で売ってしまいたい。

しかし、親側はその値段では納得がいっていないので売るのはためらいたい模様。


そういった意見の食い違いにより、カウンターにて言い合いになっていた。


その様子があまりにも周りの注目を集めるものだったらしく、よからぬことだとは思いつつもついつい母もその親子の揉め合いに目が入ってしまっていたらしい。


普通はチラ見などでなんとか誤魔化すだろう、しかし母はあまりにその様子が夢中になりガン見してしまっていたらしい。


ジロジロではなくガン見。

凝視している。


そこまで目を離さずに見ていると、流石に買取カウンターの親もその視線に気がついた。

だってこちらを明らかにガン見しているのだから。


あまりこんな所は見られたくない。


顔から火が出る!


自身の揉め合いの一部始終を見られたことに気がついたその親は、母に向かって突然こう叫んだという。




「見んなババアアアァァァァァァァァァァァァ‼︎」



あまりに単調な威嚇台詞!


よっぽど頭に血が上っていたのだろう。


言うことをなかなか聞かない子供に対して既にイライラが募っているのに、その様子をしっかりと見届けてくる謎のおばさんに腹が立ち限界だったのだろう。




だが、そんな親に対してうちの母も黙っちゃいない。


彼女に対して母が言い返す!




「あははははは、あっちの方がババアやのになああ‼︎きゃははははああ!」




相手を嘲笑いながら言い返すという一番腹立つスタイル!


その言い方は気持ちを逆撫でするだけなのに!


おそらく急に怒鳴られたことに対して母も悔しかったに違いない。


でもこのまま何も言わずに立ち去るのも何か自分の中で消化できない。


そう思った結果、軽く相手を罵って帰るという手段を取ったのだろう。


強く抵抗せずとも、軽くその場に少量の毒を撒き散らして帰る母。


自分が傷を負った分、お前も負って帰れということなのだろうか?



そう言い捨てた後、すぐに母と弟は店を出たらしい。





そんな一悶着を終えた母だったが、帰宅すると冷静になってその件を思い返していた。




「でも、たしかにあれが自分の立場やったら知らんおばさんにガン見されたら腹立つかもなー」




そんなことを呟きながら反省のスタイルをとっていた。


自分の非に気づけたなら今回はそれでいいじゃないか。


まあおそらく、ババアに「見んなババア!」と言われた記憶は一生残るやろうけどね?



人間て夢中になると途端に周りが見えなくなるものですね。


それに、大人の喧嘩でも案外


「バカ!」
「バカって言った奴がバカやねん!」


的なフォーマットが適用されるものなんですね。


とりあえず、見知らぬ揉め事には首を突っ込まないのが1番ですね。



ただ最後に一つ言えることは、お互いの喧嘩の語彙力だけはババアよりも幼かったに違いない。

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