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母の愛


メドゥーサは意識を向けると
相手を石に出来る”ちから”を持っていました。

そして更に、鋭い牙で噛み砕く事で
完全に消滅させる事も出来ました。

そんなメドゥーサが、子を産み母となりました。

産まれた子はとても力が強く
そして不器用だった為に
皆の目には暴れん坊でしかなく

悪気なく色々を破壊する度に
孤立する様になっていきました。

周囲は子を嫌い、喧喧囂囂
非難するようになりました。

子は更に暴れ
このままでは世界が滅びてしまう程に
なってしまいました。

追い詰められたメドゥーサは、
苦肉の策で、我が子を石にしました。

それは本当に辛い決断でありましたが
ほとぼりが冷めるまで

いつか石化が解ける日を願いながら
石にしたのでした。

子が暴れる事がなくなった世界には
平穏が訪れました。

すると周囲は
この不要な石等、早く破壊してしまえ!!
と声をあげ始めました。

そうすれば
子が復活する恐怖からも
解放されるからでした。

メドゥーサは悩みました。

石にした事も辛いのに
愛する我が子を、破壊なんて出来ない

しかし周囲はずっと、破壊を要求してきます。

毎日、毎日……

気づくとメドゥーサは大蛇の姿になっていました。
そして、皆の前で自分の尾を飲み込み始めました。

皆は絶句して
ただただ、それを見守りました。

どんどん飲み込まれていく、メドゥーサの身体

薄れていく意識の中で、母は子の事だけを
想っていました。

いつか誰かが、子を助けてくれます様に
宝物のあの子を

お願い、助けて

それは母が子をひたすらに想う
愛のひとつのカタチでありました。


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