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現在ファンタジー小説 『百年カエル』

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ファンタジー小説 小学四年生の夏休み。 母親の田舎である和歌山に帰省した託未(たくみ)は、 庭で大きなカエルとぶつかり、意識を失ってしまう。 次に気づいたときにはなんとカエルに…
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記事一覧

百年カエル プロローグ

プロローグ 僕の祖母の産まれた家は和歌山県の山奥にあり、熊野古道が多く残っている地域で、…

第一章 壱 熊野の里

「アア~星がきれいだな」気が付くと僕は夜空を見上げて、星を見ていた。 「あっ、さっきのヒ…

第一章 弐 熊野の里

毎年盆になると、和歌山にある、祖母の生家(せいか)に遊びに行っていた。 今年の盆も、小学校…

第一章 参 熊野の里

祖母と母は里に住んでいる親戚や友人にお土産を持って行った。 僕たちはいよいよ川に出発した…

第一章 四 熊野の里

寺の横に設置されている、長い棒の先に取り付けられた拡)声器(から、「本日は予定通り公民館で…

第二章 一 古野家 

「コケコッコー、コケコッコー」なんだ、なんだ、僕はビックリして目が覚めた。 あたりはすっ…

第二章 二 古野家

数日が過ぎて、ヒキガエルでいる事も慣れて来た。 どうしてこうなったのかは、今でも分らないけれど、僕はヒキガエルになり、ひい爺さん、ひい婆さんが、生きていた時代にいると言う事は分った。 古野家の床下は、いい具合(ぐあい)にどこにでも潜(もぐ)って眠(ね)る事ができた。 もともと、山暮らしに憧(あこが)れていたのでそれなりに楽しい。 なにより嫌(きら)いな勉強を、やらなくていいのは嬉しかった。 とにかく僕は勉強ができなくて、学校ではビリから二番目だった。 ビリでなかったのが救いだ

第二章 三 古野家

 ポカポカ気持ちのいい陽気、久しぶりに起きた僕はまったりとした日々を送っていた。 一番の…

第二章 四 古野家

幾年 かが過ぎ、古野家は八人の子どもに恵まれた、 長男・義一、長女・綾子、次男・道夫、次女…

第三章 一 里と戦争

昭和十六年(一九四一年)の終わり戦争がはじまった。 人など住んでいるとは思えないほどの山奥…

第三章 二 里と戦争

わずかしかいない里の若者たちにも、次々に召集令状が届き戦地に赴いた。幸子の長男敏夫も戦地…

第三章 三 里と戦争

戦争がはじまり、四度目の春が訪れようとしていたまだ寒い日。 その日はいい天気で、僕は気持…

第三章 四 里と戦争

昭和二十年(一九四五年)の夏、戦争が終わった。 回天の訓練に行っていた道夫は、出撃する前…

第四章 一 時を繋(つな)ぐ

綾子は大阪で板前と結婚して福島区で、『かめや食堂』という屋号の食堂を始めた。 芳江も中学を卒業してすぐに、食堂を手伝うため大阪に行き、道夫は里の上の店の娘さんを嫁にもらい、綾子の食堂の近くで建具屋を始めた。 正(まさ)志(し)も道夫の建具屋を手伝うため、大阪に行ってしまった。 縁というのは不思議なもので、養子に出した美咲の子守り兼、手伝いとして簑島に行った忠子は、先妻の連れ子の跡取り息子と結婚した。 ところが、桂子だけはどこにも行かず、家に残こり田畑の手伝いをしていた。 藤松