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紙袋の中のネコ

夏休みだった。

ずっと家にいるんじゃない、外で運動しなさい、とかなんとか言われて追い出された。真夏の日差しに焼かれながら私は自転車をこいでいた。

自転車で30分ぐらいいったさきに図書館があったのでそこで涼もうと考えたのだ。
携帯を持たせてもらえず、持っていたとしてもおそらく急に遊びに行けるような距離感の友達はおらず、お金のない私はたしか小学5、6年生だったと思う。

図書館への途中に大きな公園があった。グラウンドで球技をしているスポーツチームを横目に、よくやるなぁと思った。公園前にはバス停があって、待合のベンチの横には花壇があった。


紙袋はそこに置かれていた。

白い紙袋。マジックで「ネコ」と書かれていた。
不自然なところにぽつんと置かれたそれをなぜ覗き込んだのかわからない。特に何も考えていなかったと思う。通り過ぎて少し戻って、自転車を止めて、えいっと覗き込んだ。

新聞紙だった。紙袋の8分目くらいの高さまで入った新聞紙。青空に映えるひまわりの写真があった。
なんだ、と思ってほっとしてその場を離れた。


しかし再び自転車をこぎはじめてすぐ気づいた。

新聞紙は畳まれていなかった。広げた状態で、何かを覆うように入っていた。それに、立ち去る時みた気がする。新聞紙で覆いきれていない隙間から白い、ふわふわしたものがのぞいているのを。

それを自分は本当に見たのか、見間違いなのか、ネコがいたのか、わからない。

帰りは違う道を通って帰った。

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