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2022.4.1

桜が咲いている。毎年見ているはずなのに、毎年新鮮に綺麗だと感じる。それは彼らがこの春の一瞬にしか花を咲かせないからだろう。希少性の高いものほど重宝される、どの時代になっても変わらない原理だ。

バイクで国道を走りながら、景色を眺めた。この瞬間だけは、世の中を俯瞰しているような気持ちになる。私はこの世の外側の人間だという、思い込みに浸ることができる。

その思い込みの中では、私は何だってできる。万能感みたいなもの。この世は希望と幸せで満ち満ちていて、私はそこに入って、かけらを拾い集めればいい。階段を登ったり、坂を駆け下りたり、ときには回り道をしたりして、そこにある幸せをただ拾い集めればいい。

手をつなぎながら歩く親子、高校生の笑い声、足早なサラリーマン、恋人たち。

暖かくなってくると、どこか開放的な雰囲気が街に行き交うのはきっと気のせいじゃないんだろう。

スピードを落として、角を曲がった。もう周りに人はいなくなって、砂利を踏む音だけが聞こえる。バイクから降りると、縛られたゴミ袋が目に入った。そういえば、明日は何ゴミの日だっけ。

知っている。漠然とした希望や幸せは、落ちてなんかいない。自分で見つけるしかない。誰も伏線を張ってくれやしない。残酷なほど自由な世界。

晴れた日の朝日が心地いいことを、最近知った。天気で自分の体調が大きく左右されることにすら、気づいたのは最近だ。

何が幸せかを知りたいなら、自分の感情には素直になった方がいいんだと思う。素直という言葉は、対人関係について使用されるのを散見するが、自分の感覚には素直になった方がいい。完全に自分のために。

明日は晴れるといい。晴れたら洗濯をしよう。

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