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さくらももこと半径5mの世界

さくらももこさんが好きだ。
さくらももこさんといえば、「ちびまる子ちゃん」と「コジコジ」、そしてエッセイがとても有名だ。

どれも好きなのだが、まるちゃんとコジコジは、私が生まれた時から「当たり前にあるもの」であったのに対してエッセイは、小6の時に初めて読み、それはそれは大きな衝撃を受けた。面白すぎて。「衝撃」というと突き飛ばされるようなイメージだが、吸い込まれてしまうような衝撃だった。

最初に読んだのは「ももこの話」というエッセイ集に収録されている「食欲のない子供」というエッセイだった。内容に関しては言わずもがな面白いので「読んでほしい」の一言なのだが、何より驚いたのは「食欲のなかった子供時代」というテーマで面白いエッセイを1本書けてしまう視点と感性だ。

さくらさんのエッセイは、家族の話、子供の頃の話、息子の話、学校行事の話など、いわゆる「日常」がテーマになる事が多い。突飛な経験ではなく、生活の半径5mの中にある事柄を書いているのだ。
では何がさくらさんのエッセイをそんなに面白くしているのか。私は「世界を不思議に思う力」だと思う。肯定でも否定でもなく、「不思議」。

「おんぶにだっこ」というさくらさんの幼年期の思い出を綴ったエッセイ集がある。このエッセイ集はさくらももこエッセイの中では異色とされていて、「面白おかしい」だけでなく、切なくなったり、悲しくなったり、名前のない感情になるようなエッセイが多く収録されている。死という概念との出会いや自我の芽生え、罪の意識について書かれたものもある。
自分という存在そのものの不思議さについて考えている様子が事細かに表現されている。あとがきでは、書いている最中にこのエッセイが何を届けようとしているのかわからなくなった、ということが書かれていた。
しかし、私は「おんぶにだっこ」こそがさくらさんのエッセイの源流にあたるのだと思う。
「不思議に思う」という源流があるからこそ、水虫や、痔、姉妹喧嘩といった経験を観察力と妄想力でエッセイにできるのだと思う。

自分という存在が巨大な不思議にぶち当たり、その都度考えるからこそ、日常の中で経験する事も自分だけの景色になり、いわゆる「さくらももこワールド」になるのだ。
そして、さくらさんが経験している日常がこんなにも面白いのなら、自分のいる日常も面白いのではないか、「さくらももこワールド」はつくれなくても自分だけの「ワールド」はつくれるのではないかと思わせてくれる。
まずは自分の見方で見えている世界を大切にしたい。


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