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愛の才能だった

初めて買ったCD、村井は川本真琴「愛の才能」でした。愛の才能ないの 今も勉強中よ SOUL
忘れもしない小学5年生だったはず……あかん、忘れかけてるわ

あの独特な甘い、かつギターでじゃかじゃか切っていく系の小気味良さに心を撃ち抜かれ、あの声で、あの感じで歌えるようになるまで、夢中になって練習したわ。
折しも生涯において最高体重を更新し続けている時期で、あんな高校だか大学生だかのちょっと大人でエッチな(小学生にkissは過激)歌詞を、あんなパンチのきいた甘い声を振り絞って出して歌おうとしているなんて、「人に知れたら生きていけない」くらいは思い詰めてるわりに、でっかい声で当時の兄の部屋(兄の部屋にCDを再生できるものがあった)で歌い散らかしてた。
兄の影響でレッチリやクイーンも熱唱練習してたけど……それはまた別のお話。

小学生時の将来の夢は「漫画家」か「声優」でしたからね。
かっわいい声を出せたかったんですよ。
あこがれは林原めぐみですわ。
こういう練習は修行と言った方が正しいかもしれんけど、ちっとも苦ではなかった。
苦みを全然覚えてない。
あれ以降どの歌も「その人が歌ってるみたいに、声色も癖もコピーする」ようなスタイルを貫いていって。
耳がいいのか、思い込みが激しいのか自分でも「そっくりや」と思えるまで練習する。
CHARAとかCOCCOとか椎名林檎とか、テイストの違う歌手を歌い分けするのがまた面白い。
声の着せ替えで「違うものになれる」ような音楽の味わい方をしてた。
学校では国語の音読が大好きで、セリフを読むのも大好き、自分の出している音(声)に集中して音を研いでいくような感覚が面白くってあまりにも好きだから、声に(今振り返ると耳にも)自信があった。
漫画は漫画で頑張ってたけれど……それはまた別のお話。

10歳くらいから自分の声大好きっ子で、「私の声最高」と思いながら生きて生きて、私史上最高級の声誉め言葉は「高山みなみと田中真弓を足して2で割ったような声」でした。
(事情があって10代半ばから少年声を目指す時期が興っていたのです)これは絶対に忘れられないぜ!墓場まで持っていくぜ!たとえ1回しか言われてなくても!

そんな唯我独尊的な私が、声に自信がなくなったのは28くらいでした。
たいして変わった声でも、いい声でもない。特徴的な声でもない。
思えばそれは21のころに始まっていた。
朗読を映像化したいと言ってる方の企画に参加して、継母の声かなんかで参加したんだけど、そこにほんまもんの声優さんが居て、そのマイクを通した声を生で聞いた時から。花びらが開いてこぼれていくような軽やかさときらめきを持っていて、「これ次元がちがうやつや」と肌で感じた。そこはほら、耳もいいから……。
「特別な声(力)を持つ人がいる中で、私は何を己の力として外に出せる?」という、辛辣な突っ込みが入り始めた、目覚めの時期ね。
そこからあがいてもがいて28には自信をなくしていた。普通の声なんや、だって姉ちゃん(実姉)に似てると言われるもん(姉妹だから当たり前だけど、姉の声は好きじゃなかった)……。
30過ぎたら高音がかすれるようになってきて、音域が狭くなって、甘ったるい声も伸びが悪くなった。
なんぼ言うても耳がいいから、分かる。
また30代は客観の力が伸び盛りだから、それも手伝う。
川本真琴の愛の才能は今でも歌えるし、歌い方も歌い上げ方も染み付いてるけど、あの時みたいに自分の声に夢中になれない、その事実が寂しい。

アホやったころと社会人十年やったころを比べるとか、それ自体アホの所業やろと言われたらそれまでやけど。

そんな道をやってきた私が、こないだまたびっくりすることがあって。
「うわ…自分の声、めっちゃいいやん……、やったあ……」てなるっていう。
一通り回った後にもう一回その波来んの?と人生の神秘にひくほど。

何をしたかって?
朗読したんですよ!
小川未明の「月夜と眼鏡」を!!!

これを作るために、何回も読んで、何回も録って、これでもかというほど自分の声を聴いた。
久々にこんなに聴いて、一番びっくりしたのは「飽きない」こと。
「え、いい声やん」て、素直に思った。

思ってしまった。
思えちゃった。
最高じゃないですかこれ?37にして初めての動画で、半永久的に(Youtubeの存続次第)遺せるんですよ?
公演でしたら、見に来てもらったお客さんとその共有した時間だけが光るように、それはまた儚くて強烈に美しい時間なんですけど!その閃光みたいなものが舞台の至高なんですけど!それしか、知らなかったんだわ、て。
この度、知れた。

見てもらったお客さんには「好きな時に繰り返して見れる」とか、「また違う作品でもやってほしい」とか、「晩酌しながら聴きたい」とか、「寝入りに聞きたい」とか、めっちゃうれしい声ももらえて。

演劇じゃないことに、どこか申し訳なさとか、妙な違和感を抱いていた自分に、「表現てそんな狭いもんではないよ」と言われたかのようです。
表現の方から。

どうぞまだの方見たって下さい。村井春奈37歳にして初PV爆誕してます!




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