百野虎子

百野虎子

最近の記事

畔の道 あといくたびの 草刈りか

農作物を育てる事は、喜びもありますし土にさわること自体が好きなので楽しいのですが、雑草との戦いでもあります。 面倒見のよくない私は、作物を育てているのか草を育てているのか分からないような畑をこしらえては、夏の終わりに一人後悔し、栄養を雑草にとられた細い苗に謝るのです。 日曜日になると、定期的に数人の男性陣が集まり、田んぼの畦道の草刈りをしています。 すげ笠をかむり、あたりに青い匂いをただよわせている風景が私は大好きです。 この時期になると、大変な草刈りもあと何回かなぁと、長

    • 青田から ころもかわりし 稲穂かな

      つい先日まで青々と熱い風になびいていた稲も 気づけば稲穂が垂れて、色が変わりつつあります。道端にはススキもちらほら。 まだまだ私には衣替えは早いですが、彼らはいつも一足先に季節を先取りです。

      • 鈴虫や 戸口は静か 月は明るし

        私の実家は古く、あらゆる所から虫やら動物が入り込んできました。 鈴虫もよく、戸口の隙間から入っては、家の中でリーンリーンと鳴いていました。 外で聞く声は丁度いいのですが、家の中で聞く声は大変大きく、びっくりさせられます。 外に逃がしてやろうと戸口を出れば、月は明るく秋の風を感じました。 鈴虫のいなくなった家は、とたんに静かです。

        • 過ぎし日を 偲べば夕焼け なお赤く

          悲しいおもいでを思い返す時、景色はよりいっそう美しく、鮮やかになるのは、どうしてなのでしょうか。 きっと、その悲しみを受け入れつつあり、その当時の自分をしみじみといたわっているんでしょうね。

        畔の道 あといくたびの 草刈りか

          庭先で 送り火かこむ 家族かな

          亡くなった方々を送り出す送り火が、家の玄関前や庭先で焚かれています。 小さな子供達は、何のことかよくわからず、久しぶりに会った親戚とはしゃぎ回っていますし、まだ歩く事も出来ない子は、おばあちゃんに抱かれてぼんやりと火をながめています。 火を囲む家族の顔は、ほのぼのと優しく、夕闇に暖かくてらされていました。

          庭先で 送り火かこむ 家族かな

          雨上がり 光さしたり 鎮魂歌

          猛烈な雨と風が通り過ぎた後、空気はひんやり冷たくなり、空には青空が覗いて光がさしてきました。 よく見る光景なのに、何か切ないです。 お盆が来れば、もう夏も終わりです。 明日は終戦の日です。

          雨上がり 光さしたり 鎮魂歌

          叱るとは もろはの剣 夜の道

          上司の行動が、どうしても見過せず注意しました。私よりもひと回り以上年下の上司なので、経験が足りないのは当然です。そのことをふまえた上で注意したのですが、私の言っていることが伝わっていないような言い訳をしたので、つい注意を超えて叱るという強い態度に出てしまいました。 自分も通って来た道、理由なき過ちではない事を証明したい気持ちは苦しいほどに分かりますが、やってはいけないことを、やってもいい理由にはなりません。 自分の行動に後悔はありませんが、なぜか心が湿っぽくなり、どっと疲れが

          叱るとは もろはの剣 夜の道

          オニヤンマ 世界は何色 万華鏡

          職場の建物にオニヤンマが迷いこんで来ることがあります。逃がしてあげようと、細いからだをつかむと、なんとしっかりした体!手からその力が伝わってくるようです。目の色も驚くほど綺麗な緑色で、一人で感動していました。 こんな綺麗な目から世界はどんなふうに見えているのだろうと聞いてみたいですが、なんとなく笑われてしまいそうな気がします。 野生動物には生き方に迷いがない気がします。 私にとっては美しく、恐ろしい存在です。

          オニヤンマ 世界は何色 万華鏡

          夢のよう 縁側ならぶ 盆提灯

          もうすぐお盆ですね。 幼い頃、祖母の家に親戚が集まって、賑やかにお盆を過ごしました。 玄関には大きな盆提灯が点され、縁側には小振りな色のついた盆提灯がいくつも並んでいました。 その提灯に付いていた房が、とても触り心地がよく、一人でサラサラと髪をとくように触っていた事を思い出します。 蛍光灯の明かりより、ぼぉっとした白熱灯や、間接照明が好きなのは、幼少期に経験したこの提灯の滲むような灯火からなのかもしれません。

          夢のよう 縁側ならぶ 盆提灯

          路地裏に 一人立ちたる 百合の花

          テッポウユリが咲き始めました。 とても背の高い花で、家の垣根を越えて白い顔だけ出しているのをよく見かけます。 華やかなのに、どこか儚さを感じるのは、この横顔のような花の形だからでしょうか。 人気のない路地裏で、すっくと立つ真っ白な百合の花は、私の憧れです。

          路地裏に 一人立ちたる 百合の花

          夜空には 瞬く星と いなびかり

          ベランダに洗濯物を干そうと出てみると、山の方で一瞬光が見えたような気がしました。 雷もなっていないので、気のせいかなと思ってそのまま干していると、またビカビカと。 どうやら山向こうの離れた所で雷が発生しているようです。 洗濯物の隙間からのぞく星と、山向こうの稲光に手を止め、手を止め、夜空を眺めていました。

          夜空には 瞬く星と いなびかり

          草むらに 気づけば飛び交う 蜻蛉かな 

          職場の近くに郵便局があるのですが、横の草むらにたくさんの蜻蛉が飛んでいました。 つい先日までは一匹二匹がちらほら飛んでいると思っていたのに、気づけば蜻蛉でいっぱいに。 季節の移ろいは本当に早いですね。

          草むらに 気づけば飛び交う 蜻蛉かな 

          草刈りの 木陰で休憩 白手拭い

          よく通る道に神社があります。 いつも綺麗にされているなと思っていたのですが、地域の方が定期的に草刈りをされて手入れされているようです。朝の早い時間に集まって、ひと仕事終えて、木陰で腰を下ろして談笑されているのを見かけた時、心が和みました。 軽トラックがズラリと並び、日に焼けた笑顔と真っ白い手拭いがとても眩しい!

          草刈りの 木陰で休憩 白手拭い

          炎天の 残りし肌に 夜の風

          最近、夜の風が涼しくなってきました。 日が沈んでから曇ってしまうと、地上の熱がぬけなくなり、とても寝苦しい夜になってしまいますが、最近はよく星が見えています。 日中に灼熱の太陽の日差しと熱風をうけた私の体が、夜風にさらされてため息をついているようです。

          炎天の 残りし肌に 夜の風

          ひぐらしの 啼けば山の端 茜色

          8月に入りました。 暑さはまだまだつづきますが、少しずつ日は短くなり、山は赤々と燃え上り、ひぐらしの大合唱が大きくなっては小さく波のように聞こえてくるようになります。 私の実家の裏手はすぐ山で、夏が近づくとカエルがなき、夏の盛りにはミンミンゼミ、盛りを過ぎればツクツクボウシ、ヒグラシがなきはじめます。 夕方のヒグラシのなき声も切なくて好きなのですが、朝方のなき声もまた、とても趣きのあるものです。 夢うつつに聞こえてくる声を聞きながら、うっすらと目を開けると、明け方の静かな光に

          ひぐらしの 啼けば山の端 茜色

          道祖神 紙垂あたらしく 清々し

          今のアパートに引っ越した時、家の周りに何があるのか知っておきたくて、ちょくちょく散歩をしていました。その時によく見かけたのが道祖神です。丸い大きな石が台座に乗っているものや、木の柵の中に丸い石が詰めてあるもの、見落としてしまいそうな程ひっそりと佇む祠など、姿形は様々でしたが、日常的な街中で出会う道祖神は静かで、主張しないのにずっとそこにいる。 神社やお寺さんとは少し違う、「こんにちは」と挨拶したくなるような、そんな存在です。

          道祖神 紙垂あたらしく 清々し