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2022年7月に読んだ本まとめ

文芸書以外の本は面白い本が多かった印象です。来月もこの調子でいきたいものです。文芸書については引き続き百鬼夜行シリーズを読んでいます。現在『絡新婦の理』を読んでますが、7月前半には読み終わると思うので、積読になっている西加奈子さんの『夜が明ける』とか、直近の直木賞、芥川賞の受賞作とかを読んでみようかと思っています。8月は夏休みを取る予定ですが、遠出の予定もないので、暑い夏こそ自宅で読書したいと思います。

文芸書

京極 夏彦著『鉄鼠の檻』

言葉にした瞬間にそれは言葉に囚われることになる。
頭で解釈した瞬間に、それは解釈に囚われることになる。
すべてを理解した心持になっても、それは魔境だと退ける。
それを当然のこととして、言葉にせず解釈せずに理解しない、そういった訓練を積んでいる禅僧を相手に、言葉を用いて憑き物を落とす中禅寺がどう戦うのか?今回は、榎さんがいつも以上にいい仕事してますね。さすが神なだけはある。

文芸書以外

岡田 尊司著『マインド・コントロール』

何となく読み始めたら4時間ぐらいがあっと言う間に過ぎた、非常に興味深い本でした。

心理療法から、催眠療法そして、マインドコントロールへと歴史を紹介しながら、なぜ人はマインド・コントロールに弱いのか、どういう人がコントロールを行うのか、どういった人がコントロールされやすいのかなどが書かれています。

特にどういった人が支配的なふるまいをするのかというのは面白かったです。ざっくり私なりに解釈してみると他人を支配することから得られる喜びに味を占めた人で、その根底には他の人が得ているような喜びが得られなかったり、得ているにもかかわらず感じ取れなかった不幸があるんじゃないかなぁと。

この本では依存心が高かったり、自己評価が低かったり、催眠術にかかり易い等、マインド・コントロールにかかりやすい人の特徴が色々と挙げられていますが、極度の疲労や睡眠不足に追い込まれれば誰しも正常な判断ができなくなるのは相違に想像がつくので、すべての人がそうならないように気を付けた方がよいだろうなと思いました。

さらに、入ってくる情報が著しく少なくなると信条に則らない内容でも吸収しやすくなるというのは聞いたことがあったのですが、情報が過剰になると判断力が低下するというのも「スマホ脳」などで書かれていたことと共通していて面白かったです。適度な刺激って大事ですよね。

序盤のほうで、洗脳から逃れられたのは強い信仰を持っていた人だったという記載があり、それって結局、既存の宗教からの逆洗脳に失敗しただけなんじゃないかとちょっと怖くなりました。

果たして我々はマインド・コントロールされずに生きるなんてことできるんでしょうかね?そこまで考えて、マインド・コントロールされていいものとダメなものを見分けるのに、後半に書いてあったカルト宗教にはまった人への強制介入が法的に認められる状況というのが一つのガイドラインになりそうな気がしました。

この本を読んだ7月頭には、カルトについてTwitterのTLなどで色々と流れてくる事態になるとは思ったなかったなぁ。

三浦 瑠麗著
『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』

本日が参議院議員選挙だったので、関係のありそうな上記の本を読んでみました。

作者と同じ象限にいるからなのか、私としては非常に飲み込みやすくかつ、
客観的な記載が多いように感じました。

選挙戦略という目線で各党の主張を見てみると、多くの項目について、マジョリティ側を与党が主張しているので野党からすると戦いづらい構図になっていると思われます。マジョリティを取り込もうとすると、大きく与党と変わらない野党になってしまうし、与党との違いを大きく出すと、マジョリティを取り逃して当選が危うくなる。

私は嫌いなんですが、感情に訴える戦略というのは野党がとりうる合理的な戦略なんじゃないかと思いました。

鈴木 祐著『無(最高の状態)』

幸福になる方法や、心を守る手法、考え方や、捉え方から生きやすくなる方法というのは、人類の関心事なので色々と研究が進んでいます。

この本は、そういった研究の内容をまとめた本の一つで味付けに禅の要素を取り入れているというところが、他と差別化されている点だと思います。

ちょうど、禅宗が題材になっている京極夏彦著『鉄鼠の檻』を読んでいた私としては楽しく読むことができる本でした。

宮口 幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』

本来であれば救済されるべき、認知機能が弱い少年(性別問わず)が救済されないがために、加害者になってしまっている現状を憂い書かれた本。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』で、そもそも文章が読めない生徒が多いという話に驚いたのですが、この本では、学習をするための認知能力が弱いため、既存の教育を享受できない人のことが書かれていて、文章が読めないよりももう一段階前で躓いている人がいることに驚きました。子供の頃なんて、ボーっとしてたので周りのみんなが同じように授業を理解できていると思い込んでましたからね。

IQで話をするのは荒っぽいのであまりあてにならないんですが14%、7人に1人が境界知能と言われているわけなので、画一的な教育ではなく、個人の能力に合わせ教育が行われる必要を感じました。

同時に、非行には認知機能の弱さが要因となるケースもあれば、それとは別だったり、複合的なケースがあったりと場合によると考えられるので、新しい見方を知ったからと言ってなんでも同じように解釈しないだけの分別は持っておきたいと思った次第です。

高橋 信著
『データ分析の先生!文系の私に超わかりやすく統計学を教えてください!』

こういった義務教育で習わないような専門的なことを、かみ砕いて伝えてくれる本というのは良いものですね。文系とか言う以前に勉強をしていない私でもわかりやすいと思えたので、非常にタイトル通りの良い本だと思いました。

田中 孝幸著
『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』

今年に入って何冊か地政学の本を読んでますが、「13歳からの」と銘打っているだけあって最もわかりやすかったです。

国と国との関係は様々な要因が絡み合っているので、シンプルに説明することが難しいです。その掴みにくい地政学的な概念を13歳でもわかるようにシンプルに説明したというだけでもこの本は素晴らしいのですが、私としてはバランスも良い本だなぁと思いました。

ただ、このシンプルで理解しやすい捉え方も、現実をある一面から見たものであるという認識は忘れない様にしたいものです。

2022年6月分


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