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BB-12

私は頭が悪い。
勉強面の頭が本当に悪い。
勘は利く方だと思うし、興味のある分野は楽しくなってどんどん吸収する方だとは思うのだが、本当に勉強ができない。
生活も向いていない。
丁度そんなことを考えていた。
斜め向かいに座る上司に平家物語と源氏物語の違いを確かめたりしてたら心配された。
どっちに伝説的イケメンが出るんでしたっけ、あの、八岐大蛇みたいな名前のって聞いたら心配された。作者の名前も出てこなくて、小野妹子しか浮かばなかったら心配された。
漢字も読めなかったら心配された。
木工場をきこうじようと読んだら心配された。
やっぱり私は頭が悪い。

斜め向かいに座る上司が蓬餅を食べていて、あ、昔蓬摘んでお団子にしませんでしたか?って聞いたらキョトンとされてしまった。
そうか田舎あるあるなのか。
その蓬餅は、どんどん焼きの時にお母さんとよく作っていた。
白玉粉と茹でて潰したヨモギを混ぜて丸めたもの、他にも白いのと赤いのと黄色いのと、沢山作って竹竿に挿して、周りをアルミホイルで包んで河原に持っていく。
河原に人が集まって、火柱の周りを囲っている。
近くに太鼓が置いてあって、子供が好きな様にそれを叩いて良かった。
近くに行って、お団子を焼く。
後、そこにその年の初めに書いた書き初めを持って行って燃やすのだ。
そうすると、字が上手くなって頭も良くなるらしい。うん、らしいのだ。
私は幼稚園年長さんから小学6年生まで学研教室に通っていた。
通っていただけで、全然勉強はできなかった。宿題も全くやっていかなくて、友達ともどんどん進み具合を離されていた。
そして溜まりに溜まった宿題は、辞書さながらの厚みになっていた。
私はその溜まりに溜まった宿題を、書初めに包んで火の中に投げていた。
恐らく親にはバレてなかった。完璧な犯行である。

その話を斜め向かいの上司にしたら、だから頭悪いんとちゃうかと言われた。
確かに。
神様は見ているものである。
随分しっかりと見てくれていらっしゃる。
私にもし子供が出来て、神様が私の過ちを私の子供にまで課せてしまったらどうしよう。
その時はごめんな子供よ。
でも思い返してみたら、小学校の頃にお父さんと一緒に解いた算数の宿題で間違っていた事がある。
そうか、さてはお父さんもどんどん焼きで宿題を燃やしていたな?
この過ちは血と共に受け継がれるのであろうか。
だとしたら、私の我が子にだけはこの汚れた鈴木家の伝統を絶たせねばならない。
これは深刻な問題である。
何をしてもいいけど、宿題だけは燃やすなと。
数学のテストで1問目の途中式しか合ってなくて、100点満点中2点しか取れなくたっていい。何回読んでも、声に出して読んでも問題文の意味が分からない時だってあるさ。
でも、宿題だけは燃やさないで。
宿題と聞くだけで体がそわそわしてくる。本当に私はダメ人間であるけれど、
こんな親の元産まれても、宿題だけどは燃やさないでくれ。
これだけ約束してほしい。


#ひとりごと

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