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埼玉県岩殿丘陵のあれこれ

埼玉県東松山市、比企 (ひき) 郡 鳩山町・嵐山 (らんざん) 町・ときがわ村、入間郡 毛呂山 (もろやま) 町・生越 (おごせ) 町に広がる岩殿丘陵。私にとってはなじみのある丘陵です。

岩殿丘陵は北の都幾 (とき) 川、南の越辺 (おっぺ) 川にはさまれ、関東山地から半島状に突き出た丘陵です。埼玉県の真ん中ですね。

出典;「生物多様性保全県戦略」埼玉県2008より
高坂丘陵ねっと「高坂丘陵地区の地学」https://www.qryo.net/exploration07.html

私にとってなぜ馴染みがあるかというと、私の実家 (鶴ヶ島市) から比較的近いこともありますが、それだけではありません。

[葛袋のサメの歯の化石。地球観測センター近くの火山豆石]

岩殿丘陵の北半分には数枚の凝灰岩層 (火山灰などが積もった地層) を挟む新生代第三紀の中部中新統の改正層が分布しています。岩殿丘陵の葛袋周辺、神戸層と呼ばれる緑色凝灰岩の円礫を主体とする礫岩層からサメの歯の化石がたくさん見つかっています。

[嵐山町 web 博物誌より]

また、鳩山町のJAXA 地球観測センター近くでは奥田凝灰岩層と呼ばれる地層からは、1~2 cm の大きさの丸い粒が見られます。これは火山豆石 (アクリーショナリーラピリ) と呼ばれています。粒を割ってみると同心円状の構造が見え、中心に核となる鉱物が見られることもあります。陸地に積もった火山灰に落下した水滴が転がってできたという説や、空中で雲の水滴や火山灰の静電気などによって固まってできたという説があるようです。

凝灰岩層に含まれるジルコンという鉱物による年代測定で、約1200万年前にできた地層だということがわかっています。

[嵐山町 web 博物誌より]

高校では地学部だった私は、友達と何度か地質調査や巡検でこの地を訪れました。懐かしい思い出とともに少し悲しい思い出もあります。

[ハンマーを川に落とす:岩殿丘陵でのできごと]

東松山市には「化石と自然の体験館」というものができたそうです。化石発掘体験もできるそうです。

サメの歯の化石と火山豆石に関する記事が出ている上記で紹介した「嵐山町 web 博物誌」には地質編の「嵐山ジオロジア」をはじめ、興味深いコンテンツが沢山掲載されています。

[JAXA 地球観測センター]

火山豆石が見られる露頭の近くには JAXA 地球観測センターがあります。1978年10月に設立されたそうです。私が高校生の頃にはまだできたばかりで、「ランドサット受信センター」などと呼んでいました。

地球観測の最先端の施設で、それが埼玉県にできたことが誇らしく、地質調査のついでに入口まで見に行きました。

[日本セメント (現:太平洋セメント) 東松山専用鉄道]

岩殿丘陵の地質調査や岩殿観音、JAXA 地球観測センターへは東武東上線高坂駅から歩いていきました。

高坂駅からは昔、日本セメント (現:太平洋セメント) 東松山専用鉄道という支線が葛袋付近の採石場まで伸びていました。1955年に開通、1984年に廃線になったそうです。私が高校生の頃は、まだ貨物列車が通っていて、地質調査の行き帰りに通り過ぎる列車の姿を見ることができました。

関越高速道路の高坂駅近くでは、専用線が関越高速道路をまたぐ、「葛袋3号橋」があり、廃線後もしばらく残っていましたが、2013年6月に撤去されたようです。

廃線跡は現在、遊歩道「まなびのみち」として整備されています。

廃線跡、何となく郷愁を誘います。引き込み線の脇を、地質調査を終えて友達ととぼとぼ歩く夕方の光景を思い出します。

そして松田聖子さんの「蒼いフォトグラフ」を聴くと、なぜかこの光景を思い出します。
「港の引き込み線を渡る時 そうつぶやいた♪」の歌詞がトリガーになっているのでしょうか?「港の引き込み線」ではないですけどね。


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