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イメージ・ログ上のサイン・カーブを読み解く

石油の坑井を掘った時、坑内からいろいろなデータを取りますが、そのデータの一つとして、イメージ・ログというものがあります。

これは坑井内にツールをおろして様々なパラメータを測定する検層 (ロギング) の一種なのですが、坑壁面の、あるいは坑壁面に近い地層の物理的パラメータを坑壁全周にわたって画像として表示するものです。

様々な物性でイメージを表示させるツールがありますが、地層の細かい割れ目 (フラクチャー) や、地層の境界、比較的大きな孔隙などを画像化するためには、なるべく分解能が高い物性値を用いることが望ましいです。

代表的なイメージ・ログとしては比抵抗、密度、音波、ガンマ線などを用いたものがあります。南国では、比抵抗や密度の物性値を画像化するイメージ・ログがよく用いられています。

特に比抵抗では、フラクチャーが開いているのか閉じているのか、あるいは地層が水っぽいのか油っぽいのか、孔隙率が高いのか低いのかなどが、比抵抗値の高低として表れてくるため、油層の特徴を知るうえで大変役に立ちます。

また、最近では比抵抗のイメージ・ログも、掘削中に測定しながら、その情報を坑内を循環させている泥水に圧力パルスの信号として乗せて、リアルタイムで地表に送信して表示させることができる LWD (Logging While Drilling) という技術も一般的に使われています。

表示を見ながら、今自分たちがどのような地層を掘っているのか多くの情報を得ることができます。

水平井の掘削では油層に平行に井戸を掘って 、できるだけ長く油層内を掘り続けることが必要です。イメージ・ログに表れる地層境界面を頼りに、いま自分たちが地層面に対して下向きに掘っているのか、上向きに掘っているのか、ほぼ平行に掘っているのか判断し、井戸の坑跡をコントロールすることができます。

イメージ・ログは通常、掘った穴の上側を0° (360°)、掘進方向に向かって右側を90°、下側を180°、掘進方向に向かって左側を270°としています。これをツールフェース (tool face) と呼んでいます。そしてイメージ・ログの表示は、穴の上側 (tool face 0°/ 360°) で切り開いた「ひらき」のようにして表示します。つまり穴の下側 (tool face 180°) が図の真ん中に来るように表示しています。

イメージ・ログで地層面はどのような形に見えるのでしょうか?

下の図で左は地層面を斜めに貫くように下向きに掘進しています。掘り進んでいくとどんどん下の地層を見ていくことになります。イメージ・ログの画像に表れる地層面は tool face 180°のところが一番山になった「への字」のように見えるサイン・カーブとなります。

一方右の図では、井戸は地層面を下から上に貫くように掘進しています。掘り進んでいくとどんどん上の地層を見ていくことになります。イメージ・ログの画像に表れる地層面は tool face 180°のところが一番谷になった口角の上がった「ニコちゃんマーク」のようなサイン・カーブとなります。たくさん地層面が見えると、ニコニコしているように見えてきます。

地層が掘進方向に対して斜めに傾いていると、上の図のサイン・カーブの山の位置や谷の位置が tool face 180°の位置からずれてきます。

実際のイメージ・ログでの地層面の見え方の一例

掘削中リグの上で、特別なソフトを使わないでもどのくらいの角度で地層面を掘り抜いているか計算できるように、エクセルにイメージ・ログの画像を張り付けて、そこに座標を合わせたグラフを重ねて、グラフで画像の地層面に合わせたサイン・カーブを描くと、井戸の坑跡に対する見かけの地層の傾斜とその向きがわかるようなアプリを作ってみました。

ここまでは比較的簡単にできました。しかし、ここまで作って欲が出て、井戸の向きと傾斜の情報から、地層面の真の傾斜とその向きを求められるようにしたくなりました。

これが私の頭では結構大変で、見かけの地層の傾斜とその向きを、井戸の傾斜と向きを考えて回転させて、真の地層の傾斜と向きを計算できるようにしてみました。

幾何の問題を解くように、家で図を書きながら頭を悩ませてやっと何とか計算できるようになりました。

市販の専用ソフトを使えば簡単なのですが、現場でエクセルだけで簡単に求めることができるようにしたのが「ミソ」だと思って、さっそく後輩に使い心地をモニターしてもらったのですが、反応が期待したより薄かったのがちょっと残念でした。

まあ、南国での実際の掘削オペレーション上、地層の真の傾斜やその方向を現場ですぐに知りたいという強い要望はなかったようです。

井戸の坑跡に対する見かけの地層の傾斜とその方向は、実際のオペレーションで役立っているようです。

個人的には数学の問題がやっと解けたような充実感はあったんですけどね。


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