見出し画像

ソーラー・アップドラフト・タワー

ソーラー・アップドラフト・タワー (solar updraft tower) 。日本ではあまり聞きなれない言葉のような気がしますが、再生可能エネルギーによる発電技術の一つで、太陽熱で温められた地表付近の空気の上昇流を煙突部に集め、風力発電装置に誘導して発電するというものです。

日本では九州大学などが研究を行っているようで、日本風力エネルギー学会誌 (2015, Vol.39, No.1, p.34-37) などでその研究の一端が紹介されています。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwea/39/1/39_34/_pdf)

ソーラー・アップドラフト・タワーは、ソーラー・アエロ発電所 (Solar Aero Power Plant)、 ソーラーチムニー (Solar Chimney) やソーラー・タワー (solar tower) などと呼ばれることもあるそうです。

原理は比較的わかりやすくて、大きく分けて以下の3つの部分で構成されています。

  • 太陽熱で地表付近の空気を温めて集めるコレクター部。

  • 集めた高温の空気で上昇流を発生させる煙突部。

  • 煙突内部を通る上昇気流でタービンを回して発電する風力原動機。

ウィキペディアの日本語版「ソーラー・アップドラフト・タワー」を見ると、その概念は1900年代初めには発表されているようです。そして、1982年にはスペインのマンサナーレスで初のソーラー・アップドラフト・タワー発電の試験施設が建設され、約8年間にわたって実験データを収集し、2010年には中国内モンゴル自治区烏海市近郊のJinshawanに200kWの発電能力を持つソーラー・アップドラフト・タワー発電所の運転が始まっているようです。

ウィキペディアの日本語版「ソーラー・アップドラフト・タワー」には利点と課題が以下のようにまとめられています。

利点
・発電時に燃料を用いない。
・発電時にCO2を排出しない。
・蓄熱機能があり夜間も発電可能。
・構造が単純で保守性が高く維持費用が小。
・太陽の直接および散乱光を使用するため曇天時でも発電可能。
・太陽光発電では利用できない太陽の赤外線エネルギーも利用可能。
・太陽光、太陽熱発電で必要なガラス洗浄用の水を使用せず、砂漠の設置に有利。
・太陽光発電、風力発電と異なり短時間出力変動が少ない。
・温室としても利用でき、砂漠の緑化、砂漠化防止に有効。
・巨大な設備が観光施設となる。
課題
・日射量が1950kWh・m-2・年-1以上の場所に限られる(サバンナや砂漠地帯に限られる)
・発電効率が低く広大で平坦な敷地が必要。
・初期投資コストが高い。
・地震、嵐、竜巻、砂嵐、雹・霰、大雪などの自然災害に弱い。
・航空機の飛行障害、景観問題。

気温・日射量などある程度の制限はありそうですが、太陽光発電とは違い熱を利用するため、曇天にも夜間でも多少発電できる点や、ガラス表面の洗浄が不要な点、コレクター部に広い面積が必要な半面温室として利用できるなど、いくつか注目すべき利点があると思います。

砂漠の国アラブ首長国連邦など適地であるようにも感じます。実際に稼動している発電所の発電量や稼動効率、発電効率などを見てみたい気がします。

発電効率が上げられればもっと狭い敷地や日射量が少ない地域でも対応できるようになるかもしれません。ただ広い敷地をパネルで埋め尽くすのではなく、コレクター部が温室として利用できるとなると、緑地・農業との共存も考えられ、より二酸化炭素の軽減にもつながり、受け入れられる地域が増えそうな気がします。意外に期待が持てる技術ではないかと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?