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雪の中の自転車捜索

関東地方の平野部でも雪が積もったとのニュースが流れてきています。普段雪の少ない地方では少しの雪でも事故やトラブルが起こりやすく心配です。

埼玉の平地育ちの私は、新潟の大学に進学するまであまり大雪に遭遇することなく育ちました。子供の頃、埼玉の平地で20cmも雪が積もれば「大雪」で、30cmも積もればまず学校は休みになりました。そんな雪の日の朝は、学校から休みの連絡がこないかワクワクしたものです。

おそらく小学校高学年の頃、ある日大雪で学校が休みになりました。家の前の道も雪が積もり真っ白でした。

休みとなって大喜びで「何して遊ぼうか」などと考えていた時、友達から招集がかかりました。友達の一人が自転車を盗まれてしまったというのです。どうも鍵をかけずに置いておいたら誰かに乗り逃げされてしまったらしいのです。

お母さんにも怒られてしまったらしく、盗まれた当人はかなりへこんでいました。その子も含めて友達が7人ほど集まり、「きっと子供用の自転車を乗り逃げするなんて、そんなに遠くには行かないはずだからその辺を手分けして探してみよう」ということになりました。

雪でお休みの高揚感とミッションを与えられ、みんななんとなく気合が入っていました。携帯などない時代です。捜索に出る前に以下のことをみんなで約束しました。

二人ずつ3班に分かれて捜索すること。
盗まれた当人は自宅で待機し、捜索隊の連絡を待つこと。
各班それらしい自転車を見つけたら、自転車には手を付けず自宅で待機している当人に連絡して自転車のところに来てもらい、自分の自転車かどうか確認してもらうこと。
犯人捜しはせずに自転車の発見と回収だけを目標にすること。
2時間ほどで一度待機場所に戻ること。

私たちは使命感に燃えて、雪道を自転車に乗って捜索に出ました。見つかったらいいなと思いましたが、一方でそう簡単に見つかるわけがないとも思っていました。ただ、雪で休みになった一日を有意義に過ごすためのミッションができてなんとなくドキドキしていました。

私も相棒の友達と、「乗り逃げしたのなら、自分のうちまで乗っていくはずないからどこかに乗り捨ててあるはずだよ」とか「人目に付きにくい林の中の道があやしい」とか言い合いながらあちこちを探し回りました。

そして見つけてしまったのです。やや住宅街から離れた林の中の道の端に乗り捨ててある、話に聞いていたのとそっくりの子供用の自転車を。まさに友達と話していた通りのシチュエーションでの発見でした。

興奮冷めやらぬ中、さっそく相棒が見張りに残り、私が待機中の本人を呼びに行きました。多分待機中の友達の家から歩いて15分くらいの距離だったと思います。

この時の興奮は忘れられません。すでに雪も止み、太陽の光で雪がキラキラ輝く光景も目に焼き付いています。本人を自転車のもとに案内して、彼の自転車であることが確認できました。鍵もついたまま乗り捨てられていました。

約束通り犯人捜しはせずに、自転車を回収して待機場所に戻りました。捜索に出ていたみんなも戻ってきて、みんな大興奮でお互いの捜査の様子を説明し、たたえあいました。

翌日、担任の先生から、自転車の持ち主のお母さんから感謝の連絡があったと聞きました。捜索に参加した私たち6人は、先生の話を聞きながらちょっと照れていました。

子供の頃の雪の日のなつかしい思い出です。

さてこの大雪の日は何年何月何日だったのでしょう。おなじみ気象庁の過去の気象データのページから検索してみます。

小学校5年生の時の冬。年が明けていたので、1975年1月から3月の間だと思います。近くで検索可能な熊谷では、1月22日に16㎝の積雪、2月21日に18㎝の積雪でどちらも大雪との記録があります。ちなみに東京では1月22日は雨で、2月21日は15㎝の積雪の大雪と記録されています。

なんとなく春が近かった印象もありますので、暫定的に1975年2月21日の出来事だとしておきます。

[あの日はいつ?シリーズ]


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